明けましておめでとうございます。鶴居村は12月17日から根雪となり、銀世界でのお正月です。サンクチュアリは16回目の新年を迎えました。今年もよろしくお願いいたします。(H)


タンチョウの事故急増、過去最悪

 新年早々、暗い話ですみません。ケガや病気、死体等で釧路市動物園に保護収容されたタンチョウは、毎年1月〜12月で集計されていますが、今年は12/22現在29件(※12/31までで31件となりました)と、これまで最多だった昨年、一昨年の20件を大きく上回る過去最悪のケースになりました。内容は電線衝突12件、交通事故(列車や車との衝突)7件、その他不明10件です。

 保護収容は、例年10〜12月の越冬期前半に集中します。これは人里へ移動した初期で、人工物に接触する事故が増える事、また発見されやすいためと考えられます。今年は10月に10羽、11月は6羽、12月は22日現在6羽ですが、これまで1ヶ月の最多は4羽でした。

 ここ数年、タンチョウと人の距離が近くなり、タンチョウの人への警戒心が薄くなっている事が気になっていました。サンクチュアリでも以前は飛ばなかったコースで、電線や建物に近い低さで飛ぶ例が目につきます。さらには電線の下を抜ける例も増えているのです。その結果、風が強かった11/27、28の2日間で4羽、12/7にも2羽が電線付近で死体回収されています。もはや電線に衝突よけのマーカーを着けるだけでは限界です。かといって地下埋設では、道路すれすれに低く飛び今度は交通事故につながります。

 タンチョウは給餌に代表される地元の方の保護活動で、絶滅の淵から回復してきました。近年は様々な場所で給餌が行われていますが、中には保護の名目で道路や電線の近くで、タンチョウを餌で寄せて別の目的に利用している例も目に付きます。無秩序な給餌が事故の一要因である事は否定できません。でもそれだけの問題でしょうか? 野生動物であるタンチョウと人との距離は、近づき過ぎてはいませんか?(H)


鶴居村 鶴居小 平田 舞さんの作品

サンクチュアリの行事から

10〜12月に行われたセミナーの報告です(O)。

●ヒツジの国の自然(10/27)

 釧路市在住の環境教育コーディネーター日高哲二氏を講師に、ニュージーランドの自然や自然再生の取り組み等について、スライドを交えて紹介していただきました。

 ニュージーランドが大陸から離れたのはユーラシア大陸やアフリカ大陸などができる前のことで、ニュージーランドの生き物は早くに孤立しました。約1000年前に人が島に入るまで、ニュージーランドに住む哺乳類はなんとコウモリが2〜3種しかいませんでした。

 島に住む鳥は天敵がいないため、飛ぶ必要がなくなりました。しかしヒトが住み始めて、飛べない鳥たちはヒトやヒトの持ち込む動物に次々と捕食されました。これまでに80種の鳥が絶滅しました。また、原始の森も次々に開墾され、今は残りわずかです。

 今、ニュージーランドでは在来種の保護と外来種の駆除を徹底しています。徹底した保護対策は、DOCという、日本では環境省にあたる組織が執行しています。日本との大きな違いは、国立公園のすべてがDOCの所有となっている点です。DOCは国立公園に対して絶対的な力を持っており、国立公園内のあらゆることを決定します。

 一方、トラスト運動なども盛んなのですが、問題は人手不足で、海外からの受け入れを積極的に行っています。日本でも外来種の問題が多く聞かれる昨今ですが、今後どのように対応していくべきなのか、考えさせられる内容のお話でした。

●チベットのオグロヅル(11/17)

 阿寒国際ツルセンター研究員の松本文雄氏を講師に、チベットに住むオグロヅルについて、スライドを交えながら、お話しいただきました。

 オグロヅルは中国西南部に生息するタンチョウによく似たツルです。個体数は5000羽程度と言われています。日本からの援助によって、オグロヅルの保護区が設定されていましたが、どのように保護されているのかはわかりませんでした。ただ、地元の人とツルは共存しており、畑作業をしている人たちの側で餌をついばむオグロヅルの家族を見ることもありました。

 生態については、ようやく越冬地がはっきりしてきた程度で、越冬地では何を食べているのか、繁殖はどこでどのように行われているのかなど、よくわかっていないことが多いようです。地元の研究者は、機材や人材の不足などの問題を抱えているようです。

 今回のように、鳥や動物の保護活動の一環として国際的な交流をすることは、大切なことだと思いますが、その地の人々や文化に触れることも大切なことだと思います。

●ワシ類の鉛中毒について(12/7)

 鶴居村在住でワシ類鉛中毒ネットワーク代表の黒沢信道氏を講師に、ワシ類の鉛中毒について、映像を交えながら、お話しいただきました。

 今回のワシ類はオオワシとオジロワシを指します。鉛中毒は鉛弾で撃たれたシカの死体をワシ類が食べることで発生します。1995年前後から目立つようになりました。1997〜1999年の調査では、鉛中毒死と思われるワシ類の死体は実に全体の75〜80%。これは鉛中毒発生前のワシ類の死亡率を4〜5倍にも引き上げたことになります。

 この問題は鉛弾を使用しないこと、シカの死体を放置しないことが徹底されれば、撲滅できるはずです。しかし、今のところ鉛弾使用禁止は北海道でのシカ猟に限られているため、クマ用や射撃用として鉛弾が流通しています。今の段階ではハンターのモラルに頼る他ありません。またシカの死体回収にしても、まだまだ徹底されていないようです。

 しかし、ワシ類鉛中毒ネットワークの調査により、鉛中毒の全容が明らかになったことで、行政が対策を講じてきている現状は非常に意味のあることだと思います。これからは鉛中毒の問題解決に向け、我々一人一人が後押ししていかなければならないと思います。

浜中町 茶内第一小 落合 早苗さんの作品


サンクチュアリトピックス

サンクチュアリにはすでに300羽近いタンチョウが集まっています。その中から、今年の注目個体を紹介します(O)。

●アゴ
 今年生まれの幼鳥なのですが、親がおらず、1羽で行動しています。アゴのあたりに羽が飛び出て、目立つため「アゴ」と呼んでいます。

 しかし、行動を見ているとなかなかどうして世渡り上手。毎日、別の家族の後ろを歩き、あたかも家族の一員のように行動しています。餌についても十分とれているようです。このままたくましく育ってほしいですね。

●02Pと04P
 こちらも今年生まれの幼鳥。それぞれの親はなわばりが隣同士で、02Pと04Pはいわば幼なじみ。04Pの親はT45と親子で足環つきです。

 ところが、実際サンクチュアリにやってきた親子はあべこべになっています。つまり02PはT45と一緒に、04Pは別の親と一緒にやってきたのです。

 こちらが足環をつける際に記録を間違えたのか、子どもを入れ替えて育てているのか、今となっては謎です。尚、02Pは指の付け根にひものようなものが絡まっている可能性が強く、足を引きずっています。サンクチュアリに飛来した当初は、羽を広げてバランスをとらないと歩けないほどでした。何とか、治ってほしいのですが・・・。

鶴居村 鶴居小 佐藤 奈津子さんの作品


サンクチュアリからのお知らせ

●行事案内

第9回タンチョウイラスト展

 期間:12月14日(土)〜1月31日(金)

 根室・釧路管内の小中学生から今年は283点の力作・珍作?が集まりました。子ども達の素晴らしい感性で描かれたタンチョウをご覧下さい。


クラシックコンサート

 日時:1月26日(日) 14:00〜15:00

 演奏:ザ・クラリネット・コネクション

 曲目:アンダンテカンタービル(チャイコフスキー)他

 毎年大好評のニューイヤーコンサート。今年は釧路管内のクラリネット四重奏団による演奏と、レンジャーによる「ミニタンチョウ語講座」をセットでお届けします。当日は100羽以上のタンチョウもコンサートを聴きに来ていますよ?


第33回サンクチュアリ・セミナー

「酪農地帯のタンチョウ事情」

 日時:2月22日(土) 14:00〜16:00

 進行:音成 邦仁(レンジャー)

 最大500羽近いタンチョウが越冬する鶴居村では、タンチョウと酪農の間で困ったことが起きています。タンチョウの意外な側面をレンジャーが紹介します。


第34回サンクチュアリ・セミナー

「私が見た中国の鶴」

 日時:3月21日(祝) 14:00〜16:00

 講師:林田恒夫氏(自然写真家)

 千円札等に使われているタンチョウの写真で有名な林田氏が、中国で見たタンチョウやソデグロヅル等について素晴らしいスライドと共にお話いただきます。

※いずれも会場はネイチャーセンター。入場無料。 


●本の紹介
「週刊日本の天然記念物動物編27  タンチョウ」
 小学館 2002年12月10日発売
 ¥850(税込み) 雑誌  27054−12/26

 35Pオールカラーのグラフ雑誌、という体裁ですが、監修正富宏之氏、写真林田恒夫氏と第一人者が紙面を構成しています。タンチョウの生態から生息環境の湿原の図解、文化面でも博物図譜から民話、折紙まで幅広く取り上げています。極めつけは、あの海洋堂による立体模型も付いています(チョコエッグのよりずっといいです)。絶対お買い得!
 実はレンジャーもサンクチュアリ周辺ガイドを執筆しており、多くの人が「生タンチョウ」に会いに来てくれれば、と思っています。お知り合いにも是非お薦めください。

●チャリティーポストカード大好評!
第2回コニカ・タンチョウチャリティーポストカードは12/21現在427口と昨年を上回るお申込をいただいています。まだ在庫はありますので、お申込やお問合せはサンクチュアリまでどうぞ。(この項H)

阿寒町 阿寒湖中 高田 健右さんの作品