秘密



足をケガした君を病室に見舞ったことは
どうか秘密にしておくれ
少なくとも卒業するまでは
できたら秘密にしておくれ
でないとこの先、ケガ人や病人が出る度に
僕はクレゾールの匂いを嗅がねばならぬ

足をケガした君を病室に見舞うのは
サイコロキャラメルや氷砂糖
疲れた喉に潤いを与えてくれた君への御礼
でもあるのだが
それにも増して何よりも
四月初めの爽やかな挨拶が
転勤したばかりの僕の心にどれほど深く響いたことか

にこやかな微笑みが
君のいる教室へと向かう
僕の足取りを軽くした
いやこのことも
できたら秘密にしておくれ
やっぱり秘密にしておくれ




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