道具には能力の限界があってその範囲で使えばいい仕事ができますが無理すると怪我をしたり、道具を壊したりとんでもないことになります。
不覚にもそれをやってしまいました。小判型の穴をあけようとしてキリが噛んでシャフトに無理な力が掛かってセンタが狂ってしまいました。これはボール盤にとっては致命的な損傷です。
年末でもあり修理に出しても数万円もの費用が掛かりそうです。
数日前ホームセンタでボール盤の特売をしていたのを思い出してどんなものか見に行ってきました。
特売は終了しなんと¥9800。国産の安物でも2万円くらいしますからそれでも安いのですがなんとなく華奢で買う気はしません。
そうこうしているうちにお正月。別のホームセンタのチラシに同じものが¥5800。この値段ならためしに買ってみようと出かけていきました。
ダンボールにきちっと収まって”私を買って”と言ってるようです。
組み立て式と云っても主要部分は組み立て済みで15分程度で完成です。
これを工作教室で紹介した作業台(参照《作業台を作ろう》)に取り付ければ具合よく使えるでしょう。
振動やセンタブレも問題無く、この値段でこの商品が作れるものかと感心しました。
しかし私はこのことがとても気になるのです。
消費者としては凄くうれしいことです。ひょっとすると1~2年後にはいま2~30万円くらいしている小型の旋盤やフライス盤が5~6万円で買えるようになるような気がします。
2~30年前嵐のごとく輸出攻勢を掛けた日本の電子産業はいまアジア諸国にその座を奪われています。
日本のメーカの名前が付いていても日本製はほとんどありません。コンピュータを自分で組み立てた人はお判りと思いますがほとんどすべてが台湾製です。爆発的に売れているコンピュータさぞかしメーカは利益を上げているのかと思えばそれは台湾に行ってしまうのです。テレビなども日本ではほとんど生産されていません。
バブル期にコスト高を理由に国内の工場がアジア諸国に移転をしました。
始めは品質に問題がありましたが品質管理を指導し、工作機械を持ち込んで製造した結果すばらしい製品ができるようになってきました。
そしていま、日本の企業が企画し指導し作っていたものを、明日にもひとり立ちして売り込みに来るでしょう。
もう日本の手を借りなくても立派な製品ができる力がついてきたのです。そしてそれに呼応して日本の技術力が低下しています。日本にもの造りをする工場が無くなってしまったからです。
これはかつて日本の輸出攻勢で苦しんだ欧米の経験を否応なしにさせられることになるかもしれません。
でもまだ多くの人が日本の技術力を信じているようで技術力低下に気が付いていないようです。
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【 小型卓上ボール盤 中国製 】
組み立て式として輸送コストを下げる工夫をしています。
【 左が中国製、右は国産(KIRA) 】
高さが約10cm違います。重量は2/3くらい。ベースの厚さ、テーブルの厚さ(持ち送りが無い)うすい。コラムシャフト(支柱)が細い。スピンドルシャフトが細い。モータが小さいなどが軽量化に貢献しているようです。これらは良い面と悪い面が裏腹です。
唯一大きいのはキリを取り付けるチャックが13mmまで使えることです。右側の壊れたボール盤は6.5mmです。
これで13mmのキリがまわせるのかちょっと気になるところです。
KIRAと云う製品はあまり聞きなれないかと思いますが工場などではポピュラなブランドです。こちらは一日中使っていても熱くなったりしませんが中国製は冬の時期でありながら30分ほどでかなり熱くなりました。
細部を点検すると安くするため精度が犠牲になっている部分もあるようです。
耐久性には多少の疑問を感じるものの私たちの工作用には十分な性能であると思います。
*この写真の作業台は工作教室で紹介したものとは違います。
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