タンチョウサンクチュアリ通信「ぴっけるぴっけ」 2007年 秋号

発行:(財)日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ 
(編集:レンジャー 音成邦仁/渡邉美沙/伊東大輔/大熊千晶)

 鶴居村はすっかり秋です。日に日に朝晩の冷え込みが厳しくなる中、10月1日よりネイチャーセンターを開館しました。間もなくタンチョウたちが本格的に給餌場を利用する時期がやってきます。例年のことながら、気持ちの引き締まる思いです。(O)(O)
保護区ツアーの実施

2007年7月13日、日本野鳥の会の野鳥保護区の面積が、2,000haを超えた。タンチョウを保護の対象とした野鳥保護区は、1987年に持田勝郎氏からのご寄付で購入した持田野鳥保護区東梅(とうばい)からスタートし、20年間で24ヶ所、2,167.6haとなった。

 さて、7月13日は何の日かというと、明治乳業野鳥保護区槍昔(やりむかし)231.8haと明治乳業野鳥保護区牧の内235.5haが誕生した日である。東京都内の重要文化財に指定されている某ホテルで調印式が執り行われた。明治乳業株式会社の浅野茂太郎社長と当会の柳生博会長が、両保護区の保全協定書にサインし、力強い握手が交わされた。2003年から交渉をスタートし、足掛け4年でなんとかゴールインした瞬間であった。 


調印式。
明治乳業の浅野社長(右)と当会柳生会長(左)

 経緯について少しお話しするが、最初に明治乳業株式会社(以下、明治乳業)の社有地を目にしたのは、2002年に渡邊野鳥保護区ソウサンベツが設置されたとき。念のために、周辺部の土地所有状況を調べていると、お隣が明治乳業の社有地だった。タンチョウ1つがいの繁殖地でもある。また、いろいろ情報収集をしていくと、根室市街地の東側にもタンチョウ2つがいが繁殖する地域があった。
 
 
 
 相手は、年間売上高4,800億円の業界最大手の企業である。「土地を売ってください」と言っても、こちらにとっては大金でも、先方にとっては微々たる金額。「ここは、保全協定の締結で押そう」ということになり、鼻息も荒く、東京都江東区の本社へ乗り込んだ。しかし、残念ながら、その場で断られてしまった。その後、明治乳業の根室工場と本社生活環境室と、地道に話し合いを重ね、双方にとってとてもよい形で保全協定を結ぶことができた。
 
 これまで、野鳥保護区は、多額のご寄付を元にタンチョウの生息地を買い取る形が中心であり、協定については、石澤野鳥保護区尾幌川(おぼろがわ)や永野野鳥保護区飛雁川(とびかりがわ)
等、小面積を所有している個人との間で取り交わしていた。今回のように大企業と協定により、まとまった面積の保護区を設置するのは初めてのことである。この協定が生かされるかどうかは、これからの活動次第であるが、タンチョウの行動調査やモニタリング調査、明治乳業の社員やその家族を対象にした自然観察会やボランティア活動、地元根室市民向けの観察会など、現時点でもいろいろなアイデアが出ており、本社生活環境室、明治乳業根室工場の皆様と力を合わせながら、前進していきたいと思っている。

最後にひとつだけお伝えしておきたいことは、この保護区ができるまでには、交通費や通信費、登記簿や地図の費用、保護区事業を進める職員の人件費等、かなりの経費がかかるということ。ご寄付を元にしたタンチョウの生息地の買い取りは、土地の金額が目立つが、多くの経費がかかっている。また、購入した場合はその後の管理にも経費がかかる。今回、この協定を進めるにあたり、心強かったのが大坂知子氏と藤田氏からの寄付であった。タンチョウの保護や保護区の設置に関わる事業に使ってくださいといただいたご寄付は大坂基金、藤田基金として積み立てられていた。今回は、この基金を取り崩して、使わせていただいた。紙面をお借りし、そして、タンチョウになりかわり心より感謝を申し上げたい。


図:明治乳業野鳥保護区の所在地

■明治乳業野鳥保護区槍昔
 ラムサール条約登録地の風蓮湖に面した湿原と山林からなり、面積は231.8ha。渡邊野鳥保護区ソウサンベツの隣接地。タンチョウ1つがいが繁殖している。オジロワシやヒグマも生息している自然が豊かな場所である。



■明治乳業野鳥保護区牧の内
 根室半島のほぼ中央部、根室市街の東側に隣接し、草原と湿原、山林からなり、面積は235.5ha。タンチョウ2つがいが生息している。根室市民の水がめである「オンネ沼」「タンネ沼」、そして太平洋を一望できる。
 明治乳業に初めて訪問したときのことである。玄関を入ると、受付の女性と入口フロアのお客様の視線が全部私たちの方へ。そして、警備員が駆け寄ってきた…。こちらはきょとんとしていたが、今思うとなんとなく納得できる。というのも、このときの訪れた3人は、髭もじゃの葉山室長と、牛乳瓶の底のようなメガネをかけ、でっかいザックを背負った原田チーフレンジャー、そして、髪の毛をちょんまげにした私。きっと、これまで、こんな格好をした、こんな組み合わせの者が、本社ビルに入ったことはなかったのかも。初めての出会いの時には、こんなエピソードがあるのかもしれない…
                                      
                                       (道東事業統括 富岡辰先)


タンチョウ・ティーチャーズガイド改訂版の完成
 
 その地域で当たり前に見られるものに対し、地域住民はなかなかその価値やすばらしさに気づかないものです。鶴居村では、「タンチョウ」はまさに「当たり前」のもの。本州からレンジャーとしてやってきた私たちは、特に子どもたちにタンチョウの魅力を伝えたいと強く思うようになりました。

 そんな背景から、2004年に製作したのがタンチョウ・ティーチャーズガイド(以降、TTG)です。タンチョウを切り口としたゲームやグループワークなど、楽しみながら学べる学習プログラム集で、学校の先生や観察会リーダーなど、指導者の方々に使ってもらうことを想定しました。指導者向け講習会を実施し、受講者のみなさんには学校や観察会、大型イベントなどでTTGのプログラムを利用してもらっています。

一方で、改善点も指摘され、昨年度から新規プログラムの開発、編集の見直しを進めていました。そして2007年夏、ようやくTTG改訂版が完成しました。プログラム本数を従来の11本から19本に増やし、短時間で取り組めるもの、大人数で実施できるものなど、内容の幅も広げました。今年度からはこの改訂版を使って、地域の子どもたちに、今まで以上にタンチョウに関心をもってもらえるよう取り組んでいきます。

 
なお、改訂版は、タンチョウ保護活動の推進のために設けられた藤田基金のご支援によって製作しました。この場をお借りして、心より御礼申し上げます。(O)


子どもワークキャンプ「タンチョウレンジャーにチャレンジ」

8月3〜5日に、首都圏の子どもたちを主対象にしたワークキャンプ「タンチョウレンジャーにチャレンジ!」を実施しました。このプログラムは、タンチョウなど多くの生きものが生息する釧路湿原の自然を体感し、その保全活動を体験することを通して、子どもたちに、湿原のすばらしさと保全活動の大切さに気づいてもらおうというものです。このキャンプには、関東や関西など各地から、元気いっぱいな小中学生25名が参加しました。

 プログラムの内容は、湿原へ突き出した高台「キラコタン岬」へのハイキング、湿原に隣接する丘陵地での、裸地化した斜面から湿原への土砂流入を防ぐ粗朶の設置と植樹体験、これらの活動を人に伝える新聞づくりなど盛りだくさんな内容でしたが、みんな元気いっぱい、楽しそうに活動に参加してくれました。

 私もそうでしたが、子ども時代に得た豊かな自然とのふれあいは、その後の自然に対する考え方や行動に少なからぬ影響を与えるはずです。今回のキャンプに参加した子どもたちが、将来、タンチョウや釧路湿原に限らず、自然とのよりよい関係を意識しながら暮らせる大人になってくれることを願います。(I)


設置した粗朶の間に木の苗を植える

タンチョウアニメ「白いファンタジア」試写会&上映会

 
 当会で制作した、タンチョウを主役としたアニメ「白いファンタジア」の試写会を7月28日に東京で、上映会を9月30日に札幌で行いました。両会場合わせて、約800名の方々にご来場いただき、少女とタンチョウとのふれあいを描いた本作品を大スクリーンでご覧いただいた他、声優として老人役で出演した柳生博会長、監督の宇井孝司氏、音楽担当の渡辺俊幸氏、キャラクターデザインを手掛けた村上康成氏による制作秘話、地元の子どもたちによる合唱などをお楽しみいただきました。このアニメのDVD(本編30分)は、実費分(2,000円)+送料のご負担で頒布します。(W)


開設20周年記念切手&記念誌ついに完成!


 ついに、「開設20周年記念切手」と「開設20周年記念誌」が完成しました!
 「開設20周年記念切手」は、当会オリジナルデザインの切手シート(1シート:80円切手×10枚)です。飛翔、鳴き合いなどのタンチョウの姿はもちろん、当会の活動にちなむ写真やイラストをデザインしました。今年1月のタンチョウ生息数調査で確認された1,013羽にちなみ、1,013シート限定で作成しました。1口2千円のご寄付をいただいた方に、この記念切手1シートと、それぞれの切手の「エピソード」をセットにしてプレゼントします。ぜひ、ご支援ください。詳しくは同封の案内をご覧ください。

一方、タンチョウ保護のこれまでの整理と位置づけて製作を進めていた「開設20周年記念誌」もこのほど完成しました。当会の活動とその成果のまとめに加え、半世紀以上に及ぶタンチョウ保護活動の足跡を、タンチョウに関わる多くの方々のご協力を得て、まとめました。実費分(1,000円)+送料のご負担で頒布します。(W)

※アニメDVD、記念誌の頒布につきましては、実費分と送料をご送金いただければ、こちらからお送りいたします。詳しくはお気軽に問合せください。


タンチョウ写真展

「第6回コニカミノルタ・タンチョウチャリティフォトコンテスト入賞作品展」(協賛:コニカミノルタホールディングス株式会社)を開催しています。年内は北海道で巡回展を開催しますが、1月以降は東京、大阪、九州地方での開催を計画中です。ご期待ください。

なお、千円のご寄付をいただいた方に、優秀賞5点で作成したポストカード、または過去6年間の入賞作品から厳選した39点による写真集のいずれかを差し上げています。専用の振替用紙も用意していますので、ご希望の方はお気軽に問合せください。(Oh)

6回コニカミノルタ・タンチョウチャリティフォトコンテスト入賞作品展
会場一覧

日程

開催会場

所在地

10/18〜11/3

十勝エコロジーパーク

北海道河東郡音更町

11/3〜11/30

帯広百年記念館

北海道帯広市

11/7〜11/17

大樹町生涯学習センター

北海道広尾郡大樹町

11/24〜12/24

とかち帯広空港

北海道帯広市

12/6〜1/6

たんちょう釧路空港

北海道釧路市