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魅惑の楽園 南風見田(はえみだ)の浜

その1




2003年 南風見田(はえみだ)の浜 キャンプ事情

南風見田海岸

南風見田(はえみだ)海岸

南風見田(はえみだ)― ここはぼくにとって原点とも言える場所です。

なにがあるって、なんにもないただの砂浜(笑)

いちおう西表島のガイドブックにはたいてい載っている長い長いビーチなのですが、もともと観光客の少ない東部地区、それも村はずれのどん詰まりにあるため、あまり人も来ない不思議な場所です。

なにせ、最寄りの集落(宿などはない)からでさえ、4キロ離れていて、公共の交通機関はナシという場所なので、たまにレンタカーの観光客が来ますが、ビーチの入口付近で30分もブラブラしたら、すぐに帰ってしまいます。

観光客にとっては、なんかイマイチな場所かもしれませんが、ここがディープな旅人の間では知る人ぞ知る魅惑の地なのです。

かつて、ぼくもここにテントを張って長逗留していました。長いときにはテントを張りっぱなしで2ヶ月半なんてことも。

南風見田の浜の入口
山
農道の終点、南風見田の浜の入口
浜のすぐ背後には鬱蒼とした山が迫っている

西表縦断を終えて、アスファルトの道を雨の中歩くこと7キロ。ようやく懐かしい南風見田の浜に辿り着いた。その頃になると雨は霧雨程度に落ち着いていたが、時刻はとうに午後6時過ぎ。急いでテントを張って、夕食の準備をしないと。。。

南風見田の浜は長い長い砂浜が続く海岸。防砂林を抜けて海岸へでても、テントの一張りも見えない。ホントにキャンパーがいるの? と思ってしまうが、実はみんな砂浜の手前の防砂林の中にテントを張っているのだ。

理由は簡単。砂浜なんかにテントを張ったら、日中暑くてやってらんないし、海から吹き付ける風がバカにならないから。

下草に覆われた防砂林と浜の際のあたりをよく見ると、人が歩いた跡が何ヶ所もある。草のトンネルをかきわけて防砂林に入っていくと、林のなかにぽっかりと開けたキャンプサイトが待っているという案配。不思議とそれぞれが独立したスペースになっていて、個人のテリトリーがはっきりしているのも、南風見田が居心地のいい理由かもしれない。

数ヶ月とか半年という長いスパンでキャンプ生活をしている人が多いので、それぞれのテントサイトにはいろいろと工夫が施されている。漂流物を使って入口に門を作ったり、物干しを作っていたり、テントの周りには立派なかまどを掘って、ブルーシートや廃材をうまく使って、雨でもへっちゃらなリビングをしつらえていたり...

かつてぼくもそうやって、いろいろな物作りをしながら、南風見田ライフを楽しんでいたのだった。


南風見田の浜の防砂林にテントを張る
夕暮れの南風見田
防砂林の中の隠れ家的なテントサイト
夕暮れの南風見田の浜

ボラ浜の水場

南風見田の浜やや隣りのボラ浜にはきれいな沢水が流れ込み、キャンパーの生活を支えている

南風見田の浜のキャンプ事情

今回は時間の関係で、ここ南風見田の浜でゆっくりするわけには行かず、次の「南部海岸踏破」にむけての準備&休憩ということで2泊だけの予定。

それにしても、この懐かしい場所に戻ってきたのは何年ぶりだろう?

浜の入口近くの農地に、寂れたキャンプ場ができていた以外はなにも変わっていない。

南風見田の浜入口に新しくできたキャンプ場

南風見田の浜入口に新しくできたキャンプ場

このキャンプ場は、去年あたりオープンしたものらしい。南風見田の浜は昔からキャンプが禁止されていた。しかし、地元の農家の人たちにとってはそこで長期滞在する人たちがサトウキビ収穫時の働き手として重要なため、実際には黙認されていた背景がある。

一時期、大原の新任の駐在(警察官)が、決まり通りにキャンパーへの退去指導をしてキャンパーを追い出そうとしたときに、地元民から猛烈な反対が起きたという話も聞く。

今回、浜のすぐ手前にキャンプ場ができたことで、南風見田にいたキャンパーたちはどうなっているんだろうと思ったが、結局はなにも変わっていなかった。昔どおりに立派な住居(テントサイト)を構えているキャンパーたちが現役でたくさんいて安心した。

こういう人たちは、林の奥深くにテントを張っているから、産卵にくるウミガメにとっては直接的な影響は少ないのかもしれない。(ウミガメの産卵がキャンプ禁止の理由とされている)問題といえば、なにも知らず浜の入口付近でテント村を作って夜遅くまで焚き火をして騒いでいる大学の探検部やワンゲル連中なのだろう。

そういうただのキャンプ地を求めてくる人たちを足止めする場として、この新しいキャンプ場が機能しているように見えた。昔からいる、南風見田で「生活」する人たちまでを縛ろうとしているわけではないようでホッとした。

(2003.8.3 up)





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焚き火のまえで 〜山旅と温泉記
By あきば・けん
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