☆第3展示室☆アナログテスタ(回路計)

自己満足の ガラクタ 博物館 (ja1cvf 0507/0602加筆)

【 何とも 珍しくない ガラクタたち! ラジオパーツに 留まらないのが 珍しい 】 

 
SIMADZU TR-11 ロータリSW型テスタ(120X200X80)  [1950頃]      TR-11B  [1958] 

ロータリSW型のテスタです。質実剛健を連想させるこの会社の製品はどれを見てもきっちりした作りです。 この製品も例外ではなく外観、内部構造は大変精緻に出来ておりすばらしいモノです。 1950年と云えば戦後のどさくさが続きまだまだ荒廃した状況でした。その時代のテスタとしては最高級のモノと思います。 測定範囲は5-10系で均等に分割した旧来どおりの方式で等比級数的にレンジを割り当てています。 内部抵抗についてははっきりと表記がないのですが高級機らしく20kΩ/Vを確保しています。 (実測及び電流計感度等から判定しています)
抵抗測定用電池は高感度メータを使用することで単1型2本で充分高抵抗まで測定を可能にしています。
拡大機能はdBメモリが専用ポジションで測定できるようになっています。

DC/V   2.5,10,50,250,500,1000  (20kΩ/V)
DC/mA     50μ,1,5,25,100,250
AC/V   2.5,10,50,250,500,1000
R/Ω    X1,X10,X100,X1000
拡大機能 db
使用電池 単
1X2

部品はサブパネルを使い丁寧に組上げられています。 抵抗測定用の電池は専用のケースを使用し上部から取り付けが出来ます。電池の液漏れに対する配慮と考えられます。
同年代の他社製品に於いては配線、組み立てが粗雑なモノが多く見られる中丁寧な組み立てがなされています。

APPENDIX  このテスタは京都のSA様から戴いたのですが入手にまつわるエピソードを紹介させて頂きます。 (お手紙のに中から一部を抜粋しました)

・・・・・昭和25年のラジオアマチュアという雑誌が1冊あって、 テスタの記事があったのでコピーをお目に掛けます。
どうもこのテスター (Simpson-260・写真参照*cvf加筆)がTR-11のモデルみたいな気がします。
当時のレートは360円/$の時代ですから、14000円くらいです。ちなみにこのころの新卒給料が10000円くらいだったと思います。 (もう少し安く大卒で7000円位と思います*cvf加筆)
アルバイトで5球スーパを組み立てていましたが、材料費が1式3900円、組み立て工賃が500円でした。 TR-11は20台分の工賃に匹敵しました。清水の舞台から飛び降りる感じで買いましたが、それなりに役に立ちました。 特に20kΩ/Vの電圧レンジは抵抗結合のプレート電圧測定に威力を発揮しました。・・・・・・

お手紙はここまでですが別稿にありますSimpson-260も併せてご覧下さい。 *Simpson-260のページはこちら!
お気づきになりましたでしょうか外観はちっとも似ていません。では何を参考にしたのでしょう。
これは私の推測ですがメータ感度をどのくらいのモノにするかと云うところだと思います。
dBメモリの採用なども考えられますがこれは派生的なモノと考えます。
当時の日本製品は1mAのメータで構成されたモノがほとんどでした。 真空管も増幅度を上げるため高電圧(250~350V)を使っていました。当然抵抗も高抵抗を使っていました。
これらを測定するためにはどうしても20kΩ/V(電流感度で50μA)は必要な条件だったと思います。 1mAのメータを使ったテスタでは回路の高抵抗が災いして正しく測定できないのです。 抵抗値測定は外部電源を使うことで対応しましたがとても使いにくいモノだったと思います。
Simpson-260は当時一世を風靡したテスタですが現在もほとんど原型を変えない姿で販売されています。 参考写真のSimpson-260はserise5で新しい世代のモノです。

20kΩ/Vは現在では標準的な感度です。 と云うより使いやすいためにこの辺に落ち着いているといえます。 一時期500kΩ/Vというとんでも無いモノが市場に現れましたが使い勝手が悪く消滅してしまいました。
テスタは手軽で簡便な測定機と云う基本的要求から考えればSHIMADZUがこれを踏襲したことは正解だったと思います。
しかし残念ながら日本の土壌は”本当によいモノを末永く”と云う基本が失われているように思います。 現在島津製作所ではテスタを生産してないように思います。

 

TR-11の類型、NTTの前身・日本電信電話公社仕様、TR-11Bを入手することが出来ました。 [1958]

 

右側が日本電信電話公社仕様のTR-11Bです。

大きさは同じですがJISマーク適合品となり測定レンジの割付、電池の取り付け方法などが変わっています。
その違いは
AC/Vに2.5Vレンジを追加
DC/mAの250を500mAに変更、
dBの30を20に変更等です。

組み付け等はTR-11同様精緻を極める造りです。

[0602加筆]