中年ライダー





七草のセリを摘もうと登った山道の
不法投棄されたゴミの中に
ヤクザに宛てた手紙の山を見つけた
代紋入りの残暑見舞いは巻紙だった
「親分、組をやめさせて下さい」との拙い字もあった
拾って帰って話の種にしようと思ったが
新春にふさわしくもあるまい
他人の手紙に用はない

家で話すと
現物を見たかったのに、と言われた
学校で話すと
さぞや幾つものドラマがその中に、と言われた

次の休みを待ち侘びて
僕は再び自転車を走らせたのだが
手紙は既に焼かれていた

焼け焦げた一角に
使い古された口紅が
ポツンと一つ落ちていた

この春こそはバイクを買おう
一気に麓まで駆け登り
木の輝きをこの目で見よう

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