葉状腫瘍
妻の左乳房にしこりがあることに気付いたのは僕ではない
まして隣家のおっさんでもない
「あれっ?」と首を捻ってから一夏過ぎた二〇一五年九月五日
M記念病院八時半受付
「お熱もらいますね」
看護師さんは患者から熱をもらっているのかと驚いていると
「だんなさんは待合室へ」と指示された
「だんなさん」と呼ばれて船場の商人みたいな気分だった
朝刊を読み終えないうちに除去手術は済み
お昼には我が家に帰っていた
傷口を見せられながら、焦げ臭かったと聞かされながら
悪性でなかったことを喜び合いながら
ナイチンゲールは看護師ではない
看護婦さんだと強く思った