NECの「転び」について


 え〜、取り敢えず、新年明けましておめでとうございます。

 1998年最初のアップデートになりますので、どんなネタでいこうか、考えてみました。MSのIE4.0xの滅茶苦茶さをこきおろしてみるのも良いんですが、IE4.0xの話題に関しては、今までにも色んな方が取り上げてらっしゃいます(こちらなんかいつもながら面白いですね)ので、今あたしが取り上げるのもどうかな、などと思い、「今更ながら」の感は強いですが、日本電気(以下NEC)のPC-9800路線からDOS/V(注:NEC自身はDOS/Vとは言ってませんが)路線への、宗旨替えについて、私なりの考えを述べてみたいと、思います。

 先に書いてしまうと、私、NECが「転ぶ」のは、1995年(=Windows95英語版、日本語版が発売された年)時点でもう時間の問題だと思っていましたので、昨年(1997年)秋の幕張メッセでのWorld PC EXPOで、「PC98-NX」シリーズという名称で、DOS/V機(注:くどいようですが、NEC自身はPC98-NXシリーズを、「PC/AT互換機」とも「DOS/V機」とも言っておりません(^^;;)を発表し、事実上DOS/V互換機市場参入を表明した時にも、別に驚きはありませんでしたね。ただ、驚きはなかったけれども、いささか「何だかなぁ〜」という、やりきれない気持ちはありました。そのやりきれなさの理由としては、
1.「ウチはPC/ATは絶対に出しません。今までの何百万という、PC-9800ユーザーを大切にします。」と、少なくとも1997年春頃までは、公式コメントとして述べていながらの、この豹変ぶり。(少なくとも、一般ユーザーにとっては豹変ですわな。)これじゃ、「『PC/ATは絶対に出しません』じゃなくて、『PC/ATを出しても絶対にそう言いません』の意味だったんだネ」と言われても、仕方ありませんな、NECさん。
2.PC-9800シリーズを守るにしろ、捨てるにしろ(捨てた訳だが)、どのみち「MSと心中路線」であることに変わりないこと。いや、寧ろ、「PC97仕様準拠、PC98仕様一部先取り」を全面に打ち出したことで、MSとの心中路線が、却って強まったこと。NECほどの技術力を持った企業が、こともあろうに、あの天下の反則大王Microsoftと運命を共にする道を、わざわざ選ぶなんて、実に勿体ないことです。

があります。

 まあ、1.については、この「生き延びる為なら反則スレスレ行為だって何だってやる」パソコン業界の、メーカーの言い分を真に受けてた側が、つまり騙されてたユーザー側が、馬鹿だと言ってしまえば、それまでなんですけどね。ただ、私、前回のエッセーでも書いたんですが、世の中は、決して「パソコンマニア」ばかりではありません。いや、言わずもがな、「一般人」のほうが、圧倒的に多いです。そういう、一般人を(半ば)騙し続けてきたことが、そして、そういう「騙し」体質の業界であることが、一般人にも分かり始めてきたことが、現在パソコンの売れ行き絶不調の、最大の原因に、私には思えるんですが、どうですかね。

 また、2.の「勿体ない」という感想は、私のNECに対する偽らざる気持ちです。私、未だかつてPC-9800シリーズを個人的に購入したことはありません(勿論これからもあり得ない)が、仕事では、この十数年の間、幾度となく使ってきております。その経験から思うことは、NECマシンはとにかく頑丈で、故障しにくいということ。PC-9800用DOSに変なバグがあるとか、GUI時代にはPC-9800アーキテクチャは却って不利だとか、そういうソフトウェア的な要素はともかく、ハードウェア的には、これだけ多くのパソコンメーカーがパソコンを作っている今でも、NECマシンはピカ一だと思います。(これは本当にそう思います。)そう言いつつ、私が、個人的には、日本IBM及び東芝のパソコンのユーザーであるのは、先にも書いた通り、DOS/V登場以降、世界標準のPC/AT互換機が日本でも市場を制圧するであろうという、実に分かりやすい予想があったから、先のないPC-9800を買いたくなかったからです。ハードウェア的な品質の面から、NECを敬遠した訳ではないんです。

 話が少し逸れましたが、ともかく、そういう「良いハード」を作っているNECが、あのMSとの心中路線を、より一層旗幟鮮明にしてしまったことは、とても残念です。これで、これから先のNECの運勢も、大体決まってしまったと言えるでしょう。経営トップの判断一つで、企業はどのようにでも発展し得るし、逆にどのようにでも没落し得るという、典型的な例として、後世に語り継がれるかも知れませんね。(あと何年かしたら、ハッキリすることです。)

 と、ここまで書いてきて、私、今気付きました。このページのタイトルの「NECの『転び』について」という表現、元々は勿論、「宗旨替え」「改宗」の意味の「転び」で使ったんですが、「転落」という意味も含ませることができますね。「NECの『転落』について」というふうに読むことも...(^^;;まあ、何にせよ、NECさん、ビジネス上、MSと今すぐ完全に手を切るのが難しいのは分かりますが、いつまでもあんな腐れ外道企業とつるんでると、世間的なイメージも、非常に悪くなってっちゃいますよ。技術力は文句なくあるんだから、MS依存の度合いを、少しずつでも減らしていかないと。(これは、NECに限ったことではないですね。富士通、東芝、DELL...IBM以外の全てのパソコンメーカーに言えることです。ただ、COMPAQは、MSから離れるのは無理かな?)