郷愁
三年前の夏 猛暑日の続く一日
昔を懐かしむ気持ちが不意に沸き上がり
小学校一年の担任の先生宅をアポなしで訪れた
年賀状では、「一度お会いしたく思っております」と、書いてばかり
「詩人さん」と優しく答えて下さる先生に半世紀振りにお会いして
半世紀前の童顔を直ちに思い出してもらった僕は
「お変わりありませんね」と九十三歳の先生に言ってしまい
さて、何歳の頃の先生と比べてなのかと
後の祭りの自問が残った
「小学校の周りの広い田んぼには美しい菜の花が
一面に咲いていた様子が今も忘れることができません」
歌人でもある先生の言葉に幼い日々は彩られ
八回目の年女の先生に読んでもらおうと
僕は草稿を手に取った