沖縄でアウトドアを楽しもうとすると、どうしても気になってくるのがハブの問題。ご存じ沖縄には、ハブという日本最強の毒蛇が生息しています。
原始の島と評される西表島ですから、山(ジャングル)へ入るとハブがうじゃうじゃしてそうなイメージがありませんか? 実際、ぼくもそう思っていて、最初に山に入るときには、ハブ対策をあれこれ準備していったり、とても過敏になっていたのを覚えています。
しかし、実際のところ、西表島にいてハブを目撃したのは計6回だけ。6ヶ月以上島に滞在していましたが、それだけです。しかも4回はサトウキビ畑での作業中や、夜の道路でのことでしたから、実際に山の中でハブに出くわしたのは2回のみです。
普通の旅行や、ちょっとしたキャンプくらいでは、まずハブに会うことはないといっていいかもしれません。見れたらラッキーと思ったらいい程度のシロモノです。
そんなわけで過敏にハブを恐れる必要はないとは思いますが、やっぱりハブについての知識は絶対に必要です。特に西表島の奥部を目指すトレッキングを計画しているならなおさらです。
ということで、ここではハブの生態やハブ対策について、簡単に紹介しておきます。
意外なようですが、ハブは暑さにも寒さにも弱い生き物です。そのため、真夏ではなく、少しシーズンをはずした時期にもっとも活発に活動をするそうです。
被害の統計からも、5〜6月、また10〜11月がもっとも要注意な時期です。
ハブは夜行性で、もっとも活発に活動するのは夜中0時から3時くらいといわれています。日が出ている間はほとんど活動しないという研究結果があるのですが、実際の事故例が多いのはなぜか朝10時頃と14時頃。
このことから考えられるのは、人間の方が、物陰で寝ているハブの領域へ入り込んでしまうことが咬傷事故の原因として大きいということです。
日中、活動する際は、草陰や岩の間など、ハブが潜んでいそうな場所に注意する必要があるということですね。
ハブが潜んでいそうな草むらに入らなくてはいけないときは、長い木の棒などで、ガサガサと音を立ててながら歩いて、ハブを不意打ちしないようすると良いかもしれません。
ハブが獲物を探すのに使っているのは遠赤外線センサーと言われています。そのため、熱を遮断できるゴム長靴がハブ対策に有効と言われています。実際、サトウキビ畑で働く人はもちろん、現地のアウトドアガイドも、ゴム長を利用している人が多いようです。
ヘビというととぐろを巻いているイメージがありますが、あれは実は攻撃態勢。
とぐろを巻いて、鎌首をもたげている状態のヘビは危険です。その状態から体長の1/3〜1/2くらいの距離内に入ると急に飛びかかってくる可能性大です。
沖縄では、「ハブに打たれる」と表現することがありますが、打たれるかのごとく、すばやい動きで攻撃を仕掛けてくるということのようです。
ハブには注射器のような毒牙が2本あり、長さは1〜1.5cm。毒が出る穴は牙の先端ではなく、先から数ミリのところにありますので、たとえ噛まれたとしても、毒が入らずに済む場合もあります。
沖縄でヘビに噛まれたら、まずはそれがハブかどうか、また毒が入ったかどうかを判断しなければなりません。
ハブ毒が入った場合、噛まれてすぐに激痛と腫れが出てきます。30分たっても目立った症状がなければ、無毒のヘビだったか、もしくは毒が入らなかったと思っていいようです。
毒が体内に入ってしまった場合、深くて皮膚から1.5cmくらいの場所に毒が注入されています。その場でできることと言えば、毒をなるべく体外へ出すこと。
よく映画なんかにある口で吸い出す場面がまさにそれです。ハブ毒はたとえ飲み込んでしまったとしても無害ですし、口のなかに傷がある場合でも、口を漱ぎながら吸い出した方がいいと言われています。
毒が注入されるのは最大1.5cmとかなり深い位置になりますから、効率よく毒を出すためには、切開を加えた方がいいという考え方もあります。しかし、神経や血管を傷つける可能性もありますし、一般には「切開は行なわない方がいい」というのが今の定説のようです。
ただ診療所のある集落まで、何日もかかるような山奥での受傷の場合、方法として知っておいた方がいい場合もあるかもしれません。
切開は十字である必要はありません。歯の跡が2つあるのが普通ですが、それぞれの跡を中心に深さ1センチ程度の切り込みを入れ、傷口を拡げる方法が推奨されています。切るというよりは鋭い刃物で刺す要領。
あとは口や吸引器で血と一緒に毒を吸い出すのみ。
毒蛇に噛まれた場合の対応として、心臓に近い側を縛るという方法も一般に知られています。これについては、是非がいろいろ言われていていて、これといった決まりはないようです。ハブに噛まれた後、血圧が低下したり、意識がなくなったりと全身症状が出る場合もありますが、これは毒が体へ回ったためと考えられます。
毒は傷口からリンパ管を通って体を流れていきます。そのため、リンパ管を押える程度に軽く緊縛するのは意味があると言われる一方、強く縛りすぎて、血行を障害、返って創部の壊死を招く場合もあったりとリスクもあるようで、1時間以内に診療所に行かれるような場合は、縛らなくてよいという意見をここでは提示しておきたいと思います。
もし縛る場合は、決して強すぎないこと。指2本が入る程度の隙間が必要です。また15分おきくらいにゆるめる必要もあります。
またすべてに関して言えるのは、ハブに噛まれたら、慌てて走ったりしないこと。毒のまわりが早くなってしまいますので。こっちの方が注意としては重要です。
知は最大の防御なり(そんな言葉なかったかも…)ということで、西表に行く前にはハブについて、かなり調べました。当時はインターネットもなく、図書館のネットワークを使って資料を集めたり…
西表の山を歩くにはしっかりしたゴム引きのブーツがいいということはわかったのですが、ホールディングのしっかりしない長靴で長時間歩くことに不安があったので、結局はふだん使っているトレッキングシューズしか使用していません。
ゴム引きのブーツも干潟歩きとか、西表のフィールドを考えると、一考の価値はあるのかもしれませんが、島外からのビジターで、そういういでたちの人はあまり見たことはないです。
ささやかなハブ対策として、私が用意しているのは噛まれたとき用の毒吸引器です。吸引器はアウトドアショップで、「ポイズン・リムーバー」などの名前で市販されていますが、1000〜3000円もしますので、私の場合は自作品の毒吸引器を持ち歩いています。
注射器を改造して作った毒吸引器
写真の通り、使い捨て注射器の先端を切り落としただけの簡単なモノです。写真では、ピストンを逆さまに差していますが、これは切断面のバリ取りが面倒くさかったからだけで、きちんとヤスリ掛けをして、正方向で使えるようにした方がピストンが引きやすいです。注射器は東急ハンズなどで数百円で手に入ると思います。(最近になって横浜店では取り扱いをやめてしまったみたいですが)
それと写真の上に写っているのは、滅菌済みのメスの刃。先の鋭い11番というタイプです。まあ、そこまで使うことはないかなと思いつつも、お守り替わりに救急セットに入れています。
By あきば・けん e-mail address |