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日本野鳥の会のこれからのタンチョウ保護活動
開設20周年事業は、おかげさまで無事に終了いたしました。しかしこの事業は、これからのタンチョウ保護活動を推進する上で、再スタートを切るための取り組みです。これで「終わり」ではなく、これから「始まる」のです。私たちはこれから、タンチョウ保護のため、湿原保全のために何を進めていくべきなのでしょうか?
タンチョウの個体数増加には、地域住民を中心とする冬季の給餌活動が大きく貢献しました。それは疑いようのない事実です。しかし、いくら冬季の給餌によって、厳冬期のエサ不足が解消されたとしても、繁殖できる環境がなければ数を増やすことはできません。現実には、繁殖に適した自然環境は減少しています。では、なぜ数が増えるのでしょうか? 実はタンチョウの生態的な順応によるところが大きいものと思います。これまでは、子育てのために広大な湿原をなわばりとして暮らしていたタンチョウが、小面積の湿原に巣を作り、ヒナをかえすと人里周辺で子育てをする、いわば「新世代タンチョウ」が増えているのです。タンチョウの個体数回復だけを考えれば、それでよいのかもしれませんが、もっと広い視野で見ると様々な問題が浮かび上がります。
湿原環境には、タンチョウだけでなく、多くの生きものが暮らしています。中には、タンチョウのように順応できず、いつの間にか姿を消してしまう生きものもいるかもしれません。また、人里に進出したタンチョウによる人との軋轢、タンチョウの事故の拡大など、地域住民にとってもタンチョウにとっても、手放しで喜べる状況ではありません。さらに、依然として給餌に大きく依存するタンチョウは、冬季になると一部の地域に集中する傾向が続いています。これらの問題は、元をただすと、彼らの良好な生息環境の不足に起因します。
タンチョウ保護活動は、環境省をはじめとする関係行政、タンチョウの研究者、給餌人、NGOなどが協力し、それぞれの得意分野を活かし、役割分担をして進められています。当会としては、個別では解決できない問題については、関係行政やタンチョウの研究者と協力して対応してきました。また、普及啓発や土地の確保など、得意分野については、積極的に展開してきました。今後も、越冬地の分散など、タンチョウに関わる団体や個人が連携して進める事業については、積極的に協力していき、タンチョウ生息地の確保や普及啓発活動については、関係者からのアドバイスや情報をいただきながら進めていきたいと考えています。
次なる目標
タンチョウ保護を進めていく上で、次なる目標値を定めておくことは重要なことです。目標値の設定は非常に難しいところですが、当会では「個体数1,000羽」から「繁殖個体数1,000羽(500つがい)」を当面の目標としてはどうかと考えています。ただし、これまでのように給餌による冬季のエサ不足解消と、タンチョウの生態的順応に頼っていては何も前には進みません。キーワードは、「生息環境の保全」と「地域とタンチョウとの共存に向けた対策」のふたつだと思います。
繁殖環境の保全
繁殖環境は現時点で不足しています。しかし、まだまだ減少していく可能性があります。現在の繁殖地のうち、半数近くは何の法規制もない場所だからです。まずは繁殖状況を把握し、保全すべき優先順位をつけ、その場所に応じた環境保全を推進していくことが必要です。当会では、これまで同様、中小規模の湿原の保全活動や、大規模な湿原の保全に対する働きかけや協力を推進します。

越冬環境の保全
越冬環境の集中化は、以前から指摘されている問題点です。これまで個体数の回復を優先課題としてきたため、抜本的な対策はなかなかとれずにいましたが、数年前から越冬地分散に向けた調査やねぐら利用状況の調査・環境保全などを進めています。今後もこれらの活動を進めることが必要です。
一方、タンチョウの個体数を維持・回復させる上では、引き続き、給餌活動は必要不可欠です。しかし、今年に入ってデントコーンの価格高騰など、継続していく上での懸案材料も見受けられるようになりました。今後の給餌活動のあり方が十分に議論されないまま、このような外部条件によって給餌活動が左右されてしまうとすれば、非常に憂慮すべき事態といえます。
当会では、これまで同様、ねぐら利用状況の把握に努めるとともに、越冬期にタンチョウが必要としている給餌量の把握、さらには厳冬期でも凍らない河川や湧水地などの自然採食地の環境や利用状況の把握にも努め、越冬期の採餌環境・ねぐら環境の保全を推進します。

普及啓発活動
当会は、タンチョウの生息する地域に拠点をもつ団体として、地域における普及啓発活動を実施するとともに、全国規模の日本最大の自然保護NGOとして、写真展などの全国展開活動を実施してきました。今後も当会では、普及啓発活動に力を入れていきます。
タンチョウの個体数1,000羽への回復は、局地的な生息数の増加、それに伴うタンチョウの集中する地域での諸問題の発生にもつながっている現状があります。その結果、タンチョウの生息地域では、住民のタンチョウ保護活動への無関心や失速が懸念されます。しかし、これらの諸問題の背景には、湿原の減少、人間生活の変化、タンチョウの生態の変化など、様々な要因が複合的に絡んでいます。問題解決のためには、その原因を様々な角度から改善していく考え方を持たなければなりません。
地域住民への普及啓発活動では、人とタンチョウの共存を様々な角度から検討することが大切です。長い目で見ると、特に子どもたちを主対象とした環境教育が不可欠です。主に、タンチョウ・ティーチャーズガイドを利用し、子どもたちに対して直接、または学校教員や自然ガイドと連携し、タンチョウに関する普及啓発活動を推進します。
その他、観光客・カメラマンに対しては、タンチョウの生態的な魅力、これまでの保護活動の成果、人によるタンチョウへの悪影響などを普及啓発していくことが重要です。主に、来訪期間中の解説やイベント、フォトコンテストや写真展などの展示を通じて、タンチョウへの興味関心層を広げ、マナーの向上やタンチョウ保護の世論の高まりを目指します。また、野鳥保護区の見学ツアーやワークキャンプを実施し、野鳥保護区の意義やさらなる推進の必要性などを普及啓発していきます。

タンチョウ・ティーチャーズガイド改訂版
タンチョウを切り口とした学習プログラムを19本収録 |

くちばしにフィルムのフタが刺さってしまったタンチョウ
ひとりひとりの心がけで防ぐことのできる問題
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新たな問題への対処
当会の強みは、タンチョウの生息地に住み、タンチョウのことを常に考え、タンチョウの保護に従事できるレンジャーを配置していることです。レンジャーには、諸問題の最先端の情報を収集し、対処できるものは早急に対処し、できないものは情報を整理し、関係者へ報告していくことが求められています。特に、近年増加傾向にあるタンチョウの家畜糞尿の貯蔵タンクへの転落事故、貴重な生息域周辺の開発問題など、迅速な対応をしていきます。

終わりに
ここまで示したタンチョウ保護に関わる当会の活動は、多くの方々のご理解、ご支援がなければ進めることはできません。タンチョウや湿原をはじめ、多くの生きものやその生息環境を守るため、皆さまの力をお貸しください。
当会では、タンチョウ保護の拠点施設「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」の維持賛助会「タンチョウふぁんクラブ」を1998年度に立ち上げ、2007年度までの10年間ご支援をいただき、活動を続けてまいりました。この10年間で、タンチョウの個体数回復をはじめ多くの成果が得られました。しかし、新たな問題は山積みの状況であり、今後も引き続きタンチョウ保護活動の推進が必要です。つきましては、2007年度以降も、施設維持賛助会「タンチョウふぁんクラブ」を継続させていただくことになりました。今後ともご支援のほど、よろしくお願いいたします。(O)
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タンチョウふぁんクラブ会員募集中
私たちの活動を支える年会費1万円の賛助会です。ぜひ、この機会にご入会ください。詳しくは、同封のご案内チラシをご参照ください(ご継続中の会員の皆さまには同封しておりません)。ご入会いただいた皆さまには「開設20周年記念誌」を差し上げています。 |
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