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◆ あとがきにかえて




 ここしばらく文字を使って表現することを続けてきた。でも、その結果できあがったものは、なんて呼んだらいいのだろう。
 なんとなく人に話したいと思ったことを文字に置き換えた、そんな手紙みたいなものもあれば日記みたいなのもあった。感想文みたいなものもあれば、意見文、論文みたいなものある。思いついたダジャレを使いたくて、小説のまがい物みたいなのを書いたこともあった。
 これらをまとめて何と呼んだらいいのだろう。
 随筆? 散文? エッセイ?
 いや、そんな立派なものじゃない。かといって最低限のラインをとって「文」とか「文章」というのでは、どうも味気ない。
 じゃあ、「ひとりごと」っていうのはどうだろう?
 誰にともなしにブツブツつぶやく。頭に浮かぶのは、あまりまともじゃない姿だけど、私の書くものにはぴったりではないだろうか。
 なにか言いたいのかも知れないんだけど、声を大にして叫ぶほどのことじゃない。だから、ブツブツと口ごもってしまう。こころの底では人に聞いてもらいたいと思ってるんだけど、ひとに訴えるだけの力強さはなく、かろうじて自分の口からこぼす程度。とまあそんな感じが出ている気がする。
 最近、私は「書く」ってなんだろうかととても気になっている。もしかしたら自分はなにかすごいことをはじめようとしているのではないかと思うときもあれば、なにダラダラ無駄なことに時間を費やしているんだろうと思うこともある。
 習慣とか惰性みたいなもので、ダラダラと書き続けてきたけど、これっていったいなんなんだろう。そろそろこの辺で確認しておかなくては。
 そんなことを考えながら、この「ひとりごと」を書いてみた。それに、今の自分を残しておきたいという気持ちをまじえながら。
 今回のは「本と文と表現と」というのを念頭に置きながら書いてきたつもりだ。核心に触れないで、とおまきに縁ばかりつついてたような気もするけど。
 きっと、このテーマは、これからも変わらないと思う。こうして書いてきたけど、結論が導き出されたわけじゃないし、最初っから結論をだそうとしてりきんんで書いてきたわけでもない。そうした生煮えの気持ちがいけないのかもしれないけど、もうすこし時間をかけて考えていきたい。
 いつか、ひとりごとなんていう弱々しい言い方じゃなくて、堂々となにかを表現できるようになりたい。ただ、それまでは、しばらくブツブツブツブツつぶやきつづけるんだろうな、たぶん。



1995年 春   あきば・けん






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焚き火のまえで 〜山旅と温泉記
by あきば・けん
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