ここからは、アダルトな内容になります。
18歳未満の方、その手の文章が苦手な方は
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私はOK!という方のみ
お進みくださいね。


 あやすような浅い口づけを繰り返すと、兄はむずがる子供のように小さく首を振り抱き締める腕に一層縋りついてきた。
 「・・・ゆ・・・き−−」

 もっと強い繋がりを求めて、熱情に濡れた瞳が、吐息まじりの甘い声音が祐希を誘う。
 普段は自分ばかりが欲しているのかと思わされるほど淡泊に過ぎる素振りの昴治が、こうして情事の最中にだけ見せる欲求を確かめる度、祐希は大きな安堵と満足感に満たされた。
 求めに応え深く兄の口中をまさぐった。絡まる舌の隙間から漏れ聞こえる濡れた音が、祐希のなけなしの理性を刺激する。
 急いた指先を下肢に伸ばすと、兄の身体は電極に触れたようにびくりと震えた。
 「・・・する、のか・・・?」
 永い口づけに上がった息もそのままに、紅潮した頬をもって昴治は問う。白い首筋に歯を立てれば、手の中にある昴治のそれは容易く反応し始めた。
 「嫌なら、やめる」
 噛みあとを舐め上げ耳朶をなぶりながら、高ぶりに掠れた声で囁いた。
 交わりは昴治の休日の前夜だけ。いつの間にか、それが二人にとっての不文律となっていた。
 男を受け入れる側が負う身体的負担は決して軽くはない。初めて結ばれた翌朝の、兄の苦痛を抑えた弱々しい笑顔を祐希は、生涯忘れないと心に決めた。それでもいい、と幾度でも祐希を抱きとめてくれる、唯一無二の恋人の想いとともに。
 明日のシフトは揃って早番だった。
 揶揄のように聞こえかねない祐希の台詞が、掛け値なしの気遣いであることを昴治は知っている。それでも「こと」の決断を任されるのは酷なことであったらしい。
 「・・・バカ祐希っ」
 ぽかりと後ろ頭をたたかれた。驚いて兄の顔を覗き込むと、子供のような膨れっ面がぷいっと背けられたところだった。知らずこみ上げる笑いを懸命に噛みしめ、
 「お互い様だぜ、バカ兄貴」
 躊躇を捨てた祐希を止めるものは最早ない。
 うなじを味わった唇を胸元まで滑らせながら、着衣の上から兄の前後を撫でつけた。
 先程からの睦言でとうに敏感になった昴治自身は、布地を押し上げその存在を祐希に主張してくる。ファスナーを殊更ゆっくりと下ろして、くつろげた隙間から両の手を差し入れた。
 利き手で濡れ始めた昴治のものをやんわりと揉みしだき、もう一方の中指で未だ凍えたままの蕾の輪郭をなぞっていく。
 「・・・あ−−」
 祐希の耳をうつ、甘い吐息。
 その声を楽しむ為、ただ優しいばかりの愛撫を繰り返す。
 「ゆう・・・き・・・っ」
 焦れた昴治が抗議を申し立てるのにさして時間は掛からなかった。背中に廻された腕の力が強まり、快楽を待ちわびるそれを祐希の下腹部に擦り付ける。
 「まだだ」
 兄自身の蜜にまみれた右の指を温みだした蕾に差し入れた。声を殺して昴治は息をのむ。
 指が馴染むのを待って慎重に掻き回す。指を増やしてさらに奥を探った。
 「んっ・・・は・・あ、ん・・・」
 そしてまたもう一本。
 「は・・ん・・・あぁ・・・っ」
 シャツ越しに立てられた爪のもたらす浅い痛みが、祐希を性急に追い上げていく。くしゅくしゅと音をたてて弄るそこから一気に指を引き抜き、名残を惜しむ昴治の切ない喘ぎを聞きながら、祐希は猛った激情を白い身体に突き入れた。
 「っああ・・・!」
 狭い室内に昴治の嬌声が響く。祐希を奥へと誘うように蠢く内部の締め付けに、貫いたそれは益々硬度を増していった。
 「−−兄貴・・・!」
 「あ・・・あ、んっ−−ゆ・・・きぃ・・・」
 何度繋がっても飽くことのない、想い。
 たった一人を求めて止まない、この衝動。
 細い腰を引き寄せてなお深く欲した。仰け反る喉元に紅く残った先刻の噛み痕。古の魔物のように、その刻印一つで昴治の全てを虜にしてしまいたい。
 記憶にさえない遠い日、祐希の中に刻み込まれた兄への執着と同じだけの強さで。
 「・・・ゆう、き」
 羽根のように頼りない仕草で、昴治の両の手のひらが祐希の頬を包んだ。
 「俺を、見ろよ・・・ちゃんと・・・ここに、在る−−」
 熱に浮かされ、潤んだ瞳に満ちた暖かな光り。
 ただ気分次第で冷淡な態度をとった。都合の良い時だけ甘えかかった。思い通りにならない兄に言葉の刃を投げたこともある−−あの、夏の雨の日の前でさえ。
 それでも。
 「ぜんぶ、お前の・・・だから・・・」
 兄は選んでくれた−−この、傲慢で臆病な猫よりも始末の悪い自分を。
 抱え上げた足もそのままに、祐希は口づけを求めて昴治に屈み込んだ。より奥を抉られて、昴治の内が強い喜びに震える。
 「はあっ・・・あ!−−あ、あん・・・ゆうき、もっと・・・っ!」
 唇を割り舌を絡める弟の首に縋り付き、昴治は霰もない哀願を繰り返す。
 突き上げ、最奥を幾度も責め貫いて、兄の求めるまま祐希は与え続けた。
 互いの境目さえあやふやになるまで−−心の命じるままに。



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