ヒトモトススキ

 

 

 

幽霊の正体は枯れ尾花なのだから

人は元々ススキであっても構わない

あるいは

人をもっと好きになれということか

と言葉遊びを楽しみながら検索すると「一本薄」

一株からたくさんの葉が出るカヤツリグサ科の植物で別名シシキリガヤ

葉の縁が鋸状で猪さえも切ってしまうという命名に驚いた

 

生駒の麓、日新高校の裏にバイクを置いて登り始めた日下坂

押し照るや難波の海は太古の昔

この辺りにまで迫っていたことを証明する植物が

塩性湿地に生えるヒトモトススキだと知った

 

ほんの数年前まで

僕の妻は子供会やPTAの役員を次々と引き受け

シャキシャキと活動し機転も利いた

今は、反応の遅いコピー機のように

ゆっくりゆっくり言葉を探す

もともとのんびりした性格であった

と思えばいいのだが

たくさん機能が詰まっているほど反応が遅くなる

と思えばいいのだが

切れ味鋭い怒りの言葉を

近頃

とんと聞いたことがない

 

「恋しきは何事につけても還らぬ昔」

久し振りに『墨東奇譚』の一節を思い浮かべ

茅渟の海に落日を拾いに行く手筈を整えた

 

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