夢の残像




 
時々夢枕に立つ父と久しぶりに今朝方会った。
ひなびた駅の改札を抜け、踏切を渡り、家路を急ごうとする父に
僕は声をかけようとしたのだが、
とめどなく涙あふれてくるという夢だった。

後ろ姿を見ていた筈の僕に父の顔が鮮明だったのはどういうわけか。
りりしく雄々しい声で「頑張っているか」などと
励まされたように感じたのはどういうわけか。

繰り返すまどろみの中
次の場面は海だった。六甲近くの海だった。
我が家の五人が突然の雨に打たれ
突如飛び込んで着替えをした民宿のおばさんに
300円請求されているという夢だった。

二つの夢は符合するのか。
 
山登りはあきらめて
家に帰りましょう、と相談がまとまったところで
目が覚めた。

夢から意味を見出そうとすると
首筋がコリコリと音をたてる。
 
父の姿と、雨に濡れた子供の下着とが
昼近くまで残像として
僕につきまとっていた。


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