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退屈な就職試験になるはずだった。それが、人生最大の転機になろうとは。 今日、生まれて初めて恋をした。一目惚れ、なんて生易しいものではなかった。 エレベーターから降りてきた彼の姿を一目見た瞬間、欲しい、と思った。 闇のような漆黒の髪と瞳をまとっていたのに、眩しかった。穢れのない、清廉な雰囲気に強く惹かれた。……相手が男だったのには笑うけど。 でも、同性だから、とか、初対面なのに、とか、そういう常識に捕らわれてる暇はなかった。向こうから声をかけられた、その声に、即座に虜になっていたから。 女にだってここまでしたことがないってくらい積極的に接した。短い期間で彼に少しでも意識してほしくて。彼の反応があまりにも素直でかわいくて、思わずキスもしてしまった。……彼は俺のことを同性愛者だと思っただろうか? それでもかまわない、と思う。 彼は素直すぎた。すぐこちらの思惑に嵌まって、俺を意識しはじめたのがわかった。恋愛の免疫があまりないのかもしれない。こちらが笑いかけるたびに頬を染める姿などはたまらなく扇情的だった。俺は暗い喜びを感じた。 きっと自分も彼も採用試験に受かっているはず。まともな目の持ち主なら間違いなく自分たちを採るだろう。来春には再会できるはずだ。……だから、キスした後は彼に声をかけなかった。そのほうが彼の心を自分で占められると思って。 本当は毎日でも会いたいけど、半年、我慢をしよう。真面目な彼はきっと毎日俺のことを考えるだろう。その分、想いは深くなるはず……。 おまえは罠に嵌まってしまったんだよ。マイクロトフ……。 おわり |