奪衣婆
高田馬場にBIGBOXが出来た頃
鉄腕アトムの壁画が描かれるずっと前
諏訪町に下宿していた僕は戸塚第二小学校前の掲示板
硝子戸の中の「しょうづかの婆さん」の写真を時々覗き見た
武蔵関のアパートに移ってからも登校途中で覗き見た
学生時代に一度だけ熱を出して寝込んだ時に
アパートの薄いドアーの向こうにリンゴを二つ手に持った女性が
幻のように現れて嫁御前になるのだが以来四十年
悲喜こもごもの四十年
多分、僕が先にこの世におさらばして三途の川を渡ることになる
待ち合わせ場所は「しょうづか婆さん」の待ち構える岸辺だ
やれ六文銭がどうのこうの、婆さんがうるさかろうが
婆扱いは手慣れたものだ
待っているからすぐに来い