Microsoft敗色濃厚


 おっと、こちらは約一ヶ月半ぶりの更新ですね。MSについては、ここんとこ色んな話(勿論、裁判がらみの)を聞くので、「書かなきゃなぁ〜」と思いつつ、なかなかまともに書いてる時間がなくて、そうこうしてるうちに年が変わってしまいました。っていつもの如き言い訳はこれぐらいにしとかんと、クドくなるのでここまでとして。早速、本題のほうに入りましょうか。
 先ず、私、前回のコラムで、MSが「Sun microsystemsとのJavaの互換性問題裁判で全面敗訴」の件を書いたんですが、その時私が予想した通り、MSは当初「書き直しは90日もあれば充分」と言ってたのが、最近になって、「猶予期間を120日にしてくれ」と裁判所に泣きつきましたね。(笑)まあ、元々、MSのネイティブな技術力なんて、(世間の人が思ってるほど)ろくにないですから、Inpriseの「助けましょか」の申し出も断った(注*1)ようだし、そうなると今回の「90日以内に100% Pure Javaに書き直せ。それができなければ、製品を回収せよ。」という、異例とも言える厳しい仮命令を、MSが簡単に実行できる訳はない、とまともな技術者なら皆思ったはずですが、やっぱり案の定か、って感じですね。この件、私が更に続きを予想すると、猶予期間は120日でも足りなくて、この先更に「150日にしてくれ」「200日にしてくれ」って何度も延期を申し入れるんじゃないですかね。(笑)MSは、マーケティングでもいつもそうですからね。Windows3.0以降(というより実際にはMS-DOS Ver.3の頃以降)なんて、常に「もうじき出す」「もう間もなく出す」と言って、ずるずる先延ばしにして、基本ソフトにせよ応用ソフトにせよ、ユーザーやベンダーが他社に乗り換えるのをくい止めてきましたから。

 でも、ユーザーやベンダー相手なら「もう中身は殆どできてます。今は細かい調整・チューニングをやってる真っ最中です」みたいなことを(たとえ嘘でも)言っておけば、引き留めることができたにせよ、裁判所に何度も嘘の申告が通用する訳ないですからねぇ。(何度も延期を申し入れるようなら、裁判所は「今現在どこまでできてるのか、資料を提出せよ」と必ず言うでしょうから。)「120日以内に書き直します」と言ったら、本当にそのように実行することを、裁判所は求めてくるから、MSのいつもの「のらりくらりと何度も延期」という常套手段が通じませんわな。(それでも使うでしょうけど。だってそれしか能のない会社だもん(爆笑))私、率直に言って、MSは120日でも「100% Pure Java」に全ての製品(Windows98、IE、Visual J++など)を書き直すのは多分無理だと思ってるんで、120日経った頃に、今度はどう言い訳するつもりなのか、楽しみにしております。(爆笑)
 次に、司法省と争ってるほうの裁判。反トラスト法で訴えられてるほうの裁判ね。こっちも、もうMSの敗北濃厚の状況のようです。(前回書いたように、一説には、1998年中にも判決が出ると言われてたんですが、MSの引き延ばし戦術の為に、少し延びて、今年2月くらいに一審判決が出そうな雰囲気だそうです。)今や、焦点は勝ち負けではなく、どういう処分がなされるか、のほうに移ってるようです。

 MSは当初、こっちの反トラスト法裁判のほうは、割と甘く見てたフシがあるんですね。何故かと言うと、「Javaの互換性裁判」のほうと違って、こっちの裁判では物証があまりなく、状況証拠と証言が中心(注*2)だから、司法省側に何を言われようと、何を突きつけられようと、「知らぬ存ぜぬ」で通せば何とかなる、と思ってたからのようです。まあ、下準備として、MSにすれば奴隷同然の一般PCメーカーやベンダーを、契約条項その他を盾に「MSに不利な事を外部(=裁判所)で言わないように」と依頼(実質的な脅し)さえしておけば、自分とこの汚いやり方が表面化する度合いは少ないだろう、と踏んでたんでしょうね。ところが、MSにとっても計算外だった(と思われる)のは、かつての盟友(?)intelやAppleやCompaqからも造反証言が続出したことでしょう。少なくとも、一方的にイジメまくってきた普通のPCメーカー、ベンダーに比べたら、上記の企業は、MSとはある意味「持ちつ持たれつ」の関係だった訳だから、これほどまでに反逆されるとは思ってなかったんでしょ う。いや〜、ちょっと読みが甘かったかな、ゲイツちゃんも。人間、やっぱり日頃の行いが大事だよ、って事ですねぇ。(爆笑)

 話を反トラスト法裁判のほうに戻すと、MSは、かつての盟友にも次々不利な証言をされてる上、その他のPCメーカーやベンダー、例えばDellとかGateway2000とかには、(司法省側が求めてない件までも(笑))MSのあくどい商売のやり方の詳細を暴露されて、いよいよ窮地に立たされてますね。その上、法廷戦術も最悪だし。例えば、MS側の弁護士は、MSに不利な証言に対してまともに反論することをせず(元々反論材料がないんだから仕方ない(爆笑)けど)、証言台に立った人の個人攻撃(注*3)に終始してるね。これには、流石に裁判官も不快感を隠せないようで、たびたび「裁判に関係ない事は述べなくてよろしい」と注意していますね。このあたり、う〜ん、窮すれば鈍す、なのか知らんけど、元々裁判官の心証が良くないのに、これ以上心証悪くしてどんすんだろ、って思うね。(苦笑)
 これら以外にも、MSはまだまだいっぱい裁判抱えてます。まあ、米国は訴訟社会であり、米国の大企業ともなれば常にいくつか裁判を抱えてる訳ですが、それにしてもMSの場合は異常な多さであり、内容的にも社会的に注目されるものばかり。今までの悪行のツケが一気に噴き出してきた、って事でしょうね。例えば、裁判そのものとしては、Sun microsystemsと争った(というか、まだ係争中?)裁判や司法省との裁判ほど注目されてないけど、「Windows3.1の時に、DR-DOSに対して行った不正行為」について、Calderaと争ってる裁判(注*4)もあります。この裁判でも、MSは負けそうな感じだと言われています。MS-DOSとDR-DOSとの戦いは、市場に於いては既に決着が着いており、「今更『DR-DOSを潰す為にMSがどんなことをやったか』を明らかにしたところで、何の意味があるの?」と思う人もいるでしょうが、決して無意味ではないですね。と言うのは、MSの不正工作の事実が裁判で認定されれば、「本来ならDR-DOSが上げることのできたはずの利益」分を、損害賠償としてMSは支払わねばならなくなる(可能性がある)からです。大金持ちのMSにしたら、この程度の賠償額(と言ってもどの程度か分かりませんが)、屁でもないでしょうが、社会に与える心証はますます悪くなるのは確実ですね。
 他にも、Windows(95/98/NT)のOEM価格について、「MSは100億ドル以上不当に儲けている」かどで訴えられたり、Windows98が2000年問題に完全対応してなかった件で、損害賠償請求されたりと、まあ、私みたいな一般人が知る範囲だけでも、訴えられてる裁判あるわあるわ、この会社。まあ、先ほども書いた通り、米国は訴訟社会だし、MSのような「大金持ちで有名な企業」から、いっちょたかってやれ、って感じで起こされた裁判も当然中にはあるだろうけど、それを差し引いても、訴えられる内容も件数も桁違いですな、この会社。結局のところ、米国が(過剰なまでに)競争社会だという事を考慮しても、「競争手段として明らかに不当だし、場合によっては法に反する」事例が、MSの場合、多すぎるんだよね。だから、至る所で潜在的な敵を沢山作ってきた訳だし、そういう企業は(勿論個人でも同じ)一旦風向きが変わると、全部が敵になるからね。今のMSの状況が、まさにそう。
 MSと言えばかつては「裁判上手」で知られたんだけどねぇ。ゲイツちゃんの父親が辣腕弁護士だってのは、昔から有名だしね。その父親の紹介する弁護士などのお陰で(かどうかは知らんけど)、MSはかつては裁判ではほぼ負け知らずだったんですけどねぇ。例えば、Windows3.1(ひょっとしたらWindows3.0の頃だったかも)が世の中に出た頃に、Appleから「MacOSの真似をしている」と訴えられた時だって、最後は逆転勝訴しましたしね。ただ、流石の裁判上手も、これだけ、不利な証拠や証言を並べられては、もう何ともならない、ってのが本音でしょうな。(笑)何にせよ、これこそ、自業自得以外の何物でもない訳だから、誰も同情してくれませんわな。

 まあ、各種の裁判に関しては、結論が出たのはまだほんの一部だけだし、まだこれからですけど、少なくとも主要な裁判では、もうMSの敗色濃厚なのが殆どだし、後は気になるのは、市場の動向、業界の動向ですね。と言うのも、市場の動向は裁判とは全く別物だし、MSがどれほど信用を落とそうと(注*5)も、MS製品と置き換えれるだけの製品を提供できるベンダーがないことには、ユーザーとしてはいくら「低性能・不安定・高価格・加えて非オープン」であっても、結局MS製品を使い続けなきゃならない状況に変わりはないですからね。
 しかし、気になる市場動向のほうも、良い方向に傾きつつあると、私は思っています。幸いにして、今はLinuxやFreeBSDに代表される、「高性能・低価格(OS自体はタダ)・しかもオープンソース」なPC-UNIXが凄い勢いで伸びてきているからです。先ほど述べた、CompaqやDellといった大きなPCベンダーが、MSに対する造反証言を裁判でしているのも、これらのベンダーが、最近Linuxプリインストールマシンを出荷するようになった事と無関係ではないと思います。つまり、基本ソフトを全面的にMSに押さえられてて、MSからライセンスを受けない事には商売にならなかった頃に比べ、今はMS頼み一辺倒でいかなくても良い、他の選択肢もある、という状況になったからこそ、勇気を持って造反証言する人がこういうベンダーから出てきた、と言えると思います。(Compaqの場合は、DECを買収してDigital UNIXのライセンスも取得してますから、MS一辺倒でいく必要は、さらにないですね。)

 独裁者が倒れる時は、これに替わる英雄が必要なんです。ルイ王朝の後のナポレオンしかり、帝政ロシアの後のレーニンしかり、徳川幕府の後の維新志士達もそう言えるかな。今のLinuxは、まさにMS帝国を倒す旗印・英雄の象徴になりつつある感がありますね。それはそれで大変頼もしいんですが、ただ気を付けなきゃいけないのは、民衆を救った英雄も、時と共に変質し、「以前とタイプの違うだけのやっぱり独裁者」に成り果ててしまう事もよくあるって点ですね。ナポレオンもレーニンも維新志士達もそうでしたからね。(苦笑)Linuxに当てはめると、Linuxには色んなディストリビューションがあるんですが、それぞれのディストリビュータが、どうもあまり仲が良くないと言うか、「我こそ本道」と主張してるフシがあるのが気になります。オープンソースで、「改変も自由、但し良いものが作れたらみんなにその恩恵を分け与えてね」って精神に、本道もくそもないと思うんですが、やっぱり、人間商売がからむ(注*6)とそうも言ってられないようで。(苦笑)今は、MSという共通の敵がいるから、Linuxディストリビュータ同士、或いはLinuxサポータとFreeBSDサポ ータ、たとえ仲が悪くても、それほど表面化しませんが、MSがはっきり没落しちゃったら、どうなるか分からんよね、これじゃ。ま、まだ気が早いかも知れませんが、それだけ私はLinuxに将来性を感じている、という事でありまして。(実際、今自宅のデスクトップマシンには、Turbo Linux 3.0をインストールしてあって、時々いじりながら勉強させてもらってます。)今回はこれにて締めと致します。
(注*1) Inpriseの申し入れを断った経緯は分かりませんが、多分、Inprise側が助ける条件として出した条件(ライセンスの及ぶ範囲とか、金額とか)が、MSの飲めるものでなかったって事でしょう。やっぱり、ここぞとばかりにInprise側は積年の恨みを込めて、色々ふっかけたり、いちゃもんつけたりしたんでしょうか。(笑)
(注*2) 状況証拠は山ほどあるが物証に乏しい、ってとこは、4年ほど前の一連のオウムの事件とか、去年の和歌山の毒カレー事件を連想させます。こういう事件って、やりきれない不快感を覚えますね。ってことは、MSの今までやってきた事も、まさに不快感を覚えさせるものだった、って事ですね。ま、当然と言えば当然か。
(注*3) 個人攻撃の一例。「あなたは、xx年にxxxxという会社を設立したが、x年後に倒産させていますね。そのような人にビジネス慣習について語る資格があるんですか?」というような尋問があったそうです。こんな低レベルな尋問しかできないMS側弁護士って、一体何?
(注*4) Calderaとの裁判について簡単に。要は、昔(1992年頃かな)、MSがWindows3.1ベータ版(正式版の前のテスト版)を各ソフトベンダーや一般のモニターに配布した際、その中に「『今自分(Windows3.1)が動いてるプラットフォームはDR-DOSであるかどうか』をチェックし、DR-DOSであれば、わざとクラッシュする」コードを仕込んでおいて、ベンダーやモニターに、「WindowsはDR-DOSと何故か相性が悪い。MS-DOS上で動かさないと駄目らしい」というイメージを植え付けさせ、結果として、市場からDR-DOSを駆逐した、というもの。(これは、色んな証言から、事実のようです。)ちなみに、DR-DOSとは、当時割と売れていたMS-DOS互換OSで、APIレベルではMS-DOS互換であるものの、各種ユーティリティはMS-DOSより遙かに優れたものが付属していました。
(注*5) 信用と言えば、最近、米国でITマネージャ(要するに情報戦略部門の責任者)を対象に行われたアンケートで、MSは「最も信用できないベンダー」部門で、ぶっちぎりのトップを獲得したそうです。(爆笑)まあ、ITマネージャ・クラスともなると、日本のお人好しユーザーみたいに、簡単には騙せませんわな。
(注*6) LinuxとかFreeBSDとかは、OSの基本部分はボランティアが作ったり改良したりしてて、基本的にはフリー(無料)かつオープン・ソースで配布(ディストリビューション)されるんですが、その上で動くアプリケーションは無料とは限りませんし、まして(正式にサポートしているベンダーの)サポート料は、無料ではありません。つまり、LinuxやFreeBSDにアプリを付属させて(つまり付加価値をつけて)配布したり、サポートしたりするのは、(ボランティアでやる所もあるが)、基本的には企業になります。この段階で、商売が絡んでくるんですね。(良い意味でも悪い意味でも。)