伝説

 

 

 

五教科の試験が終わり、3時を少し過ぎた頃

一つの教室からさんざめく声が沸きあがった

「この教室で受験した者はみんな合格だ」

試験監督の大きな声が帰り支度の受験生を大いに喜ばせた

 

たとえ不首尾に終わろうとも

試練とやらに耐えてきた十五才の群れに

この言葉は極めて心地好く響いたのだ

 

いや待ち給え

マニュアル通りに淡々と進める必要のある入試の最後で

不要な言葉を吐く教師がいるだろうか

 

いや確かにいた、昔はいた

牧歌的な学校にはいたはずだ

 

今や牧歌的との言葉は伝説となって

校舎の隅に潜んでいる


 

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