六月
いたわり合うように中年夫婦が走り去ったあとで
「パパ!もう帰ろ」という声がして
「もう少しだけ」となだめるパパの声がして
どうやら一緒にジョギングしてほしいパパなのだ
第二京阪道路の下に自由な空間ができて
犬だって
新しい散歩道を喜んでいる
フェーン現象が体温に近い暑さをもたらした一日
梅雨のさなかのじめじめとした夕暮れ
ヤマモモ実る通りを抜けて家路を急ぐ
ゆっくりと湯舟につかり
「一日の仕事の終わりには一杯の黒麦酒」
今は亡き清冽な女流詩人の一節をくちずさみ
美しい六月の村を思う