富嶽借景






青春の尻尾を追い回しているうちに
五十五になった。
『断腸亭日常』の序に
「五十有五歳荷風老人書」とある。

霧あくまで深い三ツ峠
見えぬ富士に向かい
ゆっくり煙草を吸いながら、
放屁なされた井伏氏にならい
僕も又
転失気を放ち、
転機とする。



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