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『猛禽類とは』などという見出しですが、このページでは、私の考えている『猛禽像』なるものを、形態・採餌動物・生態等の観点から見た猛禽類について紹介していきたいと考えています |
ここでは、タカ目タカ科ハイタカ属オオタカ・フクロウ目フクロウ科フクロウ属フクロウなどというような科学的な分類ではなく、猛禽類というものはあくまで生息環境に基づいた(あるいは生息環境に適応した)生活や形態をしています。そして、その生活環境というのは大きく分けると2つに分類できます。これはすでにご承知のとおり「草原棲」と「森林棲」です。これら従来生活史や生態という観点から区分をされてきましたが、ここでは、『形態』という面も含めてアプローチしてみたいと思います。森林棲あるいは草原棲の猛禽類にはどの様な共通した特徴があるのか? 最初は、形態的な面から解析していき、徐々に採餌動物との関係・生態等に少しづつ触れていきたいと考えています。 |
森林棲の猛禽類 |
この仲間は、温帯気候の日本を代表とする猛禽類と考えてよいでしょう。つまり、放っておけばすべてが森林化してしまう温暖多雨な気候の日本に、昔から適応してきた猛禽で、これらの猛禽には、どの様な類似した特徴があるのか? 次に記します |
特 徴 |
『翼が厚く、短い』 森林を主な生活場所としている猛禽は、当然の事ながら森林内で生活する事に適応しているため、そこでは森林内にある枝などの多くの障害物を避けながらも、機敏に飛行する能力が必要で、急旋回することのできる能力もあわせて求められます。そのため、森林内を主な生活空間とする猛禽は翼は、厚く・短くなる傾向にあります 飛行機に例えると → セスナタイプといえるでしょう |
代 表 種 |
クマタカ・オオタカ・ハイタカ・ツミ・フクロウ等 |
森林棲猛禽類の代表種「クマタカ」 photo by higuchi |
草原棲の猛禽類 |
この仲間は、草原、湿地、荒れ地、雪崩地、海上、内水面上、伐採跡地等のオープンスペースを主な生活場所としている猛禽類で、次のような特徴があります |
特 徴 |
翼が長くオープンスペースを主な生活場所としている猛禽は、森林棲の猛禽類に必要な森林内で枝などの障害物を避け、なおかつ機敏に飛行する必要はありません。当然の事ながら、そこに生息する餌動物たちは、「素早く逃げる」事に特化しているため、それらの餌動物を捕食する猛禽もスピードが求められ、そのため、翼が長くなり急旋回できることよりも、素早く飛行することができます |
代 表 種 |
イヌワシ・ハヤブサ・ノスリ・チョウゲンボウ・トラフズク・チュウヒ等 |
草原棲猛禽類の代表者「ハヤブサ」 photo by higuchi |
形態的な差異に少し触れたので、少し 『渡り』 についての考察を |
『渡り』をする種についてのワンポイント考察 |
夏鳥や冬鳥といわれるような明確に渡りをしている猛禽類も何種類かいます。これらの猛禽類に共通している特徴を考えてみますと、次のようななります |
特 徴 |
『翼が細く、長い』 渡りをする猛禽は、当然飛行距離が長距離になるため、安全かつ省エネでなければなりません。そのため、帆翔→滑翔を多用し移動(渡り)をしていきます。つまり、帆翔や滑翔を容易にするために、翼が細く、長くなっていると考えられます(コミミズクやアオバズク等のフクロウ類が帆翔→滑翔するかは今のところ不明です)。草原棲の猛禽類とほぼ同じ感じと考えてよいでしょう 飛行機に例えると → グライダータイプといえるでしょう |
代 表 種 |
サシバ・ハチクマ・アオバズク・コミミズク等 |
『渡り』 と 『定着』 との関係 |
ここまでくるといろいろなことが推察されてきます |
○森林棲の猛禽類と 『渡り』 との関係 |
一般的に考えて、森林棲の猛禽類は長距離の飛翔能力が、草原棲の猛禽類より劣っていることが考えられ、温帯性気候の日本においては、森林棲の猛禽類は基本的には留鳥であると考えられます。その理由としては 1.長距離飛翔能力が優れていないと思われる 2.主な餌動物は年間を通じて十分に存在すること |
○草原棲の猛禽類と 『渡り』 との関係 |
草原棲の猛禽類は、上記で記したように形態的にも、その生活史においても移動を伴う生活をする種があるなど、長距離飛行に向いていると考えられ、渡り(漂行も含む)をする猛禽類はこのカテゴリーの猛禽が該当します。つまり、帆翔→滑翔が渡りをする大きな手段の一つなのです (実際の渡りの主目的はエサで、昆虫類・両生類・爬虫類などを主なエサにしている猛禽は、国内においては基本的に渡りをします:サシバ・ハチクマ・アオバズク・コノハズクなど) |
渡りの代表種「ハチクマ」 photo by aoki |
◇たまにクマタカ・オオタカ・ハイタカ・ツミなどが、渡りをしているサシバやハチクマに混じって観察されたりすると、「渡り途中の個体が観察された」などの表記を良く見ますが、これらについては、本来「分散中(分散途中)あるいは漂行と」表記する方がより理解しやすいのではないかと思います。(北海道をはじめ日本中でクマタカやオオタカは厳然として留鳥です:北海道における本州に渡るノスリやシベリアから来るオオタカについては漂行という概念で考えています)。 アカハラダカは、主食が昆虫や爬虫類などのため、当然『渡り』をします。 |
『パーチ位置』の違い |
形態的な差異ではないが、大きな違いとしては「パーチ」時の止まる位置にも大きな差があります |
草原性の猛禽類 | ○見晴らしの良い樹や岩の頂上付近を好んでとまる |
イヌワシ・ノスリ・チョウゲンボウ・ハヤブサなどの草原性を代表とする猛禽類は、樹や岩などに止まる場合は樹頂部や岩の頂部などが圧倒的に多く、樹木の中段の横枝に止まるケースは非常に少なく、ある特定の目的を持った場合にのみ止まると考えられます |
森林性の猛禽類 | ○樹木の中間付近の横枝に好んで止まる |
上記とは逆に、クマタカ・オオタカ・ハイタカ・ツミなどは、樹木に止まる場合は圧倒的に中間部の横枝が多く、樹頂部に止まるケースは少なく、これらの猛禽類が樹頂部に止まる場合は、特定の目的(監視・狩り等)をもった場合のときであると考えられます |
ワンポイント |
◇基本的にフクロウ類も同じであると考えてよいと思います |
『猛禽の造巣』 |
2001.2.1 OPEN | |
2002.29 RENEW |