異邦人
「一言あってもいいんじゃない」
外回りの仕事で何か行き違いがあったのだろう
真夏の太陽が照りつける下
ズボンのベルトをきゅきゅっと締め付け
ネクタイの曲がりを正すつもりが
さらに歪めて
「一言あってもいいんじゃない」と
二十五、六の若い男が
僕とすれ違いざま
吐き捨てた
僕とて職場でこれまでに
何度経験したことか
「一言あってもいいんじゃない」
何の面識もない男に走り寄り
二言三言事情を尋ね、
「太陽のせい」で人を殺した男もあるんだぞ、と
話してみたくなったのだ
独房の窓から星空を眺めるムルソーの首筋は
赤銅色だったに違いない