お母さんのおてつだい



 今日は日曜日。
 空は晴れ渡り、絶好のお洗濯日和。
 あたしは、お母さんのお手伝いで、シャツを広げてハンガーに吊している。

 でも。
 お母さんが、空を見上げて、なんだか不安そうな顔をしている。
「ねえ、さおり。本当に天気予報では、今日は晴れって言ってたのよね?」
「うん。絶対に間違いないよ」
「それならいいんだけど……。なんだか、あの西の空の雲が気になるのよね」
「だいじょーぶ! テレビで晴れって言ってたんだもん! 雨なんか降らないよ!」
「そうね、気にしない方がいいわね」
 まったく、お母さんは心配性なんだから。
 早く全部干しちゃって、おやつにしようよ。

 でも、しばらくして。
 急に空が暗くなってきたかと思うと、ぽつり、ぽつりと雨が落ちてきた。
 お母さんと二人で、慌てて庭に飛び出し、洗濯物をまとめて家に入れる。
 雨はどんどん強くなってきて、最後の方に取り入れたものは、だいぶ濡れちゃった。

「ちょっと! 何が晴れなのよ! 降ってきたじゃない」
「だって、テレビの天気予報ではそう言ってたもん!」
「本当に? 快晴とどしゃ降りじゃあ、まるで違うわよ」
「本当だもん! 晴れだから、サッカーの試合もできるって言ってたよ!」
「……さおり。それ、日本じゃなくて、ドイツの天気よ」

 雨の音だけが響く中、一羽のツバメが、窓から見える景色を横切っていったのが、なんだかおかしかった。

あとがき:
執筆当時は、ドイツにてサッカーワールドカップ開催中でした。
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