IRON POT


○猫田のマンション

 部屋を探しながら、廊下を歩いてくるテルオ。

テルオ 444号室、444はどこかな…

 ピンポンとチャイムの音。続けて、配達人の声も聞こえる。

配達人(声) 宅配便でーす。

 銃声。

配達人(声) ウワー!!

 ぴゅー、どさり、と、誰かが外に落ちていった音がする。驚いて駆け寄るテルオ。
 ドアの前、宅配便の荷物だけが残されている。

テルオ (指差し確認しながら)撃たれて…落ちた…ここですね、と。(手すりの下を覗き込む)あら、あらーあんな…。たった一言だったのにね。

 テルオの後ろのドアから、拳銃を手に猫田が出てくる。テルオの隣りで同じく下を覗いて、

猫田 だから話しかけるなっつうのにな。(テルオに)なあ。
テルオ はい。(と思わず返事して、相手が猫田だと気づく)…!!

 テルオ、びくつきながらその場を離れそろそろ歩き出す。

テルオ (独り言のように)…今のはセーフだと思いながら、歩き去ろうとするわたし。
猫田 なんだお前。

 ビクッと立ち止まるテルオ。

テルオ (猫田に背を向けたまま)…スーパーひとし君人形です。(小声)…ダメかな…。
猫田 セーフ。
テルオ (ホッとする)ふぅー。
猫田 ひとし君人形がなんの用だ。
テルオ (どきっ)…ダイヤを返してくれ。…なぁんて言ったら殺されるんだろうなーって思う今日この頃、みなさんいかがお過ごしでしょうかー。
猫田 セーフ。
テルオ ふぅー。
猫田 おい。(テルオが反応しないので語気強め)おい。
テルオ (仕方なくバック歩きで戻る)後ろにさがるひとし君人形。
猫田 なんか面白いこと言え。
テルオ …地震、雷、家事手伝い。なんつって…(小声)やばい、今のやばい。今のはやばいぞ…
猫田 ぎりぎりセーフ。
テルオ うぃー。(ホッとする)なんだ、なんだ、話せばわかる人じゃないですか。ねえ。(と笑顔で猫田に話しかける)

 猫田、拳銃をテルオのほうに向ける。

テルオ !!(ホールドアップ)
猫田 ワンアウト。
テルオ あ?そ、それって、何アウトまであるんですか?
猫田 ツーアウト。
テルオ ! い、今のは無しにしてください!
猫田 スリーアウト、チェンジ。
テルオ あー!(撃たないで、と手を顔の前でバツにする)

 猫田、銃を回転させてテルオの側に握りを向け、お前が持てと促す。

テルオ え…チェ、チェンジ?あっ、こ、今度、じゃボクの番ですか。(と聞く)

 猫田、銃を持ち直す。

猫田 殺す。

 と言うなり猫田、テルオの顔に向けて銃を撃つ。

テルオ あ゛ー!!(思わず顔の前に手を出す)ちょっと!いきなり撃つのやめてくださいよ!(手の中で掴み取った弾丸を見て)ほら、取れてたからよかったけどさ。あっぶないとこだなあ。こう、パッといけたからよかったけど…なんで出来たんだろ!!

 ダッシュで逃げ出すテルオ。

テルオ なんで出来たんだろ〜これ!?
猫田 殺す!

 テルオを追って猫田も走り出す。
 二人が去った廊下に、ほうきとちりとりを持った管理人が現れる。

管理人 (二人の去ったほうを見送り)ああ猫田さん、あいかわらず物騒だねえ。

 銃声。
 倒れる管理人。

テルオ(声) ひえ〜っ!!


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