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● 交尾について ● |
そろそろ色々な猛禽類が繁殖シーズンを向かえ 『交尾』 のシーンを観察する機会が増えてきますので、ここで一発(笑)、交尾行動について研究してみましょう。 交尾という行為は、どのようにして成立するのか? その過程(経過)を見ていくと、次のようになります。 @オスとメスが近くに寄り合います(この場合、同じ木に止まったり、あるいは近くの木にとまったり、メスは木に止まっているのだが、オスは近くを飛んでいるケースがあります) A壮絶な(?)鳴き交わしを始めます(これはすごいです!) Bその後、同意(?)したメスは、『前傾姿勢をとり、尾羽を上に上げ』受け入れ態勢を作ります Cそれを見たオスは背中にまたがり、交尾をする というのが、一般的パターンであると思います。ここで注意したいのが、Bの「同意したメスは・・・・・・受け入れ態勢を作る(ちなみに同意しない場合は、尾羽を下げたままで、気をつけていると見ることができます)」ということです。つまり、Aの段階において激しく(これは私の感想ですが)コミュニケーションをとりあい、そこで同意した場合においてのみ、メスはBのような受け入れ行動をとり、交尾に至ります。 ということは、一般的に良く使われている『擬似交尾・マウンティング』ということを併せて考えてみると、このような言葉を使う人に聞くと『マウンティングは擬似交尾のことです』と答え、じゃあ擬似交尾というものは何なのと問い掛けると、私自身が納得できる回答が返ってきません。『擬似』という行為(意味)は何なのか?「まねる・似せる」というようなものだと思いますが、Bで言ってるように同意していない場合に、擬似とういうことはありえなく、本来ならば、『交尾に失敗(失敗という表現はうまくないかもしれませんが・・・)』しただけで、決して擬似的な行為ではないと思います。それを証拠には、擬似交尾と呼ばれているすべての場合に、メスも儀式的(擬似)に従っているわけではなく、オスに背中に乗られたときに、嫌がって(?)すぐに飛び立つケースもかなり観察されます。これでは『擬似』という概念と少し違うのではないでしょうか! あくまでも、『交尾に失敗(あるいは不成立:?)』というような表現に変えたほうが、本当は適切だと思いますが、いかがでしょうか? ひどいものになると『8秒くらい背中に乗っていたからこれは交尾だ。4秒くらいだったからこれは擬似交尾だ』などというようなこともたまに聞きますが、これらは何を見ているのでしょうか? Aの激しく鳴き交わすということはなかなか聞く機会は少ないのですが、Bのメスの行動は、当たり前のように良く見ることができますので、交尾の成否については、メスの行動をキチンと見ることがすべてであると思います(気を付けていないと、必ずオスを見てしまいます:理由は下記に)。 また、上記の事象は、イヌワシ・クマタカ・オオタカ・ツミ・チョウゲンボウ等のタカ科では確認済みですが、フクロウ科は、ほとんど夜のためBの行動は確認できていませんが、基本的には同じだと思っています。当然ですよね〜。 |
● 交尾行動例 ● | |
この写真は、クマタカがペアで止まっているところの写真です。通常このような場面で止まっっている時、オスとメスで激しく(?)コミュニケーションを行った後、合意に至ると、メスは交尾の受け入れ準備をし、上にいるオスが飛び立ち、メスに乗り交尾が始まります。このような場所だけではなく、イヌワシやクマタカなどの大型猛禽類は、急斜面から斜めに生えている(雪や崩壊により斜めになった)木の上でも交尾をします。 photo by higuchi |
● 交尾をしそうな場面とは? ● |
対象種やTPOによって一概にすべての事例を言い切れませんが、大きくは5つのパターンがあると考えています。具体的には次のような場合です。 @上記の写真のように、同じ木の上下に止まる場合 A同じ木の同じ枝に並列して止まる場合 B至近距離(約20メートル以内)に止まっている場合 C近く(約50メートル前後)に止まって、少しづつオスが接近していく場合 Dメスが枝などに止まっていて、オスはすぐ近く(50メートル以内くらい:この数値は種によって変わってきますが)をゆっくり旋回して、その後直接メスの上に乗り交尾を行ったり、@やAのようなシチュエーションに移行し交尾を行う場合 などがあります。多少は違うシチュエーションでも観察される場合もあると思いますが、代表的にはこんなところでしょうか。では次に、それぞれの場面において少し詳しく記すと次のようになります。 @の場合、これは圧倒的に大型のイヌワシやクマタカに多い場面です。ノスリでも見たことがあります。そして大概の場合、オスが上で、メスが下に止まっている場合が多いように思います(当然反対のケースもありますが)。そして、上記の写真のようにオスがメスのほうを向いて話しかけるような感じ(?)の場合は、要注意です。また、主稜線上で行われることはほとんどなく、尾根や出尾根上の樹木が一番多いような感じがします。 Aの場合、これもイヌワシ・クマタカ・ノスリ・ツミ・フクロウなどでよく見られる場面です。ハイタカ属ではツミしか見たことがないのですが、オオタカやハイタカについても同じシチュエーションはあると思います。しかし、私は見たことがありません(観察時間の差だとは思いますが)。森林棲猛禽類の繁殖初期段階ではこのような場面はかなりあると思いますが、森林内での場面であり、観察機会がほとんどないということと、私自身の観察時間不足だと思います。誰か詳しい人がいたらお知らせください。 Bの場合、このように至近距離に止まり、コミュニケーションをとった後オスが直接メスの上に飛び乗り交尾が始まる場合と、いったん@やAの場面に移行し交尾が始まる場合があります。上の表記では「近く」と表現しましたが、これは本来であれば「コミュニケーションがとれる範囲」としたほうが良いかもしれません。観察機会の差だとは思いますが、これも残念ながら、イヌワシ・クマタカ・ノスリ・チョウゲンボウなどでしか観察したことがありません。当然このような草原棲の猛禽類が、森林外から観察するような場合、観察機会に恵まれるのは草原棲猛禽類が中心となることは当たり前の事ですが、森林棲の猛禽類であるクマタカが@ABなどの場面でよく観察されるのは、私と同じように図体が大きく森林内だけでは生活するのが不便(?)であったり、上位他種(イヌワシ)や同種との関係(捕食・競合)からかもしれません。 Cの場合、枝移りをしながら直接メスの上に乗り交尾が始まる場合と、いったん@やAの場面に移行した後交尾が始まる場合があります。これはフクロウ・オオコノハズクなどのフクロウ類や、たぶん(見たことがないのですみません)オオタカ・ハイタカ・ツミなどの森林棲猛禽類は、このパターンがメインであると思います。まあ、このようなパターンを目撃するためには、よほど運が良い人か根性の入った人でないと無理かとは思いますが・・・・・・ これについては、同じ森林棲猛禽であるフクロウの仲間がこのパターンが多いため、ハイタカ属も同じであろうと考えています。 Dの場合、旋回をしながらコミュニケーションをとった後、直接メスの上に乗り交尾をする場合と、@やAのような場面に移行し交尾を行う場合があります。これはイヌワシ・クマタカ・ノスリ・チョウゲンボウなどで観察されています。このようにオスがメスの近くを飛んでいるときに激しい(?)コミュニケーションをしているのでしょうね。チョウゲンボウなどでは普通に見られる光景であるとともに、近くで観察できますから、激しい(?)コミュニケーションの様子が、簡単に見ること(聞くこと)ができます。 |
● 交尾行動観察時の注意点等 ● |
上記のような場面に遭遇したとき、注意すべき点があります。これはずばり『メス』を見ることなのです。例えば上記の写真のようにペアで同じ木に止まっている場面に遭遇し、上に止まっているオスが飛び出したときなどは、ほとんど(たぶん限りなく100%に近い)の人は、飛び立ったオスを見てしまいます。そうするとどうなるかは説明するよりも明らかだと思いますが、メスが交尾を受け入れた証である『前傾姿勢をとり、尾羽を上げる』とういう行動を見ることができなく、正確な交尾の判定には至りません。 ためしに上記のような場面に遭遇したときに、メスを見てください。今まで「これは交尾をしているのか?擬似交尾だったのか?」よくわからなかった人には、特にお薦めです。1回見るだけで「交尾行動」とはこういうものかとわかるようになります。 |
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2002.2.1 OPEN |