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ここでは、オオタカについて、普段から考えていることを少しづつアップしていきたいと考えています。ただオオタカについては、特に力をおいて観察するようなことも少なくあまり詳しいことはわかりませんが、感じたままに書き足していきます


飛び立つオオタカ若鳥
photo by higuchi


生息域で分けられるオオタカの分類について
 これは皆さんご存知のように大きく2タイプになっています。それは森林型と平地型といえるでしょう。ではそれぞれどういうタイプのものであるか?少し簡単に説明すると・・・・

○森林型
 このタイプは、旧来というか本来(?)のオオタカのタイプといえるでしょう。つまり、森林に生息し主な狩場も森林内であるような、森林に依存をしたものです。森林を「山」に読み替えて、山に生息していると考えても良いと思いますが、うまく表現することができませんが、「生息域がすべて森林内」であるというようなイメージです。
○平地型
 このタイプは、上記とは反対に里に生息しているタイプで、森林(小規模な)や、農耕地、開放水面、市街地などの環境を複合的に利用しているタイプといえるでしょう。

 なぜ、このようなタイプに分類するかというと、当然いくつかの違いがあるからであって、次は、その違いは何なのかとういうことを考えてみると。大きく次の2点があると考えられます。

@採餌環境の違い
 これは言うまでもなく、森林型では、その大部分を森林棲の動物(主に鳥類)に依存していますが、平地型では、農耕地、市街地、開放水面などに生息する動物(主に鳥類)を捕食します。また、その違いが及ぼす影響としては、採餌動物の対象種の違いが一番大きいため、これはすくなからず繁殖にも影響を及ぼす要因と考えています。つまり、バラエティー豊かな採餌環境にある平地型のほうが、森林型よりも採餌環境は良いのではないか、とういうことです。繁殖成績なども例数を重ね検証を行えば、その差が出てくると思います。今きちんとそのデータが示せるわけではありませんが、私の考えている森林型のオオタカでは、3卵産卵し、3羽とも無事巣立つことは非常に少なく、そのほとんどが2卵産卵⇒1〜2羽巣立ちが圧倒的に多く、平地型では3卵や4卵産卵する場合もそんなにまれではありません。このようなことからも推測できると思います。

Aいわゆる『馴れ』の違いというか、人間に対する『人馴れ』というか、そのようなことも大きな違いとしてあるのではないかと思います。これについては皆さんすでに経験済みだとは思いますが・・・・・・・・
 森林型では、巣に近寄っただけで、メスが警戒し激しく鳴きながら上空を飛び回ったりしますが、やけに慣れている平地型のものは、警戒心が薄いというか、抱卵中や育雛中でも巣の真下まで行っても、平気なやつとかいたりして、詳しくは後述しますが、そのような違いもあると考えられます。また、このような性質(?)の違いがどのような影響を及ぼすかということを考えると、平地型のオオタカほうが繁殖阻害要因のひとつと考えられる『人間』の接近などによる繁殖阻害要因が森林型よりはだいぶ緩和されているだろうということが推察されます。

●○●最後に、ではなぜこのようなタイプに分かれてきたのかということを考えると、いくつか要因がありますが、まずはオオタカの観点から見てみると、もともと(いつの時代まで遡って考えるかは難しいことですが、私は江戸時代後期を想定しています)は森林型であったことと想定しています。戦中から戦後にかけての大規模森林皆伐期(いわゆる拡大造林期)以降ではないかと想像しています。では、どのような過程でこのうようなタイプに分化(?)してきたかということを考えると、本来森林内に生息していたオオタカではあったが、森林の大規模皆伐により生息地を追われたいくつかが、しぶしぶ(?)現在の平地型と呼ばれる複合的な環境で営巣するようになり、そこから巣立ったものは、当然のことながらその環境(平地型)で営巣するようになるので、このようなタイプが誕生したのではないかと考えています。その後、拡大造林期に植林された針葉樹(スギ・ヒノキ・カラマツ・モミ等)が、昭和後期(50年代)以降、伐期令(オオタカが営巣する樹木令とほぼ同じ)に達したときには、日本は高度経済成長期と円高を向かえ、安い外材が大量に輸入されるに至り、植林された針葉樹は無価値に等しいものとなり、放置され続けてきた。そして昭和40年代などは、これらの針葉樹は若く細いため、オオタカの営巣木とはなりえなかったものが、現在(昭和60年代以降)はオオタカが営巣できる樹木に成長し、彼らに営巣環境を提供し始めてることが、急激に平地型のオオタカが増加している原因であろうと考えています。当然分化してきたと思われる初期の段階(昭和40年前後の拡大造林期と考えています)は、営巣できる樹木が少なく、個体数も少なかったと思われますが・・・・・・
 これらは、現在オオタカが営巣している環境を考えて見れば火を見るよりも明らかで、営巣木についてはそのほとんどが植林された針葉樹で、天然(?)の樹木に営巣することなどは非常にまれなケースであることからも想像がつきます。そしてこれからも、このような社会経済環境(輸入外材の増加・日本林業の低迷)が続き、森林施業(?)が低迷を続けるのであれば、森林を伐採する面積はますます少なくなり、このようなオオタカが営巣できる環境(40〜60年生くらいの針葉樹林林)は、間違いなく増え続けていくことだろうし、それに伴いオオタカも増え続けていくでしょう。ちなみに、現在の森林伐採面積は拡大造林期の十分の一程度(以下)でしょう(詳しくは林業白書・林業統計書等の中の伐採面積・階級構造等を参照しながら確認してください)。

◆十数年前からいわれている『ツミ』の都会への進出などはその前触れであって、彼らはオオタカのように太い樹木を必要とすることがなかったためと、たぶんオオタカより繁殖年齢というか、世代交代のスピードが速いため(例えばオオタカ3年・ツミ2年というふうに仮定すると、20年間でオオタカは6サイクル・ツミは10サイクルというほど違いがあります)、進出のスピード・個体数とも多かったのだろうと思っています。◆

 このようなことを考えていると、人間の生産活動(森林施業)がオオタカをはじめとする猛禽類の生息に対し非常に重いウエイトを占めていることがわかります。いつか詳しく書きたいと思いますが、ちっぽけな開発行為などは、そこに生息している個体に対するダメージは多少はあっても、『種』というレベルでオオタカをはじめとする森林棲の猛禽類の保護を考える場合には、『適切な森林管理のあり方』をキチンと認識し、実行していかなければならないということを痛感いたします。


オオタカの生息要件について
 それでは、一体「オオタカの生息」はどのようなことに左右されているのか?
 上記と関連することなので、既にお解かりのことと思いますが、ついでに書いてみます。そうです。一番重要な要因は営巣地です。などと書いても「そんなことあたりまえジャン」と言われそうですが、まったくそのとおりで、なおかつそれ以外にはありえないという一言が入ります。つまり、私はオオタカの生息を左右している要因は、営巣地だけであると断定しております。そんなことをいうと狩場環境や餌環境などはまったく関係ないのか? と聞かれそうですが、私はまったく関係ないと考えています。(極まれな例外を除きますが)
 そこで、どのような理由で狩場環境や餌環境がオオタカの生息に対し影響を与える要因とならないのか、簡単に説明しますと。国内や世界中の捕食動物や餌を調べてあるものを見たり、自分で観察をしていても気付くことは、やっぱり鳥類が多く、しかも中型鳥類(シメ・ムクドリ〜カモ大程度)が圧倒的に多い事がわかります。これは森林型・平地型問わずにこの傾向があります。ただその生息地の環境によっては例えば市街地の近くで、ドバトがたくさん集まる場所の近くに生息しているペアは、時にはドバトを集中的に狩ったり、水辺環境が近くにあるペアなどはカモ類などを集中的に狩ったりとか、若干狩る餌に特化したペアもありますが、これらとても基本的には中型鳥類を主食としていることがわかります。ここで重要なことは、主食はあくまでも中型鳥類で哺乳類や小鳥類ではないということです。では次に、オオタカが主食とする中型鳥類がどのような環境に生息するかを考えてみると・・・・・これら主食となっている中型鳥類は、森林・草原・農耕地・開放水面・市街地などの、どのような環境にも生息していることがわかります。当然、環境タイプにより餌鳥類の生息密度は違ってきますが、基本的には彼らが生息している環境に応じて、そこにいる餌鳥類を狩っているだけだと考えています。
 つまり、オオタカの餌動物(主食としての)は、特別な環境に生息している特別な動物ではなく、どのような環境にも生息している中型鳥類が主食となっているということです。
 餌動物が特化(?)しているもの・・・・・例えばイヌワシは主食がノウサギが多いため、ノウサギが生息していたり、狩りをすることができる開けた環境がなければ、イヌワシは生息することはできません。主食が魚のシマフクロウも同じで、魚が生息することのできる水辺環境と、それを狩りすることのできる開けた開放水面がなければ、彼らは生息することができません。
 ところがオオタカについては、彼らの主食となる餌鳥類は上記でも書いたとおりどのような環境にも生息しているし、オオタカは森林内で苦もなく狩りができるため、イヌワシやシマフクロウのように狩場環境に左右されないため、オオタカの生息にとっては狩場の重要性は低く、よほど特殊な環境でない限り、『狩場』はオオタカの生息にとっての制限要因になりえていない。ということになります。
 これも上記で書いているように、現在オオタカが増えているということと、これからも増え続けるであろうという要因の一つと考えているため、でければセットでお読みください。


山梨県内の生息数
 クマタカの項で書きましたが、県内ではクマタカが現在約80ペアほど見つかっています。これは山梨県内の大型猛禽類(イヌワシ・クマタカ)の分布や生息動態がどのようになっているのだろうか? ということで分布調査を今現在も行っています(最近は時間がなく、なかなか調査が進展していませんが)。その中では当然のことながらオオタカをはじめとする他の猛禽類もたくさん観察されています。この中でどれくらい生息しているのか? 考えてみますと、クマタカの生息地内では、ほとんどオオタカが確認されています。また、クマタカが生息していない地域においても観察例がたくさんあり、これらのことを考え合わせると、クマタカの生息数よりは確実に多いということがわかります。これらの記録や、地形・植生等を勘案していくと150±20ペア位ではないかと考えています。若鳥や放浪個体などの非繁殖個体を含めるとその個体数は400±50位ではないかと考えています。皆さんの地域ではいかがですか・・・・・・・・・・・
 海外には生息密度のデータもいくつかあり、ここでは細かいデータは示しません(出典もとを調べるのが面倒なため:必要な方はご自分でお調べください)が、イギリスやヨーロッパあたりで、だいたい4ペア前後/100平方キロです。これはイギリスのPetty氏から直接聞きました。またほかの文献を見た中でも、ほとんど同様の数字でした。
 では、日本ではどうかということを考えて見ますと、環境(地形・植生等)や餌動物の量・質の違いにより一概にいえないとは思いますが、だいたい同じくらいだろうと思います。当然地域によってはそれより高い地域もあったり、低い地域もあったりしますが、これらをならせば、だいたいそんなもんだろうと思います。ちなみに前述のデータについては、比較的平坦(?)な地域であろうと思いますし、日本みたいに山岳が多いところでは山岳部を多く含む地域においては密度は低くなるだろうし、オオタカが好む環境が多い台地や丘陵地、火山の裾野地域などでは密度は高くなっていくことは言うまでもありません。


『種毎の解説』

2001.2.1 OPEN
2002.2.1 RENEW