タンチョウサンクチュアリ通信 2003年 秋号

発行:(財)日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ
(編集:レンジャー 原田 修、音成 邦仁)

 いよいよタンチョウがサンクチュアリにやってくる時期になりました。例年、11月下旬には200羽前後、12月には300羽前後のタンチョウがサンクチュアリに集まります。是非、タンチョウに会いにいらしてください(O)。


新しい保護区を設置

 日本野鳥の会はタンチョウ保護の一環として、大口のご寄付をもとにタンチョウが繁殖しながら保護の法指定のない湿原を購入し、寄付者のお名前を冠した保護区を設置しています。このほど会員の方からのご寄付により、北海道根室市にある22.1ha(221,247u)のタンチョウ生息地を新たに購入、保護区を設置しました。

 購入したのは、風蓮湖に注ぐ別当賀川の下流域右岸側に広がる湿原と周辺の山林です。タンチョウは購入した土地内で十数年前より毎年1つがいが営巣しています。この場所は道立自然公園の一部ですが、民有地だったため、開発が可能な「普通地域」に指定されていました。

 購入には、鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリの活動を支援する賛助会「タンチョウふぁんクラブ」の会員の藤田様からのご寄付の一部を使わせていただきました。同所は藤田様のお名前を冠した「藤田野鳥保護区酪陽(らくよう)」として看板を設置し、レンジャーが巡回監視などを行い、このままタンチョウが繁殖できるように環境保全に努めます。

 風蓮湖周辺は、タンチョウの営巣数が30程ある重要な生息環境です。日本野鳥の会はこれまでに「持田野鳥保護区」「ゼネラル石油野鳥保護区・春国岱」「渡邊野鳥保護区ソウサンベツ」と3か所の保護区を設置しており、今回で4か所めとなります。この4か所で3つがいの営巣地と、自然採食地を確保でき、風蓮湖周辺の営巣地の一割が今後も保全されることになりました。

 これで日本野鳥の会が設置したタンチョウのための野鳥保護区は8か所、合計1079.6haとなり、9つがいが繁殖する営巣地と2か所の自然採食地である湿原を確保できました。

 今後もこのようなご寄付のお申し出があれば、そのお気持ちに応えられるように、タンチョウの繁殖地である湿原の確保と保護区設置を進めていきます(H)。


タンチョウによる農業被害対策

 サンクチュアリでは、毎年5月中旬から6月中旬ごろまでの1ヶ月間、タンチョウによる農業被害防止対策を実施しています。

 十数年前から若いタンチョウが春先以降も鶴居村周辺に居残るようになりました。これはタンチョウの増加に伴う北海道東部の過密化により、本来の生息環境である湿原が足りなくなってきていることが原因と思われます。

 タンチョウの越冬地であると同時に酪農地帯でもある鶴居村では、5月中旬から牛の飼料用トウモロコシ(デントコーン)を各所で播種します。このデントコーンの種が居残りタンチョウの格好の餌になってしまうわけです。

 そこでサンクチュアリでは、1992年からデントコーン畑にタンチョウが侵入したら追い払いをしたり、畑に入らないように防鳥器具を立てたりして、タンチョウによる被害の防止対策を実施しています。

 今年のタンチョウは、過去に侵入が一度も確認されたことのない畑に侵入したり、器具を設置した後も畑に侵入したりと、畑への依存が強まる傾向が見られました。来年度以降に不安を残す結果となりました。

 一方、10月23日には鶴居村の呼びかけで、タンチョウによる農業被害の報告や来年度以降の対策を検討する会議が開かれました。その中で、鶴居村がこの問題を地域の問題ととらえ、村が主導してこの対策を実施する考えがあることを述べました。これは、タンチョウ保護や鶴居村の繁栄にとって、大きな前進だと思います。地域でこの対策を実施し、サンクチュアリはその中で最大限協力していくという体制が本来あるべき姿だと考えています。村主導の体制の実現は、農業被害防止対策の大きな転機になるのではないでしょうか(O)。

第9回 タンチョウイラスト展より
浜中町 茶内小 嶋野 幸奈さんの作品


コニカミノルタ・チャリティポストカードとフォトコンテスト入賞作品展 

 今年も一般の方々から寄せられたタンチョウの写真を使い、5枚のポストカードを作成しました。第3回コニカミノルタ・チャリティポストカードおよび第2回フォトコンテスト入賞作品展についてお知らせいたします。

 一般の方々から寄せられたタンチョウの写真を使ったポストカードを作成し、1,000円のご寄付をいただいた方にポストカード5枚1セットを進呈するというコニカミノルタ・チャリティポストカード。今年もコニカミノルタホールディングス株式会社(前コニカ株式会社)のご協力により、新たな写真を使ったポストカードが完成しました。

 タンチョウの集団ねぐらとして有名な雪裡川での幻想的な光景や大空を舞うタンチョウなど、素敵な写真が揃いました。郵便振替用紙つきチラシを同封いたしましたので、この機会に是非ご支援いただけますようお願いいたしますとともに、ポストカードをご活用ください。

 またご応募いただいた写真の中から、特に素晴らしい作品20点による入賞作品展も始まりました。4月まで全国6ヶ所で開催いたしますので、お近くで開催の際は、是非足をお運びください。実施会場は下記の通りです。詳しくは鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリまでお問い合わせください(O)。


ボランティアワークキャンプ実施の報告

 サンクチュアリでは、毎年3月と8月に首都圏の大学生を中心とするF.A.ネットワークという自然保護ボランティア団体を受け入れています。この団体は、自然保護のボランティアを通じて、社会貢献することを目的に活動しています。その活動のひとつに、自然保護活動を進める施設に1週間ほど滞在し、活動を手伝うというものがあります。これがボランティアワークキャンプです。

 今年の8月には、24日から31日まで8名の学生がやってきました。今回の日程の中で、大きく分けて2つの活動を実施し、大きな成果が上がりました。

 ひとつ目の活動は植生調査です。タンチョウが営巣できる湿原を取り戻すためにハンノキを伐採した場所で伐採後の植生の変化を調べて、データを蓄積するためのものです。昨年からこの湿原でタンチョウが営巣するようになったのも、ハンノキ伐採の効果と思われます。植生調査の結果は、この場所でのデータというだけでなく、新たな事業を実施する際の重要なデータにもなります。

 もうひとつの活動は、防鳥器具の製作です。これはタンチョウによる農業被害を防止するため、タンチョウを畑に侵入させないためのものです。ペットボトルを風車のように加工し、100個以上の防鳥器具が完成しました。

 これらの活動を通じて、参加者は自然保護のあり方を考えたり、現場でないと味わうことのできない経験を得ることができます。またサンクチュアリにとっても、労力の提供というだけでなく、活動を理解し、発信できる「人財」を得たことになります。施設にとっても、参加者にとってもこの上ない活動だと確信しています(O)。

釧路町 富原小 かとう あいみさんの作品


行事のご案内
 

 ネイチャーセンターの開館に伴い、様々な生き物の視点から自然を見つめることを目的とした「タンチョウサンクチュアリセミナー」を実施いたします(O)。

12月7日(日)14:00〜16:00
「オオワシの繁殖地が危ない!」
講師:北海道野生生物保護公社 
   研究員 渡辺有希子氏

 この時期、越冬するために北海道にやってくるオオワシ。北海道では鉛中毒の問題が深刻ですが、繁殖地ではどうなのでしょう? 繁殖地のひとつサハリンでは、オオワシに危機が迫っています。サハリンの現状を映像を交えながらお話しいただきます。

1月11日(日)14:00〜16:00
「病気から解き明かされるタンチョウ の謎 〜コクシジウム症の話〜」
講師:阿寒国際ツルセンター 
   研究員 渡辺ユキ氏

 昨年、タンチョウの伝染病として話題になった「コクシジウム症」。実際のところタンチョウにとってどれほど危険な伝染病なのでしょうか? もう伝染する危険はないのでしょうか? 昨年の発生以来、タンチョウのコクシジウム症にかかわる渡辺氏に、この病気と環境の不思議な関係についてお話しいただきます。

鶴居村 鶴居中 山口 友里恵さんの作品