お正月1
えみちゃん(7歳)は、ちょっと内気な女の子。
隣の家に住んでいる亨お兄ちゃん(16歳)のことが大好きだけど、恥ずかしくて、とてもそんな事はお兄ちゃんには言えません。
亨お兄ちゃんは、いつもえみちゃんと仲良く遊んでくれたりしますが、しかし、えみちゃんのことを「妹みたい」としか言ってくれません。えみちゃんの方は、お兄ちゃんの『こいびと』になりたいと思っているのに。
ある秋の日。
えみちゃんは学校のお友達から、『らぶれたー』というお手紙のことを教えてもらいました。『らぶれたー』というのは、好きな人に、自分の好きなきもちのことを書いて送るお手紙のことだそうです。
えみちゃんは、亨お兄ちゃんに、『らぶれたー』を書こうと決めました。
でも、お手紙なんてほとんど書いたことがないので、なんて書いたらいいのか分かりません。
『らぶれたー』なので、お母さんに聞くのも恥ずかしいし、勉強の分からないところだったら亨お兄ちゃんに聞きに行けますが、さすがにお兄ちゃんに出すお手紙のことを聞くわけにもいきません。
何度も何度も書いたり消したりしましたが、どうしてもうまく書けません。
そうしているうち秋は過ぎ、冬が来て、冬休みになりました。もうすぐ今年も終わってしまいます。でも、まだお手紙は書けていませんでした。
いっしょうけんめい考えて、いつも遊んでもらっているお礼と、これからも一緒に遊んでほしいということと、好きだということを書きました。
何度も書いたり消したりをくり返したせいで葉書は真っ黒になってしまっていたので、お母さんに頼んで、新しい葉書を出してもらい、それに書きました。
亨お兄ちゃんの喜ぶ顔を思い浮かべながら葉書をポストに入れ、胸をどきどきさせながら、えみちゃんはベッドに入ったのでした。
数日後。お正月になりました。
えみちゃんは、お父さんとお母さんと一緒に、初もうでに行くために家を出ました。
すると、ちょうど向こうから亨お兄ちゃんが歩いてきます。亨お兄ちゃんもこっちに気が付いたみたいで、にっこり笑って近づいてきました。
「あ、えみちゃんのお父さん。明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとうございます。いつも絵美がお世話になって」
「いえいえ、こちらこそ」
えみちゃんも、恥ずかしい気持ちを振り切って、亨お兄ちゃんにあいさつをしました。
「亨お兄ちゃん、あけましておめでとう」
「明けましておめでとう、えみちゃん」
「お兄ちゃん……あの……えみのお手紙、読んでくれた?」
「あ、うん。届いてたよ。とっても可愛い年賀状だったね。ありがとう」
(あれ、年賀状じゃなくて『らぶれたー』だったのに……)
えみちゃんのヤキモキは、もう少し続きそうです。
おしまい
あとがき:
えぇっと、近所にえみちゃんという名前の女の子(現在中1※)は確かに住んでいましたけど、あまり関係ありません(^^;;
とりあえず、漢字の使い方に一番気を使いました。
ひらがなばっかりだと読みづらいし、ちゃんと漢字を使うと、小学生女児っぽく見えなくなるし(笑)
※現在中1…執筆当時。
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