タンチョウサンクチュアリ通信「ぴっけるぴっけ」 2007年 夏号

発行:(財)日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ 
(編集:レンジャー 音成邦仁/渡邉美沙/伊東大輔/大熊千晶)

 北海道東部は、春から初夏にかけて寒い日が目立ちました。それでも、各所で順調に育つヒナの姿が見られます。彼らが給餌場に飛来するようになるのが今から楽しみです。(O)
保護区ツアーの実施

 重要な野鳥の生息地の買い取りを進めていると、数日間事務仕事が続くことがあります。もんもんとして集中できないときは、巡回監視を兼ねて、野鳥保護区に行くに限ります。特に渡邊野鳥保護区フレシマは、タンチョウの生息地としてのみならず、北海道の海岸線の景観が保全されています。海、湖沼、湿原、草原、森林が調和し、素晴らしい眺めです。この風景を見ていると、あっという間に時間が経ってしまいます。

 さて、前置きが長くなりましたが、野鳥保護区は基本的に立ち入り禁止です。タンチョウの繁殖地であるため、彼らを静かにしておいてやらなければならないからです。また、馬が放牧してあったり、事故の心配もあります。しかし、レンジャーは仕事とは言え、特権のようにその景色を堪能できます。今回、野鳥保護区ツアーや支部のツアーの受け入れを開始したのは、レンジャーだけでなく、この景色や野鳥や花をより多くの方にお見せしたかったことが一つ。そして、野鳥保護区をご覧いただきながら、野鳥保護区の重要性や野鳥保護区事業の必要性をご理解いただきたかったことがもう一つの理由です。

 この夏は、2つのツアーをご案内しました。まず最初は、日本野鳥の会奥多摩支部の皆さんです。6月22日から3日間、23名の皆さんが野鳥保護区を見学するために道東を訪れてくれました。コースは、厚岸町の別寒辺牛湿原→根室市内の保護区→鶴居村の保護区と、主要な保護区は全て見て回るという大胆なツアーでした。1日目のメインは、JR厚岸駅からJR糸魚沢駅まで、一区間のみの列車の旅。この区間は鉄道好きだけでなく、自然愛好家なら大喜びする景色が広がります。湿原の中を走り、アオサギが列車に驚き群れ飛ぶ姿、カワアイサの親子が泳ぎ、時にはタンチョウが間近で餌を探す。あっという間ではありますが、実に凝縮された時間を堪能することができます。そして、JR糸魚沢駅に着くと、野鳥保護区の中を歩きながら、チヨチヨビィー、ギョギョシギョギョシ、チョリチョリチョリと鳥たちに出迎えられ、自然が作った芸術品であるクシロハナシノブやヒオウギアヤメの可憐な花たちを鑑賞しながらのんびりと歩きました。2日目のメインは、渡邊野鳥保護区フレシマでした。別当賀駅近くでバスを降り、そこから国有林の中を歩きながらフレシマに向かいます。鬱蒼とした林を抜けると、目の前には、広大な北海道を凝縮したかのような風景が広がります。この景色には、皆さん満足していただけたようです。

 2つ目のツアーは、6月29日から2泊3日の日本野鳥の会主催のエコツアー。参加者は6名。最初の保護区を回るツアーだったこと、そして、タンチョウや自然に与えるインパクトを最小限に抑えること、小回りが利き、どこでも入っていけることを理由にこの人数に抑えました。残念ながら、2日目の午前中までは雨に降られましたが、その後はなんとか持ち直してくれました。1日目は、渡邊野鳥保護区フレシマの主要ポイントを巡りました。フレシマの湿原を一望できる丘はもちろん、昨年ボランティアワークキャンプで表土がはがれたところに植樹した実験地も見学し、保護区の管理の大変さと重要性をお伝えしました。2日目は、渡邊野鳥保護区ソウサンベツからスタート。広大な風蓮湖と彼方に見える保護区の緑を展望地からご覧いただき、その後は、記念の看板立て。看板の裏側には、参加者の皆さんにお名前を書いていただきました。3日目は、天気にも恵まれ、早朝のオプショナルツアーを実施。その後、釧路湿原の西側にある温根内の保護区に。釧路湿原に隣接していながら国立公園にもならず、ラムサールの登録湿地にもなっていなかったこの保護区をご覧いただき、法的な保護指定の問題点や行政との役割分担等についてもお話させていただきました。温根内の木道では、残念ながらシマアオジには会えませんでしたが、オオジュリンやコヨシキリたちが歓迎してくれました。湿原の小悪魔と呼ばれることもあるらしいタヌキモの花をラッキーにも観察できました。

 今年は、野鳥保護区ツアー元年とも言って良い年です。至らなかった点も多々あったと思いますが、事故もなく、なんとか満足していただけたことに、ただほっとするばかりです。もう少しゆっくりと歩く時間が欲しかった、長靴は荷物にもなるし、持ってない人もいるので、有料レンタルにしたらどうか、あの弁当はおいしかった等々、いろいろなアドバイスやアイデアも飛び出し、今後より良いツアーを展開できる手応えを感じられました。


 今回、学んだことは、「ツアーはみんなで作るもの!」です。私たちが案内するだけでなく、ツアーに参加された皆さんと一緒に楽しみ、感動し、思い出を残す、そして次のツアーはもっと良いものに、それが本当のエコツアーなのかも知れません。

(保護区グループ 富岡辰先


保護区ツアーの様子(設置した看板の前で記念撮影)

タンチョウから検出された水銀について
 1998年から2004年の間に、病死あるいは事故死して釧路市動物園に運び込まれたタンチョウの死体約100体から、一般鳥類の10〜300倍の濃度の水銀が検出されたことが明らかとなりました。水銀は通常、食べものを通して生き物の体内に取り込まれます。タンチョウから水銀が検出されたということは、道東地域で彼らがエサとして食べる生き物が、すでに水銀を取り込んでいる可能性をも示唆するものです。水銀は水俣病の原因ともなった物質ですから、その拡散が事実なら、私たち人間にとっても脅威かもしれません。
 
 しかし、いったいタンチョウは、どこで何から水銀を取り込んだのでしょうか? この一件の調査をされた研究者によると、残念ながら、現在のところその経緯は不明のようです。調査もまだ始まったばかりですが、今までに調べられた少数の結果によれば、魚や貝などのタンチョウのエサから高濃度の水銀は検出されておらず、給餌用デントコーンにも問題はないそうです。また、ヒナの血液や回収死体の調査によれば、特定の環境や年代での偏りは見られなかったようです。しかし、これらも十分な調査が行われたわけではなく、今後、調査の本格的な進展が望まれます。

 水銀は、生き物の体内には常に微量に含まれているそうです。しかし、その濃度が一定の値を超えると脳の神経細胞を侵し、運動機能や感覚機能に障害が発生します。この値は生物の種によって異なるため、もしかしたら、今回検出された濃度はタンチョウにとって影響がないのかもしれません。ただ、タンチョウが長期にわたってどこからか水銀を取り込み、体内に高濃度で蓄積していることは事実です。タンチョウが、周囲から取り込んだ水銀が人の健康へ悪影響を及ぼさないとは断言できません。

 
サンクチュアリでは、この事実に冷静に対処しながらも、ヒナのバンディング(足環装着のための捕獲調査/採血検査も実施)などを通じて、タンチョウが体内に水銀を蓄積している実態・経緯究明に協力し、また、人も含めた他の生物への影響調査についても注視していきます。(I)

13回タンチョウイラスト展
北中1年 水島悠太朗さん


7回コニカミノルタ・タンチョウチャリティポストカード

今年度もコニカミノルタホールディングス株式会社のご協賛を受け、「第7回コニカミノルタ・タンチョウチャリティポストカード」が完成しました。第6回目となる「コニカミノルタ・タンチョウチャリティフォトコンテスト」には、おかげさまで過去最多の355点のご応募がありました。その中から選ばれた優秀作品5点が、今回も素晴らしいポストカードとなって登場です。蒼穹を舞う姿から夕暮れに羽を休める姿まで、作者のとっておきの瞬間がたっぷりと詰め込まれています。

 さらに、今年度はサンクチュアリ開設20周年を記念し、「開設20周年記念タンチョウ写真集」も作成しました。今年度を含めた、6年間の入賞作品120点の中から厳選された39点が、一冊の写真集に収録されています。ポストカード、写真集とも1口1,000円のご寄付をいただいた方に進呈します。ご寄付をいただける際は、ポストカード(5枚1セット)、写真集のどちらを希望されるかを明記してください。タンチョウの保護活動をご支援いただくとともに、素敵なタンチョウの写真をお楽しみいただければと思います。(Oh)


第6回コニカミノルタタンチョウチャリティフォトコンテスト
入賞作品展および開設20周年記念タンチョウ写真集作品展

 
 ポストカード採用作品の他、15点の入賞作品を加えた「コニカミノルタ・タンチョウチャリティフォトコンテスト入賞作品展」を今年度も開催します。今年で第6回目となるこの作品展は、北海道のみならず全国様々な場所を巡回してまいりますので、皆様のお近くで開催しました折には、是非会場まで足をお運びください。
 今年度は、さらに「開設20周年記念タンチョウ写真集作品展」を開催します。同写真集に収録された39点の素晴らしい作品を一挙に展示します。両作品展を通じて、タンチョウの魅力と保護活動を多くの方々に知っていただければ幸いです。詳細は下表をご覧ください。(Oh)


 6回コニカミノルタ・タンチョウチャリティフォトコンテスト入賞作品展
会場一覧

日程

開催会場

所在地

8/1〜8/31

豊富ビジターセンター

北海道天塩郡豊富町

8/2〜8/31

根室市春国岱原生野鳥公園
ネイチャーセンター

北海道根室市

9/5〜9/25

野付半島ネイチャーセンター

北海道野付郡別海町

9/5〜9/29

霧多布湿原センター

北海道厚岸郡浜中町

 

開設20周年記念タンチョウ写真集作品展 会場一覧

日程

開催会場

所在地

8/17〜8/30

毎日新聞社 水と緑の地球環境本部

東京都千代田区

9/5〜9/29

阿寒湖畔エコミュージアムセンター

北海道釧路市
(旧阿寒町)


*両作品展とも2008年3月ごろまで開催します。
 10月以降の日程・会場は、決定次第ご案内します。
開設20周年事業のお知らせ

シンポジウムの開催

 地域の方々やこれまでご支援をいただいた皆様に、タンチョウ保護の必要性やこれからの活動を直接伝え、意見交換をする場が必要だと考えています。そこで、地元鶴居村と東京で、下記の通りシンポジウムを開催します。詳細は追ってご案内いたします。

日時

会場

所在地

東京
シンポジウム

10月28日(日)

東京海洋大学 品川キャンパス
楽水会館

東京都港区

鶴居
シンポジウム

11月11日(日)

総合センター 多目的ホール

北海道鶴居村

 この他、当会ではタンチョウを主人公としたアニメ「白いファンタジア」を制作しました。このアニメの上映会を下記の通り、札幌で行います。上映会については、当会会員室メディアグループ(TEL:03-5358-3510 FAX:03-5358-3608)までお問合せください。

日時

会場

所在地

「白いファンタジア」
上映会

9月30日(日)
開演18:30(20:30終了予定)

北海道立道民活動センター
(かでる2・7)

北海道札幌市

 開設20周年事業の詳細は、当施設ホームページに新たに開設した「開設20周年事業のご案内」をご覧ください(http://www.wbsj.org/sanctuary/tsurui/)。今後も通信紙やホームページ上で、事業のご案内をいたします。