山歩きのすすめ

H12.10.11(水)
とちぎ読売(山想記)掲載


 「山歩き」と聞いて、一般的には「疲れる」「危ない」と負のイメージが先行し、素晴らしい景色や自然に触れる楽しみはわかるが、リスクを思うとなかなか踏み込めないのが現実だと思います。 でも、長く山とつき合っている者は、その適度な緊張感とその後の程よい疲労感が、そして何よりも、ただ自然の中に身を置くことが心地よく、好きなのです。
 ここ数年で山を歩く人たちの価値観もだいぶ変化したように思います。 百名山ブームに代表されるように、自分の好みや価値観で山を楽しんでいる人が少なくなり、他人の価値観、ブランド志向とでも言いますか、ピークハントコレクターと言われそうな登り方をする人が増えてきました。 ご自分の考えでその様な楽しみ方をする人たちを全面的に否定するわけでは有りませんが、つられて何となく100名山巡りをしている方も増えているのが事実です。
 その陰で、急激な登山者の増加に、登山道や小屋又はトイレ等の整備が追いつかず、”荒れ”が目立つ山も多いと聞きます。 私達が最大限マナーを守ったとしても、全くインパクトの無い山歩きは出来ません。 ほんの少しではあっても自然に対してダメージを与えているのです。 そのダメージを自然の回復力が上回っていれば、自然は保たれるでしょうが、逆の場合は、”荒れ”が進んでしまいます。
 数千年、数万年かかって岩盤の上にわずかばかりの土ができ、植物の根によって保たれている安定が、踏み荒らしによってバランスが崩れ、たった数年で土壌は流失してしまいます。 白山や尾瀬など、早くから人気のあった山ではこのような経緯があり、現在は木道だらけの登山道になってしまった訳で、これをまた繰り返すのは愚かなことだと思います。
 自分の価値観で山歩きを楽しんでいる人たちもたくさんいます。 これから「山歩きを」と希望されている方にはぜひ、ご自分の価値観で楽しめる「山やさん」になってほしいと思います。
 まず手始めに、トレーニングを兼ねて、住まいの近くの自然に目を向ける散歩から始めましょう。 意外と街中の住宅地でも楽しめます。 春から初夏は、草花はもとより野鳥の子育て、特にツバメは簡単に観察できます。 そのツバメも今は南の島に帰り、替わって北の大地で子育てをした冬鳥がたくさん戻って来ています。 慣れると郊外の川で簡単にカワセミを見つけることもできるでしょう。

 時間と天気によって様々に変化する自然。 これを手軽に味わえるのは夕日です。 観る度に、違った感動が得られます。 普段の生活では、一番忙しい時間かも知れませんが、ほんの5分か10分で充分です。 空が良い色になったら見える位置にたてば良いだけですから、ぜひ試してみて下さい。 きっとやみつきになると思います。

一部内容に”野遊びのすすめ”と重複するものが有りますが
発表の場が違うと言うことでお許しいただき
笑って読み飛ばしてください

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