やがて




「すぐに、そのまま」という意味であった「やがて」は
遥かに過ぎてしまい「かささぎの 渡せる橋に」小一時間
「いつまで待っても来ぬ人を」待ち続けていたのである
元来、人間とはアンパンクチュアルなものなのか?
憤りさえ感じていたのである
お互いの無事を確かめるための 年に一度の逢瀬を
「待つ身が花」と心静めているうちに
待ち合わせの曜日違いに気づいて僕は
すぐに百貨店の書籍売り場を離れ
そのまま、まっすぐ家路へと向かったのである




  ゆかし




「なんつってもさ」
京都に向かう電車の中で
鳥が鳴く東の言葉が飛び立った
「無欲の人間にはさ、成長ってものがないんだよね」
何やらゆかしその男を、見たい知りたいと
声のした方を振り向くと
同僚の肩に手をやって
「一度言ってみたかっただけさ」
えらくしょんぼりとした口調になった














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