第一章 いいコンビ
今日も陽気な暖かさが心地良い日だった。 窓から入ってくる爽やかな風を感じ、外では一生懸命練習に励む人達の掛け声が。 そして僕らはというと、今日も今日とて美術室で絵を描いていた。 「ちょっと飲み物買ってくるわ」 突然立ち上がって増田はそう言った。 分かったと返事をすると共に、少し気にかかったことを言う。 「最近飲みすぎじゃない?」 「うっせ、お前は俺のオカンか」 違います。 「喉渇いたんだよ。ついでにお前のも買ってきてやろうか?」 「僕はいいよ」 言った傍から頼むというのも何だか変な話だ。第一そんなに乾いてもないしね。 僕の返事を聞いて、美術室から出ようとした所で、増田は他の人達にも問いかけた。 「俺、飲み物買いに行くけど、お前らなんか買ってきてほしいものとかあるか?」 「グレープジュース」 「じゃあ、私は緑茶で」 「私、オレンジジュースお願いしますっ」 西園寺さん達は希望の物を口にした。にしても返答早いですね。お三方。 続いて残りのお三方も言葉を返す。 「私はいいわ」 「僕も」 篠原さんとレイ君は丁寧に断りを入れた。一緒にいた鈴本さんも首を横に振る。 全員の答えを聞いて、再び美術室を出ようとした増田だったが、 これまた振り返り、桐ヶ谷さんの近くに寄って、増田は彼女の腕を掴んだ。 「え、なんですか?」 いきなりの出来事に困惑する桐ヶ谷さん。対する増田は少し笑みを浮かべていた。 「1人じゃつまんないと思ってな。ちょっとついてこい」 「えぇ!? 頼んだ意味が無いじゃないですか〜」 ごねる桐ヶ谷さんに、増田が当然だと言わんばかりに言い放つ。 「うるせ。大体後輩が先輩をパシリに使うな。ほれ行くぞ」 「聞いたの先輩じゃないですかぁ! 理不尽です、これは誘拐ですっ」 「人聞きの悪いことを言うなっ」 やんや言いながらも、2人は美術室を出ていった。 出て行った後も、しばらくは2人のやり取りが聞こえていた。元気だね。
続
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