タンチョウサンクチュアリ通信「ぴっけるぴっけ」 2008年 新年号

発行:(財)日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ 
(編集:レンジャー 音成邦仁/渡邉美沙/伊東大輔/大熊千晶)

今年もよろしくお願いします
 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリは、無事に21年目を迎えました。皆さんはいかがお過ごしでしょうか? こちらでは年末に雪が降り、雪原に舞うタンチョウの姿が見られるようになりました。開設20周年事業も概ね終了し、今後の方針に沿った具体的な活動をはじめています。今年もよろしくお願いします。(O)

12月の生息状況調査の結果

昭和27年(1952年)にはじまった北海道によるタンチョウ生息状況一斉調査も今年度で56年目になります。例年通り、12月5日に、第1回目調査が行われました。主に北海道東部の、タンチョウの生息地周辺計320ヶ所で、一斉にタンチョウの生息数をカウントする調査です。その集計結果が12月25日に発表されました。昨年、一昨年の第2回目調査(1月に実施)で確認された、1,013羽、1,081羽には届かなかったものの、12月の調査としては過去最多の948羽を記録しました。

調査日のサンクチュアリ給餌場に集まったタンチョウの数は、108羽と決して多くはありませんでしたが、周辺各地で例年以上に多く確認されたということでしょう。確かに調査日前の状況でも、湿原や周辺の牧草地、農家周辺に居残る個体が多かったように感じています。地域別では、釧路管内で806羽と、全体の約85%が確認されました。また、昨年生まれの幼鳥は92羽と、例年並の範囲内でしたので、春先の悪天候にもめげず、繁殖状況もまずまずだったのではないでしょうか。

1月25日には、今年度の第2回目調査が予定されています。過去最多だった2005年度の1,081羽を上回るかどうか、楽しみです。(O)



給餌場における採餌量調査開始

 タンチョウはこれまで、主に地域の方々による給餌活動によって冬季のエサ不足が解消され、生息数も回復してきました。しかし一方で、人為的なエサに頼る個体が大勢を占め、さらに人に馴れていく傾向も見られます。また、昨年からタンチョウのエサとなるデントコーン(飼料用トウモロコシ)の価格が高騰し、国の事業として給餌を継続していく上で影響が出る可能性もあります。生息数が1,000羽を超えたこともあり、私たちは新たに冬季の自然採食地の保全を目指す取り組みをはじめることとしました。

これまでの給餌は、季節やタンチョウの集まり具合など、長年の経験に基づき、量を調節してきました。しかし科学的な根拠はなく、タンチョウにとって、どのくらいのエサが必要なのかを示すデータがありませんでした。そこで、今年度はまず、冬季にタンチョウがどのくらいのエサを必要としているのかを調べることにしました。

方法は、給餌場にやってくる足環をつけたタンチョウを一日中観察し、一日に何粒のトウモロコシを食べているのかを調べます。早速、1月5日、6日に、ボランティアの方々、環境省や北海道の職員のご協力をいただき、3個体の採餌量を調べました。結果は、下表の通りです。ちなみに、12月19日に試験的にT25の採餌量を調べたときの結果は、1,040粒(滞在時間3時間24分)でした。

この調査でいちばん大変なのは、なんといっても、酷寒の中、集中して1羽のタンチョウを追い続けなくてはいけないことです。ちょっと油断していると、その個体を見失ってしまいます。また、他のタンチョウが視界をさえぎったり、からだの向きによっては何をくわえたのかよく見えなかったりします。せっかくトウモロコシをつまみあげたのに、落としてしまうこともあります。調査中は、「こっち向いて!」「あっ! トウモロコシを落とした」「雪を食べているね」「寒い! いつまでも食べていないで、そろそろねぐらに帰りなさい!」などの声。

今冬は、あと3回この調査を実施する予定です。ご協力いただいた方々のご苦労に報いるためにも、しっかりとデータを解析して、年次報告書で報告したいと思います。(O)

採餌量調査のようす

サンクチュアリにおける個体ごとの採餌量と滞在時間
個体 1月5日 1月6日
T25
1991年生まれのオス、明治乳業野鳥保護区牧の内で繁殖
867 722
3時間48分 3時間1分
035
2006年 持田野鳥保護区東梅生まれのメス、亜成鳥※
584 421
5時間13分 2時間33分
K08
2004年 釧路市動物園生まれのオス、2005年4月に放鳥
741 603
3時間47分 3時間8分

上段:食べたトウモロコシの粒数 下段:滞在時間
※亜成鳥 繁殖年齢に達していない若い個体。タンチョウは成鳥になるまでに3〜4年かかる


スラリー転落事故防止のために

2004年ごろから増加しているタンチョウのスラリー転落事故。スラリーとは、酪農の大規模化、効率化に伴い、近年各地で増加している設備です。家畜糞尿を液状のまま貯蔵しておくタンクで、大きいものだと直径25mもあり、ほとんどのタイプは上面が覆われていません。その場所が餌場に見えるのか、タンチョウが転落するという事故が発生しています。2004年以降、わかっているだけで6件の事故が発生しており、そのうち2羽は死亡が確認されています。この設備は、糞尿を貯蔵後、自動的に攪拌し堆肥化するものです。そのため、春秋の堆肥散布時期以外は、当該農家が近づくことは少なく、人知れずタンチョウが転落している可能性もあります。いずれにしても、この問題はまだまだわからない点が多く、放置しておくとさらに大きな問題になりかねないものと関係者は心配を募らせています。 

この問題については、保護関係者以外で知る人はまだまだ少なく、まずは多くの方々、特に酪農関係者にこの事実を知ってもらうことからはじめなければなりません。そこで、釧路管内浜中町のJA浜中のご協力を得て、浜中町の酪農家(全210戸)に事実を知ってもらうためのチラシと、各農家敷地内へのタンチョウの飛来状況、スラリーをはじめとする敷地内の設備を調べるためのアンケートを配布しました。浜中町は、現在、国営事業によるスラリーの設置が進んでいる地域で、特にスラリーが増加している地域のひとつです。4月以降には、スラリーへの転落事故や、タンチョウの増加に伴う生息環境の不足などの問題を知ってもらうための場も設定してもらう予定です。(O)

酪農家に配布したチラシ


旅行会社への普及啓発

昨年度、鶴居村のもうひとつの大給餌場「鶴見台」で、タンチョウの電線衝突事故の発生状況と、観光客の来訪状況の調査を実施しました。延べ234名のご協力を得て、鶴見台における今後の対策を検討する上で、貴重なデータを収集することができました。

調査では、タンチョウが、特に駐車場や人の動線上にある電線を越える際に、他の場所に比べて多くの危険回避行動をとっていることがわかりました。これは、人や車の動きがタンチョウに悪影響を与えている可能性を示しています。また、観察場では、大声を出したり、ものを投げたり、給餌場や私有地に侵入したりと、「タンチョウの生息地」という認識が、欠如・不足していると思われる行動が多く見られました。

そこで、このデータをもとに、まずは、多くの観光客を連れてくる旅行会社に対して、鶴見台をはじめ、野生鳥獣の生息地における観光のあり方を考えてもらおうと、普及啓発チラシを作成し、発送しました。チラシは、調査結果を示すとともに、同行の添乗員によるお客様への注意事項の徹底などをお願いする内容にしました。これを機会に、タンチョウに限らず、野生鳥獣生息地での観光のあり方を多くの方々に考えてもらいたいと思っています。(O)


作成したチラシ(抜粋)

フォトコンテスト実施決定!

2001年度から実施している「コニカミノルタ・タンチョウチャリティフォトコンテスト」が、今年度も実施されることになりました。これまでは、優秀賞5点でオリジナルポストカードを製作していましたが、来年度はオリジナル切手シートを製作します。切手のデザインに使う8点のタンチョウの写真を募集します。また、「コニカミノルタ・タンチョウチャリティフォトコンテスト入賞作品展」につきましても、切手デザインに使われた8点に、入賞7点を加えた15作品により開催することが決まりました。実施にあたっては、引き続き、コニカミノルタホールディングス鰍フご協賛をいただけることになりました。フォトコンテストの実施期間が短いですが、多くの方々にご応募いただきたいと思っています(詳しくは同封の募集要項をご参照ください)。また、来夏完成予定のオリジナル切手シートは、ご希望の方に1シート2,000円で頒布します。皆さま、ご期待ください!(O

第13回タンチョウイラスト展
霧多布小4年生 村田航弥くん


開設20周年記念グッズ 残りわずか!

開設20周年を記念して製作した「開設20周年記念タンチョウ写真集」「開設20周年記念切手」が残りわずかとなりました。残部は、写真集が64冊、切手が200シート(いずれも110日現在)です。入手ご希望の方は、同封の郵便振替用紙をご利用の上、お早めにお申込ください。尚、コニカミノルタ・タンチョウチャリティポストカード、開設20周年記念誌(いずれも1,000円)、当会会誌「野鳥」の開設20周年特集号(700円)は、まだ残部があります。ご希望の方は、サンクチュアリまでお問合せください。(O

開設20周年記念タンチョウ写真集と同記念切手 切手の絵柄(抜粋して拡大)