夕暮れ
「だいぶ ようなったね
歩いてる姿見て そう思った」
声掛けられて爺さんは、帽子のつばに手をやって
にっこり笑って散歩を続ける
夕刊配達のバイクが二台
「オツカレ」と声掛け合ってすれ違う
友呂岐緑地を抜けて神田(かみだ)の旧道
ゆっくり我が家へ向かう僕は
「無病息災、一病息災」と呟いて
何一つ言い残すこともなく
突然この世から消え去った
一つ年下の同僚を思う
血圧が少し高めと聞いてはいたが・・・
「無病息災、一病息災」