= 焚き火のまえで =
ゴールデンウィークに長野県にある湯俣温泉に行ってきました。
いや〜、よかった、よかった。なにが良かったって、ゴールデンウィークなのに人が少なかったし、雪をかぶった北アルプスの山々も見事だし、なにより野湯の割には歩行が楽だというのが最高!
野湯、そう、ぼくがわざわざ行くのだから、もちろん山のなかに湧く手掘りの温泉です。
湯俣温泉への歩行時間は2時間半〜3時間。そのうち前半の4.5キロは林道で、後半の登山道にしても"遊歩道"と言っていいくらいのよく整備された道。真っ平らですし、足下を濡らすこともないし、ほんとにお気楽ウォーク。途中でちっちゃな犬を連れたカップルに会ってしまったほど(^^)
コースはところどころに雪崩の跡が残っていて、トラックがみごとに雪に覆われていたりします。そこそこ人は入っているから、雪の上にちゃんと踏み分け道ができているから大丈夫。それにしても暖かいのにこれだけ雪が残っているとは圧巻。あたりにはタラノメなどの山菜が顔を出していました。
途中の水たまりにカエルの大群を発見! いわゆる「食用ガエル」らしいのですが、大きな黄土色のカエルがあちこちで交尾を繰り返していました。水たまりを覗くとバケツ何杯分もあろうかという太い"ところてん"のようなタマゴがウネウネと。あれがぜんぶかえってオタマジャクシになったら怖いだろうなぁ。
繰りひろげられるメスの取り合い。そんなのを眺めていたら、気づけば小一時間たってました。久々に童心に返って「生き物観察」してしまいました(笑)
歩くこと3時間、湯俣温泉には晴嵐荘という山小屋が一軒だけあります。この時期はまだ営業していないのですが、小屋の周辺の広場がキャンプ地になっています。5月3日の夕方についたときにはすでに10張ちかくのテントが並んでいました。あたりはとっても広いので、それでもまだまだ余裕。
晴嵐荘のすぐ脇には3つほど池みたいなのがあります。白濁した水は温かい、そう、実はこの池は露天風呂。山小屋営業前の今は、ここはいうなれば露天風呂つきのキャンプサイトというわけ。もちろんキャンプも入浴も無料です。(シーズン中はどうなんだろう?)
ぼくが行ったときは、3つある池のうち、小屋に近いところは熱すぎて入浴不可、二つ目はちょっとぬるめ、三つ目は完全に水でオタマジャクシが泳いでいました。つまり入浴できるのはまんかなのひとつだけです。藻が浮いていて、どうもお湯はあんまりきれいそうじゃない。点数でいったら60点くらい。それがちょっとがっかりでした。
とりあえず晴嵐荘のキャンプ地にテントを張って、その先15分ほど上流の湯俣温泉の本拠ともいうべき地熱地帯へ行ってみました。狭い渓谷の雰囲気で、古めかしい吊り橋を渡ったり、岩棚をロープを伝って降りたりと、短い距離ながらなかなか楽しめるコースです。
地熱地帯は、谷底の狭い河原にあって、遠目からでも湯気がもうもうとあがっていて、殺伐とした雰囲気。あちこちからゴボゴボと湯が湧きだしては沢へと注いでいます。白い湯の華や緑の温泉藻がユラユラとたなびく様子はとてもきれいです。
何度くらいあるんだろう? 足下を流れる湯に手を触れると、アチッ! はっきりいって熱湯です。80℃以上はありそう。奥の方へ行くと比較的ぬるめの源泉があって、流れの途中に誰かが掘ってくれた湯船が出来上がっていました。手を入れてみると、まさに適温。そんなプールが2つ、3つほどあったでしょうか。
晴嵐荘の池のような風呂に比べると、こっちは湯がコンコンと湧きだして流れている分、とてもきれい。どうせ入るなら、質も雰囲気もこっちのほうがいいよなということで、いったん晴嵐荘のキャンプサイトに戻って、テントをたたんでお引っ越しとあいなりました。
湯船があるあたりは岩がゴツゴツしているんですが、その真ん中に一ヶ所だけポツリと平らな砂地の部分があります。テントを張るのにうってつけの場所で、すでに先客が1組いました。ここがキャンプのベストポイントなのはあきらか。テント2-3張りはできそうでしたが、先客に申し訳ないので、3分ほど手前に戻った砂地に陣取って幕営。
晴嵐荘にはあんなにたくさんテントが張ってあったのに、こっちの方まではわざわざ来ないのか、とっても静かでよかったです。先にテントを張っていたのは地元長野と富山からきた2人組の若い男性。川で釣った魚を焚き火で焼いて食べていました。いいなぁ、こういうのって。途中で摘んだというタラノメを焼いたのを味見させてもらいました。思ったより苦くないなぁと思ったけど、あとになってしっかり渋みが残りました。やっぱりちゃんと灰汁抜きして、和え物とかにしたほうがいいみたい。
さて、お引っ越しが終わって、さっそく温泉へ。湯船は思ったより深くて、しっかり肩までつかれてGood。温度はふつうのお風呂くらいの温度。熱すぎずぬるすぎずうまくできてます。河原の端の山際から湧きだした湯が川に向かって流れる途中に作られた湯船なんですが、源泉からの距離がちょうどいい具合にお湯を冷ましてくれているみたい。
あたまの部分にちょうど岩があって、それを枕代わりに思いっきりリラックスできます。もう日が落ちかかった夕方だったんですが、川の音を聞きながらそらを眺めていると時を忘れます。
身体がポカポカしてきた後は、テントに戻って、川で冷やしておいた缶ビールを一気にゴクゴクと。こういうときってホントに350mlを一気に飲んじゃうんですよね。プハーと思わず声がでてしまう。たかだか1時間くらいしか川につけていなかったのに、みごとに冷えてる。山歩きを考えると缶ビールってはっきり言ってお荷物ですけど、これこそ持ってきた甲斐があるというもの。
一気に飲むから、酔いも少しクラクラっときます。そんなユラユラした感覚を楽しみつつ夕食の準備。今日は夕食がこれまたがんばりました。牛タンをはじめとした生肉。これでミニバーベキューと洒落込もうというわけです。肉類でも冷凍してバスタオルでくるんで持ってくれば意外ともつものです。
ふつうのバーベキューなら焚き火か炭火に鉄板ですが、「どこでもミニバーベキュー」ということで、キャンプ用のストーブとミニ焼き網を使用。これはプリムスから出ている折り畳み式のパン焼き網なんですが、なかなかの優れもの。金属メッシュと焼き網が2層になっていて、メッシュで直火を分散させて、上の焼き網に熱を均等に伝えるようになっています。直接火であぶってパンを焼いたことのある人はわかると思いますが、直火だとムラがでてすぐ焦げてしまいますが、その点これならばっちり、中まで火が通ります。
小さいからせいぜい数人までですが、これを使えばどこでも気軽に焼き肉ができてしまうのです。2本目のビール飲みながら、焼きたてのタン塩を♪ いや〜、最高ですね。いつしかあたりは真っ暗になってました。ランタンの灯りの下、ここだけ別世界な感じ。オートキャンプじゃないのに、ビールが十分にあって、焼き肉を楽しんでいる図。脇には誰もいない自分だけの温泉。これってスゴイ贅沢ですよね。
今回持ってきたビールは6本。この贅沢な時間を楽しむには十分な量。お腹いっぱいになったところで再び温泉へ。テントの中に入ってからは、小分けして持ってきたバーボンをチビチビやりながら、チーズやらチョコレートやらを。そうして酔っぱらいながら、夜は更けていくのでありました。ああ、至福の時♪
電車の場合、湯俣温泉の最寄り駅は信濃大町。そこから七倉ダムまではバス。そのさき高瀬ダムまでは徒歩か指定のタクシーで。
車の場合だと、長野自動車道路の豊科インターを下車。オリンピック道路で、信濃大町へ。高瀬ダム方面へ進みます。一般車が入れるのは七倉ダムまで。無料駐車場があります。ここから先は東京電力の私道で、許可証を持ったタクシーのみが入場可。6.5キロ先の高瀬ダムまでピストン輸送してくれます。4人まで1980円。歩いていくのは自由ですが、ダムを登るつづらおりの坂がきついかも。歩くと1時間半くらいらしいです。
高瀬ダムからは、最初の4.5キロがよく整備された林道。その先が川沿いの登山道(歩道)で1時間半ほどで、晴嵐荘に到着。ニュージーランド並によく整備された"トラック"でほとんど平坦。犬を連れている人もいるくらい。途中に名無小屋という避難小屋があって自由に泊まれます。4畳の畳敷きで土間には薪のストーブがあって、不思議と薪もたくさんストックされてました。なかなかいい感じ。ただ湯俣温泉へのベースにするには遠すぎます(約1時間)
晴嵐荘(7月〜10月営業)のまわりは広いテントサイトになっていて、いっぱいになるということはまずない。ここに池のような露天風呂が2つないし3つあります。
オススメはこの先さらに15分ほど上流に行ったところにある地熱地帯。このあたりは至るところからお湯が湧いていて手掘り温泉が楽しめる。この周辺にも幕営可能。ただし温泉に間近のベストポジションには2張りくらい、その5分ほど手前に4〜5張程度のスペースしかない。まずは晴嵐荘のあたりに荷物をおいて下見に行ってから幕営地を決めるとよい。天然記念物の噴湯丘は、温泉成分が積み重なってできた球体。噴水のように上から今も温泉が湧きだして成長している。対岸にあるため急流を渡渉しないと近づけない。川越しに眺めることは可能。
湯俣温泉の源泉地帯にはたぶん誰かが作った湯船があるはずだけど、心配なら折り畳みスコップを持っていった方がいいかも。晴嵐荘の池のような温泉ならいつでも入れます。ただし、身を隠すようなところのないオープンスペースなので、日中は女性は入りにくいかも知れません。
トイレはもちろんないです。いわゆる「キジうち」になります。(高瀬ダム、七倉ダムには公衆トイレあり)飲料水は沢水を利用。温泉成分が含まれていて飲めないという説もありますが、ふつうに飲んでました。もちろん沸かしたほうがいいです。確実な水の最終補給地は高瀬ダムの公衆トイレ。
帰路は下りなのでタクシーを使わず歩いてもいいと思いますが、たぶん高瀬ダムに行けばタクシーが待っているはず。いなければダムにある公衆電話(10円玉専用)で呼ぶことも可能。迎車料金はかかりません。とりあえず徒歩でダムを下って、疲れたら途中で空車タクシーを拾うというのは規則でできないそうです。
By あきば・けん e-mail address |