同輩
その人は黒いコートを着て
緑の座席に浅く腰掛けていた
眼鏡の枠の色と度の強さは
僕とほぼ同じだった
ボサボサの髪の毛の薄くなり具合や
ホウレイ線の刻まれた口元
下あごのゆるい曲線も
同い年なら昭和二十八年生まれ
花のニッパチと呼ばれた我々も
年が明ければ還暦だ
もう少し寒くなるまでは
コートを羽織らないことにしている僕ではあるが
もっこり厚手のセーターを着込んでいる