タンチョウサンクチュアリ通信 2005年 夏号

発行:(財)日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ
(編集:レンジャー 音成 邦仁、阿部秀幸、渡邉美沙)
 今年は寒い春となりました。5月にも雪が降り、タンチョウの繁殖への悪影響も懸念されましたが、5月下旬から、各地でヒナ誕生の情報が入ってきています。2005年度よりスタッフも変わり、これまで以上に実りあるタンチョウ保護活動に努めてまいります(O)。

タンチョウ生息数、遂に1,000羽を記録!

 毎年、12月と1月に北海道による「タンチョウ生息状況一斉調査」が行われています。タンチョウの生息数を調査し、その推移や状況を把握することによって、今後のタンチョウ保護活動のための基礎資料とすることを目的としています。

 調査の方法は、タンチョウが越冬のために飛来している場所で、同時刻に一斉にタンチョウの数を数えます。12月の調査では、前号でもお知らせしたとおり、12月の調査としては過去最多の860羽を確認しました。しかし、1月の調査では天候などの条件に恵まれず668羽を確認するにとどまりました。

 一方、独自にタンチョウの一斉調査を実施している「タンチョウ保護調査連合」は、1月21日から3日間調査を実施しました。その結果、1,003羽のタンチョウが確認されました。タンチョウの生息数調査として、1,000羽を記録したのははじめてのことです。

 ある種が当面の絶滅の危機から脱するには、最低でも1,000羽の生息が必要と言われています。今回の結果は、これまでのタンチョウ保護活動の大きな成果であり、また意味のある数字ととらえています。

 しかし一方で、タンチョウが生息するために必要な湿原環境の不足、越冬環境の集中化などの問題は未解決です。また、農薬中毒、事故の増加などの新たな問題も発生しており、まだまだ安心できる状況とは言えません。

 これからも引き続き、関係者が連携し、人とタンチョウが共存していける保護活動を発展させなければならないと思います (O)。

第11回タンチョウイラスト展より
別海町 別海中央小 大和田流夏さんの作品

10番目の野鳥保護区「渡邊野鳥保護区フレシマ」設置

 タンチョウの営巣環境保全を目的とした新たな野鳥保護区「渡邊野鳥保護区フレシマ」が2005年3月に誕生しました。これで10ヶ所目の野鳥保護区となります。野鳥保護区の総面積も1497.1haまでに広がりました。これらの野鳥保護区内で13つがいのタンチョウが繁殖をしています。

 この保護区は、根室市フレシマに位置する、太平洋に面した五本松川沿いの湿原と草原203.7haからなります。保護区内では、1つがいが繁殖しています。オスには足環41V(1998年生まれ)がつけられており、個体識別が可能です。

 設置には、当会会員でサンクチュアリの活動を支援する賛助会第T期「タンチョウ383人の会」および第U期「タンチョウふぁんクラブ」のメンバーとして、1993年よりタンチョウ保護のために資金面での協力をしていただいている渡邊士乃武様・玲子様からの3千3百万円のご寄付の一部を使わせていただきました。

 渡邊玲子様からは「野鳥の会に入会したときから、海岸の自然が気になっていました。そして大型の動物を守りたい、大型の動物がすむ環境を守れば、そこに関わる他の動植物も守ることができる、という想いを三度実現でき、さらに今回念願だった海岸の自然を守ることができました。これからも動物たちが人間と共存できるように、心から応援していきたいと思っています。」とのお言葉をいただきました。

 この保護区に隣接する沼では、シーズンになると釣り人が盛んに出入りします。釣り人の影響で、繁殖中のタンチョウの行動にも微妙な変化が生まれています。そこで5月中旬まで、根室市の春国岱原生野鳥公園のレンジャーが、早朝のパトロールを実施しました。釣り人には、本会の保護区であることを伝えた上で、タンチョウの繁殖への影響を理解してもらい、退去していただきました。

 この保護区は、他の保護区に比べると人が近づきやすい場所だけに、巡回監視を中心とする管理活動は重要です。今後もタンチョウにとって良好な環境が保たれるよう、春国岱のレンジャーとともに環境管理に努めます(O)。

第11回タンチョウイラスト展より
鶴居村 鶴居小 加藤大輝さんの作品
保護区での繁殖状況
 野鳥保護区での繁殖状況について、タンチョウ保護調査連合の航空調査とレンジャーによる巡回調査の結果を報告します(O)。

●早瀬野鳥保護区温根内(鶴居村 19.5ha)
 今年も1つがいの営巣が確認されました。5月10、19日に現地で調査を行いましたが、ヒナの姿は確認できませんでした。しかし、その後の航空調査でヒナ1羽が確認されました。これで、4年連続で繁殖に成功したことになります。

●渡邊野鳥保護区チャンベツ(標茶町 216.3ha)
 今年は保護区内で1つがいの営巣が確認できました。周辺では、少なくとも3つがいの営巣が確認されています。この保護区は地上から近づくことが難しく、繁殖の成否は確認できません。

●渡邊野鳥保護区大別川(厚岸町 235.0ha)
 毎年、保護区内で1つがいの営巣が確認されています。今年の巣の位置は、わずかに保護区から外れましたが、保護区内は繁殖なわばりに入っているものと思われます。現在のところ、ヒナが生まれたかどうかは不明です。

●早瀬野鳥保護区別寒辺牛湿原(厚岸町 365.4ha※厚岸町購入箇所も含む)
 保護区内では少なくとも1つがい、周辺ではさらに3つがいが繁殖しています。保護区周辺では、ヒナ連れの姿も確認されています。

●渡邊野鳥保護区ソウサンベツ(根室市 368.1ha)
 今年は保護区内で2ヶ所、周辺で3ヶ所の営巣が確認されています。5月25日には、湖岸で1羽のヒナ連れを確認しました。その他、つがいと思われる成鳥2羽を確認し、1羽には標識75V(2000年生まれ・オス)がつけられていました。保護区内またはその周辺で営巣したものと思われますが、繁殖には失敗したようです。

●藤田野鳥保護区酪陽(根室市 22.1ha)
 保護区内では毎年、メスの標識鳥T45のつがいが繁殖しています。今年も営巣は確認できたものの、ヒナは確認できていません。5月25日には、T45の姿は確認できませんでしたが、保護区に隣接して流れる別当賀川河口付近(保護区外)で別のつがいを確認しました。

●渡邊野鳥保護区フレシマ(根室市 203.7ha)
 保護区内では1つがいが繁殖しており、オスには41Vの足環がつけられています。今年も営巣が確認されましたが、5月中には巣を放棄し、その後は繁殖活動が見られていません。これまで41Vが子どもを連れて冬のサンクチュアリに飛来したことはありません。今年こそはと期待していましたが、楽しみは来年に持ち越しです。

●持田野鳥保護区東梅(根室市 7.6ha)
 ここ数年、営巣はするものの繁殖に失敗しています。今年も抱卵が確認されていますが、ヒナの姿は確認できていません。とにかく今年こそは、何とかヒナを育て上げてもらいたいと願っています。
第11回タンチョウイラスト展より
鶴居村 鶴居小 酒田紺音さんの作品

2005年度より新体制
 2005年4月より、サンクチュアリの体制がかわりました。サンクチュアリ常駐レンジャーが3名となりました。また、サンクチュアリ初代チーフレンジャーの富岡辰先が根室市春国岱原生野鳥公園ネイチャーセンターに着任し、野鳥保護区の設置や管理を中心に活動することになりました。改めて、スタッフ全員のメッセージをお届けします(O)。

●富岡辰先(野鳥保護区事業担当)
 はじめまして、そして、お久しぶりです。この4月の人事異動で、11年ぶりに道東にやってきました。87年から7年間、タンチョウサンクチュアリに勤務していました。その節はたいへんお世話になりました。
私の仕事は、タンチョウの生息地の買い取りが中心です。買い取った後の巡回監視やモニタリング調査も行っています。また、2007年に控えたタンチョウサンクチュアリの20周年の企画・準備や次期中期計画の策定にも入ることになります。
 再び訪れることのできた道東において、少しでもタンチョウや道東に生きる野鳥たちのために力になれればと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

●音成邦仁(チーフレンジャー)
 サンクチュアリに赴任して5年目を迎えました。4年間の経験とレンジャーになる前の社会経験を活かし、責任ある立場をまっとうしたいとはりきっています。
 タンチョウの生息数は順調に増加する反面、生息環境の不足や越冬地の集中化などの問題は未解決のままです。また農薬中毒の発生、事故の増加など新たな問題も生じています。2007年にはサンクチュアリ開設20周年を控え、これからのタンチョウ保護やサンクチュアリのあり方を考えると非常に重要な時期にきていると感じています。これまで以上に皆さまのご指導ご協力をよろしくお願いいたします。

●阿部秀幸(インターンレンジャー 2年目)
 あっという間に過ぎた1年でしたが、見聞きする何もかもが新鮮で、非常に実り多い1年となりました。
 タンチョウは四季を通じてたくさんの魅力的な一面を見せてくれましたが、同時に、事故現場や農業被害、人に慣れすぎた個体の存在など、タンチョウをとりまく問題も目の当たりにしました。
 1,000羽を超えたとはいえ、まだまだ予断を許さない状況には違いありません。タンチョウがいつまでも暮らしていけるように、これからも保護活動に努めてまいります。

●渡邉美沙(インターンレンジャー 1年目)
 初めまして。今年の5月からサンクチュアリで働いています。レンジャ−として働く事も、北海道で暮らす事も初めてで、来た当初は初めて見るタンチョウの空を飛ぶ姿に驚きました。
 そんな私ですが、多くの方々にお世話になりながら、少しずつ慣れてきました。現地では、タンチョウによる農業被害の問題を知り、タンチョウと人との関わりについて考えさせられました。
 これから少しずつでも、自分なりに何か出来る事を見つけていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
第11回タンチョウイラスト展より
釧路市 大楽毛小 松岡遥さんの作品