リリシズム
「ゴメンネェー!ゴメンネェー!」と
ガラス窓を急いであけて
長く伸ばした澄んだ声で
生徒に詫びるあなたの声は
当の生徒にどう届いたものか
僕の耳には極めて心地よく
僕の心には極めてリズミカルに
深く染み入る響きであった
「何故三年の今頃にもなって創作ダンスの発表なの?」
同僚の言葉にあなたは応じた
「それもへたなダンスをねえ」
窓越しに聞きつけた女生徒の「へたじゃありません!」との毅然とした口調に
駆け出したあなたはガラス窓を急いであけて
「ゴメンネェー ゴメンネェー ほんとにゴメンネェー!
上手よ ゴメンネ ゴメンネ 上手よ」
あとの祭りの掛け声が
この上なく 詩情豊かにこだました放課後
あなたの机の上のコーヒーは
なかば冷めてはいたが
今なお
芳しい香りを漂わせている
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