タンチョウサンクチュアリ通信「ぴっけるぴっけ」 2006年 秋号

発行:(財)日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ 
(編集:レンジャー 音成邦仁/渡邉美沙/伊東大輔)

10月よりネイチャーセンター開館
 短い夏が終わり、あっという間に秋を通り越して本格的な冬が間近となりました。早朝はマイナス5℃くらいまで下回る日もあります。例年通り、10月からネイチャーセンターを開館しました。鶴居村内には、200羽前後のタンチョウが集まっているようです。さらに寒さが厳しくなると、いよいよサンクチュアリなどの給餌場への依存が高まります。毎年のことではありますが、本格的な越冬シーズンを前に身も心も引き締まる思いです(O)。


オホーツク地方での普及啓発活動
 網走管内の網走市と小清水町にまたがる濤沸湖(とうふつこ)では、近年数つがいながらタンチョウの繁殖が安定して見られます。タンチョウの繁殖域は、釧路、根室地方に集中しているだけに、新たな繁殖域として期待されています。また、昨年10月にはラムサール条約登録湿地となり、国際的な評価も得られました。私たちは、今後のオホーツク地方の地域活動に関わることで、貴重な環境の保全やタンチョウ保護の推進を目指しています。

 10月8日には、網走市で全国のラムサール湿地周辺の子どもたち約50人を対象に、濤沸湖の自然や地域活動を知ってもらうイベントが行われ、レンジャーも協力しました。

 また10月15日には、オホーツク支部会員や学校関係者など17名を対象に、タンチョウ・ティーチャーズガイド講習会(当会で製作したタンチョウの教育プログラム集の使い方を説明する講習会)を実施しました。講義やタンチョウの一年の暮らしを正しく並べるゲームなどを体験してもらいました。童心に帰って体験する参加者の笑顔が印象的でした。講習会を通じて、地域の自然の豊かさを再認識し、タンチョウへの興味関心も深まったと思います。

 当会では、今後もオホーツク方面での活動協力に力を入れていきたいと考えています(O)。

タンチョウ版人生ゲーム「湿原で何がおこった?」体験実施の様子

サンクチュアリの8月から10月の主な活動
 8月から10月にかけて、サンクチュアリで実施した主な活動を報告します(W)。
第19期運営協議会の実施
  毎年、運営委員の方々と当施設の活動成果の報告および今後の活動について協議する運営協議会を実施しています。今年も第19期となる運営協議会を8月5日に実施しました。

 協議会では、運営委員に着任している環境省や釧路支庁、鶴居村、鶴居村タンチョウ愛護会などの方々に昨年度の活動の成果を報告した他、20周年に向けての次期10年活動計画の策定やタンチョウによる新たな農業被害の対策などの新規活動計画について説明を行いました。

 また、質疑応答では第18期運営協議会で問題として上がっていた越冬地のねぐらについての議論がされました。問題となっているのは、タンチョウを驚かすことなくねぐらを観察できる唯一の場所である音羽橋から大規模なねぐらが遠さがってきていることです。この問題は、環境省や道、鶴居村、観光関係者、保護関係者などが一堂に会して、対処の必要性や可否について話し合うことが必要であるとの意見でまとまりました。この他、当会の野鳥保護区の今後の管理や利用についての意見収集などを行い、協議会を終了しました。


タンチョウによる農業被害防止対策
 タンチョウが春先以降も村内の酪農地域に居残り、牛の飼料を目当てに牛舎へ侵入するため、飼料にタンチョウの糞が混入するという農業被害が新たな問題となっています。この問題への対策は昨年度から実施しており、今回は被害のある農家2件に対して実施しました。1件では牛舎の1部にネットを設置し、もう1件ではネットの設置が困難なことから、脅しの効果を狙ったテープを設置して対策しました。

ネットを設置した牛舎

容器の上面にロープを交差して設置

 また、今年度に入って立て続けに起こった「スラリー(牛の糞尿を溜めてある場所)への転落事故」を防止する対策も実施しました。事故原因はタンチョウが地面と誤って着地してしまうからではないかと考えられますが、スラリーの上に屋根やフタの設置をすることは機能上できないため、開放面に目立つ色のロープを張ることでタンチョウが着地しにくくなるような対策を行いました。今回の対策はどちらも対症的であるため、今後も適時に監視を行いながら対応していく予定です。


FAネットワークのボランティアワークキャンプ受け入れ
  年に2回、FAネットワーク(首都圏の大学生を中心とした自然保護団体)のボランティアワークキャンプ(特定の施設にある程度の期間ボランティアとして協力する活動)の受け入れを行っています。今年も8月28日〜9月3日に受け入れを実施しました。

 期間中、上記にあるタンチョウによる農業被害防止対策の実施とタンチョウ・ティーチャーズガイドを改訂するにあたっての意見収集に協力してもらいました。意見収集では、改訂時に収録予定の新作プログラムの体験および既存プログラムの実施や体験を通して、改善案も作成してもらいました。その他、老朽化した看板を取替えるために新しい看板を作製してもらいました。

 また、鶴居村役場の方々や農家の方々など多くの方の参加があった懇親会の場で、学生たちによる「自分たちの考えた農業被害防止対策」の発表も行いました。サンクチュアリ、学生、鶴居村のそれぞれにとって意義のあるキャンプであったと思います。

TTGプログラムを実施する学生の様子


タンチョウ保護増殖ワーキンググループ会議に出席
 環境省では、タンチョウの個体群の規模と分布の拡大を図り、自然状態で安定的に存続できる状態を目指し「タンチョウ保護増殖事業」を推進しています。この事業の具体的方針や内容を検討する作業部会が設置されており、レンジャーも委員として参加しています。

 9月30日に、今年度1回目の会議が行われました。主に環境省が作成した「タンチョウの給餌に係る実施方針」の内容に関して、議論をしました。タンチョウに対する給餌は、タンチョウの生息数回復に大きな寄与しました。しかし一方で、人馴れやタンチョウの事故増加につながっている面も指摘されています。これらの問題を解決するために、まずは給餌の目的や時期、手法などを整理する必要があります。当日の議論を踏まえて、最終的な実施方針が決定するものと思われます。

 一方、これまで献身的に給餌を行ってきた地域の方々に対する配慮は、非常に重要と考えています。小規模ながら給餌を長年にわたり続けてきた方もたくさんいらっしゃいます。仮に新たなやり方で給餌を行ってもらう場合は、実施方針を押しつけるのではなく、じっくり話し合って双方が納得の上、新たなやり方に移行していくことが必要だと思います。


タンチョウ・ティーチャーズガイド(以下、TTG)講習会の実施
 10月4日に別海町の小中学校理科サークル所属の教諭12名に対してTTG講習会を実施しました。講習会ではタンチョウについてのスライド解説を行った他、タンチョウのぬりえプログラムや湿原の出来事をゲーム形式で知ることのできるプログラムなどを体験してもらいました。また、鶴居村内に集まり始めたタンチョウの観察も行いました。別海町ではなかなか見る機会の少ないタンチョウをじっくり観察したことで、タンチョウの魅力を実感してもらえたようでした。

 TTGの目的は、指導的な立場の方に収録プログラムを活用してもらうことで、タンチョウについての普及啓発をより多くの方に行うことです。今回受講した先生方が、TTGを活用してタンチョウの魅力や現状を伝えてくれることを期待しています。
講習会でのタンチョウ観察の様子

コニカミノルタ・タンチョウチャリティフォトコンテスト入賞作品展
コニカミノルタ・タンチョウチャリティポストカード
 コニカミノルタホールディングス(株)のご協賛によって今年度も作成したコニカ・ミノルタタンチョウチャリティポストカードは、おかげ様をもちまして大変好評をいただいております。ご希望の方は、サンクチュアリまでお問い合わせください(I)。


地元スーパーでコニカミノルタ・タンチョウチャリティフォトコンテスト入賞作品展
 8月から開催している第5回コニカミノルタ・タンチョウチャリティフォトコンテスト入賞作品展ですが、こちらも各地の会場で好評をいただいております。9月の中旬から2週間は、地元にある大型スーパー2店でも作品展を開催しました。不特定多数の人々が集まる場所での開催によって、普段タンチョウを意識することの少ない人にも、その魅力や現状を知ってもらいたいと考えたからです。会場には、展示写真から答えを読み解くタンチョウクイズラリーを常設し、美しさ以外の身体の特徴や生活の様子からもタンチョウに関心をもってもらえるような工夫をしました。さらに、9月16日から18日の3日間はレンジャーも会場に常駐し、クイズの答え合わせや解説を行いました。この3日間で計632名の方にご来場いただきました。

 また、レンジャー不在時にもクイズの答え合わせができるよう設置した解答応募はがきにより、75名の方から応募がありました。地元スーパー2店での本作品展のこのような開催により、タンチョウとその保護活動の普及がより一層図られたものと考えます。

 本入賞作品展は、11月以降も各地を巡回して開催します。今後の開催会場および日程はこちらのページをご覧ください。是非、お近くの会場までお出かけください(I)。

会場でのクイズ答え合わせ