靴



「どうもあなたは靴を選ぶのが上手じゃない」
上手じゃない僕が一人選んできたのは
カンガルー皮革のイタリア製で
何十%OFFであったか九千円と少し
「どうだい いい靴だろう」と履いてみたら
くるぶしが赤く腫れ上がって皮が剥けた
「やっぱりあなたは靴選びが下手なのね」
女房はあきれ顔で付け加えた
「イタリア人じゃあるまいし」

履き慣れたら済むことだ
雨上がりの住吉さんを 夜の大阪城公園を
一緒に歩いてくれる人がいた
「私は万歩計がわりなの?」
噴水前のベンチに腰を下ろし
また一つ
思い出が増えた

「どこをほっつき歩いて来たの?
 新品の靴をこんなに汚して
もう足は痛まないの?」
「いやまだ少しは・・・」
それよりも心がヒリリ
気弱な日本人は言葉を濁した



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