富士額
「お前は富士額やな」
お祖母さんに言われた生え際の裾野は枯れて
おデコの傷が姿を現した
乳母車に乗った僕の頭にはグルグル包帯が巻かれている
乳母車の前でお祖父さんは顔をしかめている
よちよち歩きの僕は石橋から川に落ち右のデコを数針縫った
六十数年隠れていた傷がアルバムとともに蘇る
寝たきりになったお祖母さんが牛乳をこぼし
どのページの写真にも白い跡の残っているアルバムだ
今は暗渠となった小川に僕は逆さまに落ちた
慌てたお祖父さんはすぐに飛び込み僕を救い上げた
ずぶ濡れの二人にお祖母さんは何と言葉をかけたのだろう
もうすぐ僕は祖父になる
そして妻は祖母になる