次に会う人

辰であれ巳であれ、もう一巡りすれば還暦だ。
雨の「あやめ池」、六十の祖母に手を引かれた僕は
カッパ姿で悲しい顔をしているのだが
あの時、初めて「遠足」という言葉を知ったのではなかろうか。
古いアルバムの台紙は黒い。

恩師の死は逝去である。名簿に「死去」と書いてはいけません。
教えに感謝して辞書を引くと
広辞苑はいたずらな奴で「死去」の項目に「逝去」とある。

あと十二年を四年に一度と区切ろうと僕たちは数々の死に出会う。
肉親との別れを余儀なくされて孫と手を繋いでいる。
友との別れは避けたいものだ。

縁起でもない。僕たちはまだまだ若い。
そうとも言えぬ。新聞が読みづらい。
春の青色を探して友と会い
夏の朱を求めて友と語れど
白秋は近い。

同窓会に出て来ない人に会いたくなった。
その人が
僕たちの青春の別の色合いを隠し持っているような気がしてきた。
まだまだ会いたい人が山といる。
季節ごとに木々は輝き山は様々な色合いを帯びる。

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