タンチョウサンクチュアリ通信 2003年 夏号
今年の道東の春は「肌寒い」の一言に尽きます。朝晩の気温は10℃を下回ることも。それでも湿原はだいぶ緑色に染まり、花々も美しさを競うように咲いています。タンチョウのヒナも大きくなり、親子連れのタンチョウを見かけることもあります(O)。
| ハンノキ伐採区で2羽のヒナを確認! |
タンチョウの生息環境のヨシ原復元を目指して、1999年からハンノキ伐採を行ってきました。そして、わずか4年でタンチョウが戻ってきたというニュースを昨年の夏号で報告しました。
そして今年もタンチョウが巣を作りにやってきました。2年連続での巣作りです。昨年は9月の巣の調査で、ヒナが無事に生まれた可能性が高いと言われましたが、この目でヒナの姿を確認することはできませんでした。
そこで5月12日、まずは巣の正確な位置を把握するために、保護区へ向かいました。
まずは保護区から離れた高台で観察しました。早速、親2羽が餌を探し回っている姿が確認できました。しかし、これは意外な行動でした。まだ卵を抱いている時期だと思っていたからです。もしそうであるならば、親のうち1羽は動いているはずがないのです。となると、もうすでにヒナが孵っているのか、もしくは繁殖に失敗したかのいずれかです。
今度は保護区をはさんで向かい側の丘に移動しました。向かい側の丘の方が保護区に近く、足下まで見えるからです。丘に向かう途中、1羽の親が私たちの気配に気づき、逃げていくのがわかりました。慎重に近づいているつもりでも、やはりタンチョウの方が敏感です。それから見晴らしの良い場所に出て、しばらく観察を続けました。
まもなく、私たちの視界に小川を渡る親の姿が見えました。そして、次の瞬間、親について歩くヒナが!そしてもう1羽!無事に2羽のヒナが誕生していたのです。とても元気そうでした。
多くの方々の協力により、復元されたヨシ原。そこで子育てをするタンチョウ。こんな美しい光景を見たのは久しぶりです。タンチョウ保護に関わる様々な問題を忘れさせてくれる瞬間でした(O)。
第9回イラスト展より
釧路町 富原小 佐藤 直美さんの作品
| タンチョウの生息数908羽に |
2003年のタンチョウ生息状況一斉調査が1月27日に行われ、成鳥783羽、幼鳥115羽、不明10羽の計908羽とこれまでの最高数が記録されました。しかも、過去最高だった昨年の808羽から一気に100羽も増えました。全体の6割弱にあたる511羽が鶴居村で確認され、そのうちの184羽がサンクチュアリで確認されました。
昨年の春は非常に暖かく、大雨もなかったので、繁殖が順調であることが予想されていました。その予想通り、幼鳥の数も過去最高となりました。
一斉調査の始まった1952年の33羽から、半世紀で30倍近くに増えたことになります。まさに奇跡的な回復といって良いでしょう。地元の方々の給餌を中心とする保護活動の成果であることは間違いありません。1,000羽の大台も夢ではなくなりました。
タンチョウの保護活動をしているサンクチュアリとすれば、生息数が順調に増えていることは、もちろん喜ばしいことです。しかし、手放しには喜べない現実もあります。タンチョウの増加に伴い、道東地方への集中化が一層進んでいます。その結果、タンチョウの生息に適した湿原は、もはや飽和状態と言って良いでしょう。
その弊害として、毎年実施しているタンチョウによる農業被害対策の問題が挙げられます。湿原に帰れない若鳥の群れが春先以降も人里に居残り、トウモロコシ畑に侵入して種や苗を食べてしまうのです。
また昨年はタンチョウの事故死が急増しました。電線に接触したり、車や列車にはねられる事故が目立ちました。タンチョウが人に慣れてきたことは否定できませんが、明らかに事故の危険性の高い場所(例えば電線の下など)で、給餌されている例もあります。
給餌中心の保護活動により、これまで順調にタンチョウの生息数が回復しましたが、それだけではタンチョウを保護しきれない状況になっているのも事実です。皆さんのご支援のもと、これからも人とタンチョウの共生に向けて、知恵を絞りながら、活動していきます(O)。
釧路市 美原小 高橋 のぞみさんの作品
コニカ・チャリティポストカードと入賞作品展が無事終了
第2回コニカ・チャリティポストカードと第1回フォトコンテスト入賞作品展はご好評のうちに、無事終了しました(O)。
一般の方々から寄せられたタンチョウの写真を使ったポストカードを作成し、1,000円のご寄付をいただいた方にポストカード5枚1セットを進呈するというコニカ・チャリティポストカード。昨年度はおかげさまで748口のご寄付が集まり、サンクチュアリの活動費に充てさせていただきました。尚、ポストカードに若干の残部がありますので、ご希望の方はお早めにご連絡ください。
またご応募いただいた写真の中から、特に素晴らしい作品19点による入賞作品展も開催しました。道内はもちろん、東京、大阪など全国7ヶ所で開催することができ、多くの方々にタンチョウの魅力やサンクチュアリの活動をPRすることができました。
そして、今年度のポストカード用の写真が決まり、現在作成中です。今年もたくさんの方から素晴らしい写真をいただきました。昨年度同様、入賞作品展も企画中ですので、あわせてご期待ください。
初夏のサンクチュアリの旅
6月23日から25日、2泊3日の探鳥ツアーを行いましたので、報告します(O)。
これまで冬に行っていたサンクチュアリの旅を、初めて夏に行いました。参加者や天候にも恵まれ、冬とはまったく違う風景や鳥を、思う存分楽しむことができました。
参加者数は17名。初日は到着するなり、釧路湿原周辺を探鳥。オオジュリンやベニマシコなど、存分に楽しみました。夜は「美人の湯」とプロ写真家のスライドショウで疲れを癒しました。
翌日は釧路湿原北側の景勝地「キラコタン岬」でゆっくり探鳥。さらに午後は湿原西側の達古武沼で草原性の鳥を復習し、厚岸へ。この日の夜も専門家によるスライドショウで厚岸の自然を堪能しました。
最終日の早朝には、林道を歩き、夏鳥の声の競演を楽しみ、コマドリ、コルリ、トラツグミなどをじっくり聞き分けることができました。また厚岸駅前では、なかなか姿を見せないエゾセンニュウがさえずる姿を披露してくれる一幕も。その後、霧多布湿原でタンチョウやワタスゲ群落などを楽しみ、あっという間にツアーは終了しました。 合計63種の鳥を見聞きするとともに、改めて探鳥の楽しさを再確認するツアーとなりました。
鶴居村 鶴居小 伊藤 栞さんの作品
保護区の繁殖状況
4〜6月の航空調査と現地での観察による、今春の各保護区の繁殖状況です(H)。
●渡邊野鳥保護区ソウサンベツ
(根室市:368.1ha)
4月の航空調査では、保護区内で1つがいが営巣し、隣接地で2つがいの営巣が確認されました。保護区内の巣では、5月の航空調査でヒナ1羽連れの家族が確認されました。その後の航空調査と5、6、7月の現地巡回では、保護区及び隣接地では全て成鳥だけの確認となりました。保護区内、隣接地ともに今年は全て繁殖に失敗したようです。
●持田野鳥保護区(根室市:7.6ha)
今年も1つがいが、例年同様国道から丸見えの所で4月16日から卵を抱いていました。観察の結果、卵は1つのみです。しかし平均32日と言われる予定日を過ぎても、ヒナが孵りません。その後2ヶ月以上ずっと抱き続けたため「もう孵化する可能性はなく、いつまでも抱いていると親がかわいそう。卵を取り上げるべき」という声も出ました。
研究者と協議した結果、野生動物の行為であるため人は手を出さずに見守る事としました。結局親鳥は88日間抱卵して巣を離れ、卵はなくなっていました。2年続けて失敗した要因を検討し、来年はその対策を立てていきたいと考えています。
●別寒辺牛湿原早瀬野鳥保護区(厚岸 町:365.4ha※厚岸町購入分を含む)
4月には保護区内で1巣、隣接地で1巣が確認されました。その後の5月と6月の航空調査、現地巡回では1羽
も確認できませんでした。ハンノキの林に隠れて見つからなかったものと思われます。2カ所とも無事にヒナが孵り、育つ事を祈っています。
●渡邊野鳥保護区大別川
(厚岸町:235.0ha)
4月の航空調査では一昨年よりも上流側で1巣が確認されました。5月9日の現地調査では、航空調査で確認した巣で成鳥1羽が抱卵している様子をビデオ撮影しました。しかし5、6月の航空調査と6月18日の現地調査では1羽も確認できませんでした。ヒナが孵ったかどうかも不明です。いずれにしても餌を採る場所は、ヨシ原よりハンノキ林の奥を利用しているようです。
●温根内早瀬野鳥保護区
(鶴居村:19.5ha)
冒頭でお知らせした通り、ハンノキ伐採区域の隣接地(去年より伐採区に接近!)で営巣し、5月にはヒナ2羽連れの成鳥2羽が確認されました。夏以降の巣の調査が楽しみです。
釧路市 鳥取西小 小泉 茜さんの作品