あとがき
オリンピックでメダルを得て、なお四年後もという選手を、厚かましいと思っ
たことがある。夢叶えば現実となり、さらなる夢を追い求めたくなるものなのか。
四十五の歳に詩集を上梓し舞い上がっていた自分も、暦が一巡りすると、また
次なる詩集を出したくなった。A4のクリアファイル三冊、順不同で涸沢さんに
手渡して編集をお願いした。おかげで若い頃の作品も含めて『次に会う人』と相
成った
古城の南から、京都よりの高校へと転勤が続いた。時に梅田へ出て、「麺固い
目」と告げて「揚子江」のラーメンを食べる。春菊の香りとともにスープを飲み
干す。HEPの観覧車を見上げて中津まで歩く。涸沢さんと話した後で、阪神の
地下でイカ焼きを買う。淀屋橋まで歩きながら「御堂筋の、たあそおーがーれー
は」とハミングする。お決まりのコースは実に心地よく夢の道に通じる。
前作同様、表紙の装幀はM氏こと松田彰氏の作品である。涸沢さんのご援助、
松田さんの励ましに感謝申し上げるとともに、『次に会う人』が増えることを楽
しみにしている。
二〇一〇年二月
赤井宏之