プロローグ
※ここからある人物の戯言がつらつらと流れます。 どうか暖かい目で、見守ってやってください。
全世界の男子一同諸君。 君達はこんなことを考えたことはないだろうか? 『人生間違っている』と。 俺はある。それはもう天文学的数字に達する程、考えたことがある。 一番最近にそのことを思ったのは確か……。 あれは3日前のことだった。
2月14日。 この日にピンとこない人は居ないだろう。そう、バレンタインデーだ。 女子が好きな男子にチョコをあげる日。 今は友人同士でもあげるらしいが、そんなことはどうでもいい。 俺が問題にしてるのは……。
俺、一つも貰えなかったんですけどっ!?
てことだ。 無駄にドキドキして、下駄箱や机の中を覗いていた俺の純情を返せ! い、いや、別に期待してたわけじゃないんだぜ? ただちょっと、貰えたら嬉しいなぁ。くらいに思ってただけ……。 嘘だよ! 本当は死ぬほど貰いたかったわ! 俺と近しい奴らは軒並み貰ってるってのに、 俺だけ貰えないってなんか人生間違ってね? 不平等じゃね?
レイは案の定大量に貰っていたようだった。 朝登校したら、下駄箱、机の中、はたまた荷物を入れるロッカーの中まで。 チョコで溢れかえっていた。 本人は凄く動揺していたようだったが、俺には分かる。 どうせ、内心物凄く喜んで、 家に帰ったらそのあまぁ〜いチョコを一つずつ味わって食べるんだろ? そうに決まってる。
俺の親友は俺を裏切らないと思っていた。 良い奴だとは思ってる。 でもその手の話となると、 俺と同じくらい……いや俺よりも倉崎の方がよっぽど可哀想に思えてくるくらいだ。 少なくとも、この日まではそう思っていた。しかしあいつは……
「今年は一つ貰えたよ。いやぁチョコなんて何年ぶりだろう? 本当に嬉しいよ」
なんてぬかしやがった! この裏切り者! その時の倉崎は、本当に良い笑顔をしていた。 くっそぉ……せいぜい大事に食べやがれ……。
な、人生不平等だろ? 俺にだけみんなくれないんだぜ。 今年は美術部の奴らから貰えるかな? って思ってたけど、そんなことは無かったよ! 音沙汰無しも良い所だ……。
でもこんな俺でも、羨ましがっている奴は居る。 そいつは中学の頃のダチで、今は男子校に通っている。 最近でも連絡は取り合っており、その手の話は良くしていた。 そしてある時、そいつは言った。 お前は恵まれた環境に居る、と。 確かにそいつに比べたら、恵まれた環境には居るだろう。 なぜならそいつは、チョコ云々以前に、周りに女子が居ないのだ。 チョコなど貰えるはずもない。 ……その点に関しては、共学で本当に良かったと思っている。
そしてその共学の中でも、俺は更に恵まれた環境に居るだろう。 気心の知れた親友が居る。 学校一の人気者が友人。 これだけでも、十分充実した学校生活が送れるはずだ。そしてそれに更に付け加えて…… 驚く程、ハイスペックな女子達が居る。
美術部女子勢。計4人。 外見のスペックの高さは言わずもがな。 加えて中身も特徴的かつ、とても魅力的な奴らばかりだ。
篠原 裕子。 倉崎、レイに熱烈なアプローチを受けた美術部一モテる女。 性格は優しくおしとやかで、これぞ女子って感じである。 その整った顔立ちから繰り出される笑顔は、まともに食らってしまえば最後。 そいつは篠原の虜になる。 ソースは倉崎とレイ。
西園寺 綾。 綺麗な長髪と無表情。 そしてなんと言っても、 腰に携えている日本刀が特徴的な、美術部一色んな意味で放っておけない女。 普段は人を遠ざけるように振舞っていて、一瞬愛想のない女だと思いがちだが……。 俺はそうとは思わない。誰よりも他人を案じている優しい奴だ。 殺人衝動にも負けずに、必死に人を傷つけないように努力している。 そんな一生懸命な綾は、個人的にかなりポイントが高い。
柊 美影 全身を覆っている呪縛布が特徴的な、美術部一謎な女。 行動理念がしっかりしてるのは良いんだが、それでもこいつの言動は未だによく分からん。 自然、自然言いつつ、こいつが一番美術部の中で不自然な存在だ。 まぁそのズレっぷりが良かったりするんだが……。 他にも、ちゃんと言うことを聞いてくれる素直さとか、 自然って単語を使ったらすぐに騙される所とか、チャームポイントはいっぱいあるな。 でも、それらを総合的に考えたら……まぁ良く分からん奴だよな。
鈴本 琴音 声が尋常じゃない程小さいことが特徴的な、美術部一油断出来ない女。 声が小さいことを利用して、すぐに抱きつこうとしているし(倉崎限定) 人をからかうことも好きなようだ。俺のおふざけに乗ってくれる唯一の人物でもある。 地味に美術部一胸が大きい。そんなに大きくもないが、美術部は全体的に平均が低い。 まぁ鈴本くらいが、 一般高校生女子の平均……いや、もうちょい大きいくらいか? ってくらいだ。 それでも一番大きいって……美術部女子勢、どれだけ貧にゅ――――おっと、誰か来たようだ。
こんな感じだ。 なんでいきなりこんなことを言い始めたかと言うと、 俺はこれだけ恵まれた環境に居るんだぞ、という証明と……。 これだけ恵まれていようが、チョコを貰えるとは限らないってことだ。
くっそぉ……マジで虚しくなってきやがった……。 良いな倉崎は。良いなレイは。俺なんて、俺なんて……。
あぁもう、こうなりゃヤケだ! 絶対に新年度入る前に彼女を作ってやる! それか俺限定のハーレムを作り上げてやるっ。 待ってろよ、絶対にモテモテになってやる。 レイ以上の男に……俺はなる!
続
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