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第一章 バイトをしよう

 

 

 

 

「金がねぇ。やべぇ、どうしよ」

「朝っぱらから何言ってんのさ……」

高校に入ってからすっかり僕の親友ポジに着いてしまった増田は、どうやら金欠らしい。

「やばいんだって。

近い内に新作のゲームが出るからよ。それまでに何万か無いと困るんだよ……」

「別にお金が無いなら今買わなくても良いじゃない」

「分かってないな〜。倉崎は。発売日当日にプレイするのが良いんじゃないか」

「そういうものなのかな?」

「そういうものなの! えーと求人誌は……。あったあった。家から持ってきたんだよ」

「用意周到だね」    

「あたぼうよ。思い立ったが吉日ってね」

そう言って増田は求人誌に目を走らす。お金が無い……か。

僕はそういう経験は無いけど、高校生にもなると結構当たり前の事なのかな? 

クラスメイトの何人かもバイトをしているし。

「お! こことか結構良さそうじゃん」

何かめぼしいバイトを見つけたらしい。

「どれどれ……。えーと、動けて元気な子募集! 時給九百円。仕事内容はお店の手伝い。

シフトは希望に合わせます。 モスラバーガー。なんか良さそうな所だね」

増田が見つけた求人広告はいかにも普通なファーストフード店の求人だった。

増田の事だから変な仕事とか見つけてきそうだったけど……。

「だろ? 

まぁいかんせん普通な感じがするのがちょいと気に入らないが、背に腹は代えられないからな。

この際妥協する」

やっぱり普通は嫌なんだ……。

 

 

 

                                 

 

 

 

放課後。

親友の倉崎と別れた後、俺はすぐにモスラバーガーがある所へ向かった。

「えーと。住所によるとこの辺りなんだが……」

近くまで来てみたけど、目的の店は見つからない。

そんなに入り組んだ所でも無いからすぐに見つかると思ったんだけどな。

……しょうがねぇ。

「すいません。ここら辺にモスラバーガーって店ありませんかね?」

最終手段、道行く人に尋ねる。

近くに住んでる人なら知っているはずだ。俺は一番近くにいた人に尋ねた。

「モスラバーガー? あぁその店ならほら、あそこに見えるだろ? あれがそうだ」

おっさんが指差した先を見てみると、少し遠くにそれらしき店が見えた。

俺は軽くおっさんにお礼を言ってからモスラバーガーに向かった。

 

 

 

「いらっしゃいませー!」

店に入ったら三十代前半だと思われる爽やかな青年から威勢の良い挨拶された。

ファーストフード店なら当たり前だが、なんかムズ痒い気持ちになるのは何故だろう……。

「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか?」

「あの、すいません。求人広告を見てきたんですけど、ここってバイト募集してますか?」

俺はバイトの面接をするために来たのであって、飯を食いに来たわけでは無い。

店員だと思われる男は、少し戸惑った後、辺りを見渡してから、

「してますよ。バイト希望者ですね? 少々お待ち下さい。

……美影―! 少しレジ変わってくれ!」

「了解」

「それでは事務室へどうぞ」

俺は店の奥へと案内された。

 

 

 

 

 

 

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