6月の道東は気温が低めで、朝晩はストーブをつける事もあります。でも湿原では枯れ草色の下から緑の葉が伸び始め、鳥のさえずりはピークです。タンチョウはあちこちで明るい茶色のヒナ連れの親子が見られます(H)。
| ハンノキ伐採区でタンチョウ営巣 |
タンチョウ生息環境のヨシ原の復元を目指しハンノキ伐採を行っている場所で、タンチョウが巣を造りました!このうれしい知らせは、毎春タンチョウの繁殖状況を調べているタンチョウ保護調査連合の方から4月に行った航空調査の写真とともに届けられました。巣の位置は、今年1月に横浜自然観察の森のボランティアグループ「雑木林ファンクラブ」のメンバーが伐採した現場から30〜40m離れた川沿いで、もちろん保護区の中です。
巣を造ったのは3月の伐採作業中に周辺で観察されたつがいかと思われます。厳密には、巣の位置そのものは以前からあるヨシ原ですが、私たちが4年間かけて伐り開いた約3,000uの空間(3分の1は既にヨシ原が復元しています!)があったからこそ、利用してくれたのでしょう。当初10年くらいでうまくいけば、と考えていた事が、4年で実現してしまいました。驚きとともにうれしさでいっぱいです。
5月の航空調査では、同所で巣から離れた林内で成鳥2羽が観察されました。ヒナがいたかどうかは確認できず、現時点では繁殖が成功したかどうかは不明です。8月末に予定している植生調査まで現地には入りません。もしヒナが生まれていて無事に育てば、会えるかも。思わず大声で叫びそうです。「やったね、おめでとう!」(H)
第8回イラスト展より
釧路市 鳥取西小 米川キヨト君の作品
サンクチュアリの行事から
3月に行われたタンチョウサンクチュアリ・セミナーの報告です(O)
●ハクチョウの話(3/16)
厚岸水鳥観察館の専門員、澁谷辰生氏を講師に招き、昨冬(平成12年度の冬)の厚岸湖でのハクチョウを取り巻く状況から見る「ハクチョウへの餌付け問題」について、映像を交えながら、じっくりお話しいただきました。
厚岸水鳥観察館から程近い厚岸湖には毎年2,000〜3,000羽ものハクチョウが越冬します。厚岸町ではかねてからハクチョウに餌付けをしないよう呼びかけています。それは、湖には餌付けをするまでもなく十分な餌(水草)があること、餌付けにより人間の生活圏に近づきすぎて事故につながる危険性があることなどの理由からです。
ところが昨冬は例年にない冷え込みのため湖のほとんどが凍りつき、わずかに残った湖面に1,000羽ものハクチョウが集中しました。そのころからハクチョウの死体も目立つようになってきました。この状況を見かねた地域住民から町へ給餌をするよう要望が相次ぎました。結局、厚岸町は給餌に踏み切りました。
この一連の流れの中で澁谷氏は、今回の給餌が本当に必要であったかどうかは疑問だと言っています。まず、餌は本当に不足していたのでしょうか?1,000羽もいれば、たとえ餌があっても死んでしまう個体がいて当然です。たまたま湖面が人間の目に触れるところにあったため、死体が目立っただけかもしれません。また、餌付けにより人間の餌だけを頼りにするハクチョウも出てきました。結果、自分で餌をとることをせず弱っていく個体もいたようです。つまり「餌付け」はハクチョウのためになっているかどうかはわからず、実は人間の自己満足なのではないでしょうか?
一般的に餌付けは美談としてマスコミなどに取り上げられます。しかし一方で、餌付けにより人に近づきすぎる動物が問題となっている地域もあります。教育現場でも餌付けを教育や自然保護活動の一環として実施するケースがあります。しかし、ハクチョウの食べ物がパンくず(本来は水草が主食)だと信じている子どもがいる現実もあります。
最近では、ブラックバスやアライグマといった移入種の問題がよく話題となります。しかしもともとその場所にいなかった動物、もしくは少なかった動物を餌付けにより集めることは、移入種問題と本質的には何ら変わりのないことではないでしょうか?結局、明確な根拠のない餌付けはその動物やその地域にとって不幸な結果を招く危険性が高く、原則としてはすべきではないのです。ある動物を保護するのならば、その動物の生息環境を保全することが基本であり、大切なことなのです。
以上が澁谷氏の話の概要です。この報告は関係者の中でも話題となっており、今後ますます議論が深まるものと思われます。セミナーの後も参加者からいろいろな意見が出て、有意義な討論の場となりました。
ちなみにサンクチュアリでもタンチョウ保護のため給餌を実施していますが、この給餌は今回指摘の餌付けとは少し意味合いが違います。タンチョウの場合、冬の給餌をやめてしまえば、大幅に個体数が減ってしまうことが明白です。現在、尚も絶滅の危機にさらされているタンチョウには給餌が必要不可欠なのです。ただし、給餌が本当の意味での保護ではないことも自覚しています。給餌をしなくても、タンチョウが生きていける環境保全が何よりも必要だと考えています。
釧路町 富原小 岡安 祐亮君の作品
コニカの新チャリティー、第1回めが無事終了
コニカパッケージエイドに代わる新チャリティーが1年目を無事終了しました。詳細は以下の通りです(H)。
●ポストカード寄付は416口
野鳥の会の会報やHPでのPR、また過去のコニパケの協力者へのDMや道東の自然系施設等へのチラシ配布により、郵便振替による申し込み273口、センターでの受付が143口の合計416口のお申し込みをいただきました。この結果、41万6千円が新年度のタンチョウサンクチュアリの活動費に充てられます。
●フォトコンテストも
ポストカードへのご寄付と同時に行われた、第2回目のチャリティーポストカード採用作品の募集には、80点の作品が寄せられました。当初はポストカードに採用される5点のみの入選を考えていましたが、良い作品が多かったため、14点を佳作として追加させていただき、計19点の作品をパネルにして写真展を行うことになりました。
入選作品は7月以降、以下のHPでご覧になれます。
http://www.konica.co.jp/tancho
なお写真展の開催場所などは、現在企画中です。次号以降のぴっけるぴっけにてご案内する予定です。ポストカードへご寄付いただいた皆さん、フォトコンテストに応募された皆さん、ご支援ありがとうございました。
浜中町 霧多布小 内村 純也君の作品
保護区の繁殖状況
4〜5月の航空調査と現地での観察による、今年の保護区の繁殖状況です
●持田野鳥保護区(根室市:約6ha)
現場に近接する春国岱原生野鳥公園のレンジャーからの情報です。今年も国道から50〜60mの丸見えの所で4/5から抱卵を始めました。5月の連休中は大勢のカメラマンが押し掛けていましたが、抱卵中は大して気にする様子もなかったそうです。しかし5/10のヒナの誕生後は、明らかな警戒のしぐさを見せるようになりました。ヒナは2羽生まれましたが、5/22にヒナの死体をくわえて飛び去るカラスが目撃され、2羽とも死亡が確認されました。死亡原因がカラスなのか、前日の雨によるものかは不明です。その後は繁殖行動が見られず、昨年に引き続き今年も残念な結果になりました。
●別寒辺牛湿原早瀬野鳥保護区
(厚岸町:約281ha)
4月には保護区内で1巣、隣接地との境界付近で1巣が確認されましたが、5月の航空調査ではいずれも1羽も確認されませんでした。ハンノキ林の陰に隠れて見つからなかったと思われます。ここは地上からはまず見る事は無理で、広さの割に巣の数が少ない地域です。いずれは環境管理の必要がありそうです。
●渡邊野鳥保護区大別川
(厚岸町:約235ha)
4月の航空調査では保護区より北側の区域で1巣が確認されました。そこから保護区をはさみ、川沿いに2km程下流にある厚岸水鳥観察館では、保護区方面と大別川河口付近を行き来するタンチョウがよく観察されていました。5月に2度現地調査に行きましたが、いずれも地上からは確認できず、5月の航空調査では1羽も確認されませんでした。ここも巣から離れた後はハンノキ林の陰で見えなくなります。今年は採餌に利用されていたようです。
●温根内早瀬野鳥保護区
(鶴居村:約20ha)
1Pめで紹介したように、久々に保護区内で、しかもハンノキ伐採地点から30m程の距離で巣が確認されました。でも環境管理の成果が早くも4年目で現れた事は、一方では営巣環境の悪化が相当深刻である事を反映している、とも考えられます。いずれにしても8月の現地調査が楽しみです。
鶴居村 鶴居中 山本 祐美さんの作品