サクランボ


一年生の四クラスから集めた短詩集を
「裏表印刷で」と依頼した僕に
「はい両面ですね」と応じた雑賀さんは
その勢いで
松岡先生のテスト問題の裏に解答用紙を印刷してしまった
「どうしたことでしょうね」しきりに小首をかしげる雑賀さんに
「春ですからね」と答えた僕は
印刷し直さなければ、英語のテストを解きながら
裏に表に四十人が
ひっくり返し続けるすさまじい光景を見ることができたのにと
少し残念に思った

その日一日ズボンの下がえらくもごもごするのを感じていた僕は
帰宅後、妻が洗濯物のパンツ一枚を探し続けていたことを知った
春にもかかわらず 、それがバッチであったなら
アルツハイマーの初期症状と疑われる
「ぼけとんのか」「ぼけとんのや」
上方漫才の掛け合いが響いてくる

庭のサクランボが幾つもの花を次々と開き始めた一日だった
三男坊が園児の頃
七夕の短冊に「サクランボをたくさん食べたい」と書いたのを知って
大阪城公園の植木市で買い求めたのだが
どうしたことか
十数年前のことがしきりに懐かしい一日だった


トップページへもどる